資料(PDF 265KB)

2015/2/12
名古屋支店
住所:名古屋市中村区名駅
5-17-10
TEL: 052-561-4846
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画:2014 年の愛知県の「休廃業」「解散」動向調査
1316 件と依然高水準、倒産の 2.2 倍に
~「製造」が 2 年連続増加、3 社に 1 社が「建設」~
はじめに
「債務者が自主廃業を選択する場合の取引先対応等を含めた円滑な処理等への協力」(金融庁
『監督指針』
、2011 年 4 月)、「2020 年までに開業率が廃業率を定常的に上回る状態にする」(民主
党野田政権下『日本再生戦略』、2012 年 7 月)、
「開業率が廃業率を上回る状態にし、米国・英国レ
ベルの開・廃業率 10%台を目指す」
(自民党安倍政権下『日本再興戦略』、2013 年 6 月)など、近
年廃業の必要性が繰り返し提言されてきた。産業や地域の新陳代謝を促すためである。
しかし、一社一社に目を向けると業績不振からの脱却がたとえ困難であっても、簡単に廃業や
事業譲渡を選択する経営者は少ない。実際に、(経営資源を相当毀損した状態に至ってから)廃業
を決断して残務整理を行っていたものの、資産を処分してもすべてを清算できず、破産手続きを
申し立てるケースも目立つ。
帝国データバンク名古屋支店は、愛知県で 2014 年(2014 年 1 月~12 月)に「休廃業・解散」
となった企業、個人事業主(以下、休廃業などが判明した企業と記載)について集計・分析した。
◇「休廃業」とは、企業活動を停止している状態を指す(官公庁等に「廃業届」を提出して企業活動を終えるケースを含む)
。調
査時点では当該企業の企業活動が停止していることを確認できているが、将来的な企業活動再開を否定するものではない
◇「解散」とは、企業が解散した場合を指す。主に、商業登記等で解散を確認
◇「休廃業・解散」は、企業活動停止が確認できた企業のなかで、倒産(任意整理、法的整理)に分類されないケース
調査結果(要旨)
1.2014 年に愛知県で休廃業・解散が判明した企業は 1316 件。前年比 3.7%減で 4 年ぶりに減少
したが、倒産件数(602 件)の約 2.2 倍に達した。2008 年以降増加傾向が続いた後、4 年連続
で 1300 件超となり、依然として高止まりが続いている。種類別では、
「休廃業」が 803 件で前
年度比 5.1%減、「解散」513 件で同 1.3%減。
2.業種別では、「建設」が 434 件(前年比 0.7%減)で全体の 33.0%を占めた。
「製造」は 190
件(同 6.7%増)と業種別で唯一 2 年連続での増加、全国の「製造」は前年比 9.5%減と対照
的となっている。
3.代表者年齢別では「60 代」が 417 件(構成比 34.8%)で最多。「80 代以上」が 101 件(同 8.4%)
となり、2004 年(同 2.9%)、2009 年(同 4.9%)と比べて年々増加傾向にある。
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特別企画:2014 年の愛知県の「休廃業」
「解散」動向調査
1.件数~2014 年は 1316 件で 4 年ぶり減少も依然高水準
倒産件数との比較では 8 年ぶりの大きな開きに
2014 年に愛知県の休廃業などが判明した企業は 1316 件、前年比で 50 件、3.7%の減少となっ
た。2014 年の倒産件数 602 件と比較すると約 2.2 倍に達し、2006 年に約 3.0 倍を記録して以来
8 年ぶりの高水準となった。倒産件数は前年比 20.1%減となったが、休廃業などの件数は微減
となったことから、両者の開きが大きくなった。
種類別では、
「休廃業」が 803 件(前年比 43 件減)、
「解散」が 513 件(同 7 件減)となった。
休廃業などの件数は 4 年ぶりに前年比減となったが、2011 年以降は高止まりが続いている。な
お、全国の「休廃業・解散」は 2 万 4106 件で前年比 4.7%減少、倒産(9180 件)の約 2.6 倍と
なっている。
【グラフ1】「休廃業・解散」と「倒産」の件数推移
愛知県「休廃業・解散」と「倒産」件数推移
休廃業・解散
倒産
1600
1330
1400
1200
1143
1073
1111
1190
1270
581
500
376
400
200
1358
1366
1316
1038
1000
800
600
1353
691
718
853
734
753
602
375
234
0
2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
「休廃業・解散」と「倒産」件数推移(全国)
30000
25000
休廃業・解散
倒産
24168
22769
24080 24513
27306 26180
24843 25007 25840 25301 24106
20000
15000
10000
9053
8225
9351
10959
12681 13306 11658
11369 11129 10332
9180
5000
0
2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
【表1】 愛知県「休廃業」「解散」の年度別内訳
*前年比、構成比は%
