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高空間分解能を持つ地震動分布を推定するためのアルゴリズム開発
東京大学地震研究所 長尾大道 水迫覚信 加納将行 堀宗朗
大阪大学大学院基礎工学研究科 廣瀬慧
1.
はじめに
都市部において直下型地震が発生した際、建物や橋梁等の構造物が受けた被害の空間分布を
即座に推定することは、減災や一早い復旧の観点からも重要である。そのためには、各構造物の
地震応答を数値シミュレーションによって再現することが強力な手段となるが、構造物よりも空間分
布が圧倒的に疎な地震観測データから、各構造物への入力地震波形を与える必要がある。そのた
めのアプローチとして、我々は波動場データ同化に基づくシミュレーション駆動型モデリング手法と、
スパース推定に基づくデータ駆動型モデリング手法の融合を目指している。
2.
Lasso に基づく高空間分解能地震動分布の推定
線形システムを仮定すれば、位置 x0 にある構造物直下における地震動 u(x0)の Fourier 成分は、
近傍 x0+Δx にある観測点で記録された地震波形 u(x0+Δx)の Fourier 成分と、Taylor 展開によって
関係づけられる。
uk ( x0 + Δx, ω ) = uk ( x0 , ω ) + 
i
∂uk ( x0 , ω )
∂xi
Δxi + 
i
j
2
1 ∂ uk ( x0 , ω )
Δxi Δx j + 
2! ∂xi ∂x j
ただし、ω は周波数である。未知パラメータは、最終的に求めたい右辺第一項、ならびに偏微分係
数であり、これらを複数の観測点における地震波形データを用いて推定することになるが、未知パ
ラメータ数は偏微分の打ち切り階数のほぼ 3 乗に比例して増えるため、すぐに観測点数が不足する
劣決定の問題に陥る。そこで本研究では、L1 正則化に基づく線形回帰モデリング法である lasso
(least absolute shrinkage and selection operator)に基づき、支配的な偏微分係数を選択する手法
を採用した。
3.
首都圏地震観測網 MeSO-net データへの適用、および今後の展開
提案手法を、2011 年東北地方太平洋沖地震時の首都圏地震観測網 MeSO-net のデータに適用
したところ、0~2Hz の帯域において、従来の手法よりも格段に良い推定波形が得られることが示さ
れた。MeSO-net の観測点間隔(約 4km)程度の場合、3~4Hz 以上の帯域における波形の大部分
は、その地点における地下構造の影響を反映していることから、提案手法は内挿による波形推定
の方法としては、ほぼ最良のものであると考えられる。
今後は、group lasso を導入することによって Fourier 成分の実部と虚部が同時に選択されるよう
にし、また波動方程式や地表面における応力の境界条件、さらには水平面内における座標回転に
対して不変であるといった物理の観点からの要請を、等式制約等として取り込むことを予定している。
謝辞: 本研究は、科研費新学術領域研究「スパースモデリングの深化と高次元データ駆動科学の創成」
の援助を受けております。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。