2015/2/17 大宮支店 住所:さいたま市大宮区下町 1-45 TEL:048-643-2080(代表) URL:http://www.tdb.co.jp/ 特別企画:埼玉県「休廃業・解散」動向調査(2014 年) 2014 年の「休廃業・解散」は 1040 件、「倒産」の 2.7 倍 ~ 「倒産」と合わせ、約 1400 社が事業活動を停止 ~ はじめに 「債務者が自主廃業を選択する場合の取引先対応等を含めた円滑な処理等への協力」(金融庁 『監督指針』 、2011 年 4 月)、「2020 年までに開業率が廃業率を定常的に上回る状態にする」(民主 党野田政権下『日本再生戦略』、2012 年 7 月)、 「開業率が廃業率を上回る状態にし、米国・英国レ ベルの開・廃業率 10%台を目指す」 (自民党安倍政権下『日本再興戦略』、2013 年 6 月)など、廃 業の必要性が近年繰り返し提言されてきた。産業や地域の新陳代謝を促すためである。 マクロ的にみれば、有用な経営資源を移転・集約させることで、地域経済の活性化につながる。 しかし、一社一社に目を向けると、業績不振からの脱却がたとえ困難だとしても、簡単に廃業や 事業譲渡を選択する経営者は少ない。少しでも長く事業を続けたいという“気持ち”の問題がそ こにはある。実際に、(経営資源を相当毀損した状態に至ってから)廃業を決断して残務整理を行 っていたが、資産を処分してもすべてを清算できず、破産手続きを申し立てるケースも目立つ。 帝国データバンク大宮支店では、企業概要ファイル「COSMOS2」(145 万社収録)から削 除されたデータを収録したファイル(「削除ファイル」)を用いて、2007~2014 年の間に休業、廃 業、解散に至った事業者(法人、個人含む)を集計。倒産件数との比較や、業種別、代表者年齢 別にその傾向を分析した。 ◇「休廃業」とは、企業活動を停止している状態を指す(官公庁等に「廃業届」を提出して企業活動を終えるケースを含む) 。 調査時点では当該企業の企業活動が停止していることを確認できているが、将来的な企業活動再開を否定するものではない ◇「解散」とは、企業が解散した場合を指す。主に、商業登記等で解散を確認 ◇「休廃業・解散」は、企業活動停止が確認できた企業のなかで、倒産(任意整理、法的整理)に分類されないケース 調査結果(要旨) 1. 2014 年(1~12 月)の「休廃業・解散」は、1040 件判明。前年(999 件)を 41 件(4.1%増) 上回り、2 年ぶりに前年比増加となった。 2. 2014 年の「倒産」は 381 件で、「休廃業・解散」は「倒産」の約 2.7 倍に。 3. 業種別では「建設業」が全体の 3 割強を占める。 4. 代表者年齢別では、「70 代」「80 歳以上」の割合が年々増加。構成比は 2007 年の 27.9%から 2014 年は 47.2%と半数に迫る。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 1 2015/2/17 特別企画:埼玉県「休廃業・解散」動向調査(2014 年) 1. 種類別 ―2014 年の 「休廃業・解散」は「倒産」の約 2.7 倍に 2014 年(1~12 月)の「休廃業・解散」は、1040 件判明。前年の 999 件を 41 件(4.1%増)上 回り、2 年ぶりの増加となった。種類別にみると、 「休廃業」(634 件)が前年比 1.0%の微増、「解 散」(406 件)は同 9.4%の増加となり、「休廃業」と「解散」がともに前年を上回った。 「休廃業・解散」の直近のピークは、2012 年の 1203 件。リーマン・ショック後の 2009 年の 1124 件を上回り、かつ前年比 18.1%の大幅増加となった。しかし、翌 2013 年は 999 件と前年比 17.0% の減少となるなど、増減を繰り返しながらもほぼ横ばいといえる推移をたどっている。 一方、2014 年の「倒産」は 381 件で前年比 16.3%の大幅減少。リーマン・ショック後の 2009 年の 548 件をピークに減少傾向をたどっている。これにより 2014 年における「休廃業・解散」は 「倒産」の約 2.7 倍となっている。なお、2011 年における「休廃業・解散」は 1019 件、「倒産」 は 515 件で、 「休廃業・解散」は「倒産」の約 2 倍。「倒産」が減少傾向にあるものの、「休廃業・ 解散」は一定水準発生していることがわかる。 