物 理 数 学 II 担当 岡村 隆 第 1 回 レ ポ ー ト (16/6/10 出題 ; 提出〆切 6/24 講義開始時) 1 Fourier 変換, Fourier 逆変換 [ ] 関数 f の Fourier 変換 fˆ = F f とを, それぞれ次式で定義する: ∫ ∞ [ ] 1 fˇ(x) = F ∗ f (x) := √ dk e+ikx f (k) . 2π −∞ −∞ ˇ ˇ 以下の無限区間上の関数 f の Fourier 変換 fˆ と fˆ の Fourier 逆変換*1 fˆ とを求め, fˆ が f に一致するか調 [ ] 1 fˆ(k) = F f (k) := √ 2π ∫ [ ] と Fourier 逆変換 fˇ = F ∗ f ∞ dx e−ikx f (x) , べよ. なお, Fourier 変換が存在しない場合はそう答えよ. また, 定数 a は, 正の実部をもつ複素数とする. { −ax (1) f (x) = e (2) f (x) = e−ax 0 for x > 0 for x < 0 (3) f (x) = e−a|x| 2 Fourier 変換の応用: 波動のエネルギー 1 次元空間を伝搬する波動が, 方程式 ( ) 1 ∂2 ∂2 − 2 2 + 2 ϕ(t, x) = 0 , c ∂t ∂x に従うとする. 波が伝わることで, エネルギーが運ばれているはずであるが, 波のエネルギーはどのように定義 するべきであろうか. ここでは, この方程式に従う波のエネルギーを発見法的に定義しよう.*2 以下では, 波動 場 ϕ(t, x) の空間座標に関する Fourier 変換 1 ϕ̂(t, k) = √ 2π ∫ ∞ dx e−ikx ϕ(t, x) −∞ を, しばしば ϕ̂k (t) と略記する(定義より, ϕ̂k (t) は一般に複素数の値をとる). なお, 以下では簡単のために, ϕ(t, x) は, t と x のそれぞれについて, 十分滑らかであるとする. (1) ϕ̂k (t) が従う方程式を求めよ. (2) 次式で定義されるエネルギースペクトル密度が保存量であることを示せ. なお, ωk := c |k | とする*3 : 2 2 ∂ ϵ(k) := ϕ̂k (t) + ωk2 ϕ̂k (t) ∂t (3) Fourier 変換可能な非常に性質の良い関数 f (x), g(x) に対し, 次式が成り立つことを示せ: ∫ ∞ ∫ ∞ dx f ∗ (x) g(x) = dk fˆ∗ (k) ĝ(k) . −∞ −∞ ここで, fˆ(k), ĝ(k) は, それぞれ f (x), g(x) の Fourier 変換である. (4) 全エネルギーを, ∫ ∞ E := dk ϵ(k) −∞ と定義する. 前小問の結果より, これは保存量なので, 全エネルギーと呼ぶに相応しい.*4 前小問の結果を利用して, この全エネルギーを, ϕ̂k (t) ではなく ϕ(t, x) で表せ. *1 *2 *3 *4 f ではなく, fˆ の Fourier 逆変換であることに注意. 非線形波動方程式に従う波など, より一般的な波のエネルギーは, 場を解析力学的に扱うことで統一的に定義される. A(k) := (∂t ϕ̂k )2 + ωk2 ϕ̂2k も保存量だが, ϕ̂k は複素数なので A(k) も一般に複素数となる. よって, A(k) をエネルギースペクト ル密度と呼ぶのは適当でない. 解析力学を用いると粒子系の全エネルギー(ハミルトニアン)を自然に定義できるように, (場の)解析力学によって場の全エネ ルギーも自然に定義される(脚注 2 で述べたこと). 結果は上記 E に一致する. 1 3 特性関数, 拡散方程式 ブラウン運動をする粒子 (以下, ブラウン粒子) は, たとえ初期位置が明確に定まっていても, 後の時刻にお ける粒子の位置は確率的にしか予言できない. 時刻 t において, ブラウン粒子を位置 x に見出す確率密度を p(t, x) としたとき, その時間発展は拡散方程式に従うものとする: ∂p(t, x) ∂ 2 p(t, x) =D ∂t ∂x2 (D > 0) . (1) 時刻 t における粒子の位置の期待値 ⟨ x ⟩t , および分散 ⟨ (∆x)2 ⟩ t を p をもちいた積分形で表せ. (2) k を任意の実数として, 次の無限級数が存在すると仮定する: ∞ ∑ (i k)n q(t, k) := ⟨ xn ⟩t . n! n=0 この q を, 確率密度 p の特性関数と呼ぶ. 特性関数 q が, 次式を満たすことを示せ: q(t, k) = ⟨ eikx ⟩ t . これから明らかなように, 確率密度 p の Fourier 変換に他ならない. (3) ⟨ xn ⟩t を q で表す公式をつくれ. (ヒント: ∂q(t, k)/∂k k=0 を計算せよ.) (4) 小問 (2) の結果と (3.1) 式から, q の時間発展方程式を求めよ. (5) 小問 (4) で求めた方程式を, q の t = t0 における初期値を q(t0 , k) として解け. (6) 以上より, p(t, x) は, その初期分布 p(t0 , x0 ) から ∫ ∞ p(t, x) = −∞ dx0 G(t, x | t0 , x0 ) p(t0 , x0 ) , の形に表せることを示せ. また, G(t, x | t0 , x′ ) を与える積分を評価し, G を具体的に求めよ. 2 (3.1)
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