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
件数 前年比 件数 前年比 件数 前年比 件数 前年比 件数 前年比 構成比
休廃業
721 ▲ 4.2
815
13.0
833
2.2
846
1.6
803 ▲ 5.1
61.0
解散
549 ▲ 4.9
538 ▲ 2.0
525 ▲ 2.4
520 ▲ 1.0
513 ▲ 1.3
39.0
合計
1270 ▲ 4.5
1353
6.5
1358
0.4
1366
0.6
1316 ▲ 3.7 100.0
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「解散」動向調査
2.業種別~「製造」は 2 年連続で増加、「建設」構成比 33.0%で最多
業種別の件数は下表の通り。増加したのは、
「製造」190 件(前年比 12 件増)、「不動産」101 件
(同 8 件増)。一方、減少は「建設」434 件(前年比 3 件減)、「小売」187 件(同 9 件減)、「サー
ビス」185 件(同 30 件減)、
「卸売」182 件(同 24 件減)、「運輸・通信」24 件(同 4 件減)、
「その
他」13 件は同数だった。
「製造」は業種別で唯一 2 年連続での増加となった。全国の「製造」は前年比 9.5%減と対照的
となっており、円安デメリットの影響などが中小企業の事業継続に影を落としている様子が窺え
る。
「建設」は「休廃業・解散」の構成比が 33.0%と最多となり、倒産件数における構成比 23.4%
を 9.6 ポイント上回っている。
【表2】 業種別件数推移
*前年比、構成比は%
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
件数 前年比 件数 前年比 件数 前年比 件数 前年比 件数 前年比 構成比
建設業
418
9.1
523
25.1
478 ▲ 8.6
437 ▲ 8.6
434 ▲ 0.7
33.0
製造業
222 ▲ 7.5
194 ▲ 12.6
166 ▲ 14.4
178
7.2
190
6.7
14.4
卸売業
210 ▲ 21.6
175 ▲ 16.7
214
22.3
206 ▲ 3.7
182 ▲ 11.7
13.8
小売業
174 ▲ 4.4
165 ▲ 5.2
181
9.7
196
8.3
187 ▲ 4.6
14.2
運輸・通信業
28 ▲ 15.2
38
35.7
32 ▲ 15.8
28 ▲ 12.5
24 ▲ 14.3
1.8
サービス業
164
3.1
177
7.9
174 ▲ 1.7
215
23.6
185 ▲ 14.0
14.1
不動産業
43
0.0
63
46.5
98
55.6
93 ▲ 5.1
101
8.6
7.7
その他
11 ▲ 50.0
18
63.6
15 ▲ 16.7
13 ▲ 13.3
13
0.0
1.0
合計
1270 ▲ 4.5
1353
6.5
1358
0.4
1366
0.6
1316 ▲ 3.7 100.0
3.代表者年齢別~「60 代」が最多、「80 代以上」が増加傾向
2014 年に「休廃業・解散」が判明した愛知県企業(個人事業主を含む)の代表者を年齢別にみ
ると、「60 代」が 417 件(構成比 34.8%)で最多となった。次いで「70 代」の 328 件(同 27.4%)
となった。また、
「80 歳以上」が 101 件(同
8.4%)となっているが、経年変化を見て
みると 2004 年の 30 件(同 2.9%)から 2009
【グラフ2】 愛知県「休廃業」「解散」事業者の代表者年齢分布
(判明分)
30歳未満
0.3%
年の 60 件(同 4.9%)と、構成比は年々
30代
3.5%
80歳以上
8.4%
増加している。
40代
10.4%
代表者の高齢化が進んでいるなか、事業
意欲の減退や後継者難によって、代替わり
ではなく「休廃業・解散」を選択するケー
50代
15.1%
70代
27.4%
スが目立ってきている。
60代
34.8%
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特別企画:2014 年の愛知県の「休廃業」
「解散」動向調査
4.今後の見通し
2014 年の愛知県の「休廃業・解散」は 1316 件となった。「倒産」は 602 件と 2 年ぶりの減少と
なったが、「休廃業・解散」も過去最多を記録した前年から微減となり、前年比減となるのは 4 年
ぶり。「休廃業・解散」と「倒産」を合計すると、2014 年は愛知県内で 2000 件弱が事業活動を止
めたことになる。
業種別では、
「製造」が唯一 2 年連続の増加となった。倒産件数は増加しておらず、業況の厳し
さもさることながら代表者の高齢化や後継者不足、大手の生産拠点の海外移転でやむを得ず廃業
を選択するケースは少なくないとみられる。アベノミクスの恩恵は、依然として中小零細企業ま
では届いておらず、廃業や解散が新陳代謝を伴う前向きな構造変化には至っていないのが実状だ。
後継者難による廃業で技術やノウハウが失われてしまっては、経済再生には繋がっていかないで
あろう。
今後、経済環境が好転しなければ、債務整理を進めるなかで最終的に法的手続きを選択せざる
を得ない事業者が増える可能性はあり、
「休廃業・解散」の高止まりは倒産件数の押し上げ要因と
なり得る。
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