「休廃業・解散」と「倒産」の件数推移 休廃業・解散 (件) 倒産 1,400 1,203 1,124 1,200 1,043 1,030 1,000 1,019 1,040 999 942 800 600 548 481 404 514 515 498 455 381 400 200 0 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 「休廃業・解散」件数 休廃業 解散 合計 2008年 652 378 1,030 2009年 715 409 1,124 2010年 653 390 1,043 2011年 601 418 1,019 2012年 757 446 1,203 2013年 628 371 999 (件) 2014年 634 406 1,040 2008年 2.4 23.9 9.3 2009年 9.7 8.2 9.1 2010年 ▲ 8.7 ▲ 4.6 ▲ 7.2 2011年 ▲ 8.0 7.2 ▲ 2.3 2012年 26.0 6.7 18.1 2013年 ▲ 17.0 ▲ 16.8 ▲ 17.0 (%) 2014年 1.0 9.4 4.1 2007年 404 2008年 481 2009年 548 2010年 514 2011年 515 2012年 498 2013年 455 (件) 2014年 381 2007年 17.8 2008年 19.1 2009年 13.9 2010年 ▲ 6.2 2011年 0.2 2012年 ▲ 3.3 2013年 ▲ 8.6 (%) 2014年 ▲ 16.3 2007年 637 305 942 「休廃業・解散」前年比 2007年 休廃業 1.6 解散 ▲ 4.4 合計 ▲ 0.4 <参考> 「倒産」件数 倒産 「倒産」前年比 倒産 2014年 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 2 2015/2/17 特別企画:埼玉県「休廃業・解散」動向調査(2014 年) 2. 業種別 ―「建設業」が全体の 3 割、「サービス業」がこれに続く 2014 年(1~12 月)の業種別「休廃業・解散」件数をみると、 「建設業」が 381 件(構成比 36.6%) で全体の 3 割強を占め最多。以下、「サービス業」の 176 件(同 16.9%)、 「製造業」の 144 件(同 13.8%)、「卸売業」の 126 件(同 12.1%)、「小売業」の 102 件(同 9.8%)と続いた。 2007 年からの推移をみると、年によって増減はあるものの「建設業」が毎年 300~400 件台、構 成比 30%台でいずれの年も最多だった。次いで、2011 年以降 2 番目に多いのが「サービス業」で、 14~16%台を占めている。さらに 2013、2014 年では「製造業」が 3 番目、「卸売業」が 4 番目と 続いている。 「製造業」はリーマン・ショック後の 2009 年には 200 件超え構成比 19.0%と、「建設 業」に次ぐ 2 番目の水準だった。2014 年 5 番目の「小売業」は 2007、2008 年には 150 件台で構成 比 15、16%台を占め、「建設業」に次ぐ 2 番目の水準にあったが、近年減少傾向にある。 ちなみに 2014 年の「倒産」件数の業種別内訳は、 「建設業」97 件(構成比 25.5%)、 「製造業」 72 件(同 18.9%)、「サービス業」63 件(同 16.5%)、「小売業」58 件(同 15.2%)、 「卸売業」49 件(同 12.9%)であった。どちらも「建設業」が最多であるが、 「休廃業・解散」においては「建 設業」、「サービス業」の構成比が「倒産」に比べ高いことが分かった。 前年比では、全業種中 4 業種が前年を下回った。 「不動産業」が前年比 8.9%の減少となったほ か、 「小売業」(同 2.9%減)と「卸売業」(同 0.8%減)は 2 年連続の前年比減少となった。一方、 「運輸・通信業」(同 80.0%増)、「サービス業」 (同 8.0%)、 「建設業」(同 7.6%)の 3 業種は前 年比増加となった。 業種別件数 業種別 2007年 件数 2008年 前年比 件数 前年比 件数 前年比 ▲ 0.5 403 4.4 473 17.4 153 9.3 213 39.2 156 ▲ 26.8 136 ▲ 12.8 142 4.4 151 13.5 158 4.6 141 ▲ 10.8 130 ▲ 7.8 141 8.5 0.0 158 1.9 135 ▲ 14.6 123 ▲ 8.9 104 ▲ 15.4 144 38.5 18 ▲ 14.3 21 16.7 25 19.0 30 20.0 32 6.7 33 119 26.6 117 ▲ 1.7 117 0.0 137 17.1 143 4.4 54 14.9 39 ▲ 27.8 72 84.6 57 ▲ 20.8 61 7.0 製造業 140 0.0 卸売業 133 5.6 小売業 155 サービス業 不動産業 その他 合計 件数 前年比 件数 (件) 2014年 2013年 386 377 前年比 2012年 2.9 ▲ 12.2 件数 2011年 388 309 前年比 2010年 22.0 建設業 運輸・通信業 2009年 件数 前年比 件数 前年比 ▲ 25.2 381 7.6 149 4.9 144 ▲ 3.4 127 ▲ 9.9 126 ▲ 0.8 105 ▲ 27.1 102 ▲ 2.9 3.1 15 ▲ 54.5 27 80.0 180 25.9 163 ▲ 9.4 176 8.0 66 8.2 79 19.7 72 ▲ 8.9 354 14 27.3 14 0.0 16 14.3 13 ▲ 18.8 10 ▲ 23.1 24 140.0 7 ▲ 70.8 12 71.4 