前回のまとめ

前回のまとめ
桂田 祐史
2014 年 10 月 24 日
(前回の説明は拙かったので整理して提示し直します。)
f : R → C は周期 2π で、以下のどういう場合でも積分が定義できると仮定してある。
∫
∫
∫ π
1 π
1
1 π
f (x) cos kx dx, bk =
f (x) sin kx dx, ck =
f (x)eikx dx.
ak =
π −π
π −π
2π −π
a0 ∑
+
(an cos nx + bn sin nx)
2
n=1
∞
(a) 実 Fourier 級数
(b) 複素 Fourier 級数
∞
∑
cn einx
n=−∞
それぞれ第 n 部分和
n
n
∑
a0 ∑
+
fn (x) :=
(ak cos kx + bk sin kx) =
ck eikx
2
k=1
k=−n
で n → ∞ とした “極限” である。
f が連続なだけでは Fourier 級数は収束しないが、さらに ([−π, π] で) 区分的に C 1 級と仮
定するとうまく行く。
定理 0.1 f が周期 2π の周期関数で、連続かつ区分的に C 1 級ならば、f の Fourier 級数
は一様収束して f に等しい: lim sup |fn (x) − f (x)| = 0.
n→∞ x∈R
一方、f が不連続であっても、収束が言える場合がある。その代わり、収束は弱い収束に
なってしまう (それでも応用上重要)。
定理 0.2 f が周期 2π の周期関数で、区分的に C 1 級ならば、f の Fourier 級数は各点収
束する。実際、任意の x ∈ R に対して

(f が x で連続の場合 (x が f の連続点))
 f (x)
lim fn (x) =
n→∞
 f (x − 0) + f (x + 0) (f が x で連続でない場合 (x が f の不連続点))
2
(不連続点の付近では Gibbs の現象が起こり、一様収束はしない。)
各点収束だけではうまく議論が出来ないことが多いが、仮定を弱めて、しかしある意味で便
利な収束を導くことが出来る (かなりウマイ話)。
1
∫
定理 0.3 f が [−π, π] で 2 乗可積分 (
∫
−π
n→∞
|f (x)|2 dx が有限ということ) ならば、
π
lim
−π
π
|fn (x) − f (x)|2 dx = 0.
3 つの定理の比較 一般に、
f が連続かつ区分的 C 1 級
⇒ f が区分的 C 1 級
⇒ f が 2 乗可積分
であるので定理の仮定は、紹介した順に弱くなっている。
最初の定理 0.1 の結論は強い (一様収束は良い収束)。
定理 0.2 の結論と定理 0.3 の結論は、どちらが強いとも言えないが、後者も案外便利。
2 乗可積分関数の空間 L2 (I) (エル・ツーと読む) I = [−π, π] として、
{ ∫
2
L (I) := f f : I → C ルベーグ可測 (この言葉は当面無視して OK),
π
}
|f (x)| dx 収束 .
2
−π
(不連続関数を考えるので、積分は収束するかどうか問題になることに注意。
)
∫
π
この L2 (I) では、関数の内積 (f, g) =
f (x)g(x)dx と、それから決まるノルム ∥f ∥ =
−π
√
(f, f ) が非常に便利に働く (10/10 の講義で説明した「fn は f の直交射影」とか、「fn は f
の最良近似」などが成立する)。この記号を使うと、定理 0.3 は、
f ∈ L2 (I) ならば lim ∥fn − f ∥ = 0
n→∞
と簡潔に書き直せる。
証明の舞台裏 (前回はここら辺をぐだぐだやり過ぎました。)
f の滑らかさに応じて、導ける収束の強さが違うのは、Fourier 係数の (n → ∞ としたとき
の) 減少の速さが違うから、と説明できる。以下、順に条件を弱くしていく。
• k ∈ N, f が C 級ならば
k
∞
∑
nk−1 (|an | + |bn |) < ∞.
n=1
• f が連続かつ区分的 C 級ならば
1
∞
∑
(|an | + |bn |) < ∞.
n=1
• (Parseval の等式) f が I で 2 乗可積分ならば (f ∈ L2 (I))、次が成り立つ。
∫
∞
|a0 |2 ∑ (
1 π
2
2)
|f (x)|2 dx.
+
|an | + |bn | =
2
π
−π
n=1
(上の = を ≤ とした Bessel の不等式を証明したが、実は等号が成立。)
• (Riemann-Lebesgue の定理) f が I で可積分ならば (f ∈ L1 (I))、
lim an = lim bn = 0.
n→∞
n→∞
1 1
証明の鍵は、(i) Fourier 係数の定義式を部分積分したもの (ak = − ·
n π
等)、(ii) 内積空間の Bessel の不等式。
2
∫
π
−π
f ′ (x) sin nx dx