942 ▲ 0.4 1,030 9.3 1,124 9.1 1,043 ▲ 7.2 1,019 ▲ 2.3 1,203 18.1 999 ▲ 17.0 1,040 4.1 業種別構成比 業種別 2007年 件数 2008年 構成比 件数 2009年 構成比 件数 2010年 構成比 件数 2011年 構成比 件数 2012年 (%) 2014年 2013年 構成比 件数 構成比 件数 構成比 件数 構成比 建設業 309 32.8 377 36.6 388 34.5 386 37.0 403 39.5 473 39.3 354 35.4 381 36.6 製造業 140 14.9 153 14.9 213 19.0 156 15.0 136 13.3 142 11.8 149 14.9 144 13.8 卸売業 133 14.1 151 14.7 158 14.1 141 13.5 130 12.8 141 11.7 127 12.7 126 12.1 小売業 155 16.5 158 15.3 135 12.0 123 11.8 104 10.2 144 12.0 105 10.5 102 9.8 18 1.9 21 2.0 25 2.2 30 2.9 32 3.1 33 2.7 15 1.5 27 2.6 119 12.6 117 11.4 117 10.4 137 13.1 143 14.0 180 15.0 163 16.3 176 16.9 運輸・通信業 サービス業 不動産業 54 5.7 39 3.8 72 6.4 57 5.5 61 6.0 66 5.5 79 7.9 72 6.9 その他 14 1.5 14 1.4 16 1.4 13 1.2 10 1.0 24 2.0 7 0.7 12 1.2 942 100.0 1,030 100.0 1,124 100.0 1,043 100.0 1,019 100.0 1,203 100.0 999 100.0 1,040 100.0 合計 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 3 2015/2/17 特別企画:埼玉県「休廃業・解散」動向調査(2014 年) 3. 代表者年齢別 ―「70 代」「80 歳以上」の割合が年々増加 2014 年に「休廃業・解散」した企業 (個人事業主を含む)の代表者を年齢 代表者年齢別 構成比 100.0% 4.8 5.5 8.4 別にみると(代表者年齢が判明しない 企業を除く) 、 「70 代」が 349 件(構成 比 38.8%)となり最多。次いで「60 23.1 29.6 80.0% 80歳以上 代」が 300 件(同 33.3%)、「50 代」 38.8 70代 が 110 件(同 12.2%)となった。前年 比で「60 代」が構成比 4.0 ポイント減 60.0% 60代 少となったが、「80 歳以上」が 0.2 ポ 43.6 イント、「70 代」が 6.4 ポイント増加 した。 50代 44.9 40.0% 40代 33.3 また、右グラフの通り、2007 年との 比較では「80 歳以上」が 3.6 ポイント、 「70 代」では 15.7 ポイントそれぞれ 30代 20.0% 18.7 増加している。一方「60 代」は 43.6% 30歳未満 11.9 12.2 占めていたものが 33.3%と 10.3 ポイ 7 .0 ント減少した。「休廃業・解散」した 2 .6 0.0% 企業においても代表者の高齢化の傾 6 .0 2 .1 0 .2 2007年 5 .9 0 .7 0.0 2010年 0.7 2014年 向が進んでいることが分かる。 代表者年齢別件数 代表者年齢 30歳未満 30代 (件) 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 (%) 2014年 前年比 件数 構成比 件数 構成比 件数 構成比 件数 構成比 件数 構成比 件数 構成比 件数 構成比 件数 構成比 2 0.2 1 0.1 0 0.0 0 0.0 2 0.2 1 0.1 1 0.1 6 0.7 500.0 23 2.6 20 2.1 20 2.0 20 2.1 21 2.4 27 2.6 20 2.3 6 0.7 ▲ 70.0 ▲ 22.1 40代 62 7.0 66 7.0 72 7.1 56 6.0 77 8.6 83 8.1 68 7.8 53 5.9 50代 166 18.7 153 16.2 162 15.9 112 11.9 98 11.0 125 12.1 104 11.9 110 12.2 5.8 60代 387 43.6 408 43.1 448 44.0 422 44.9 354 39.6 378 36.7 326 37.3 300 33.3 ▲ 8.0 70代 23.3 205 23.1 267 28.2 265 26.0 278 29.6 291 32.6 345 33.5 283 32.4 349 38.8 80歳以上 43 4.8 31 3.3 52 5.1 52 5.5 50 5.6 71 6.9 72 8.2 76 8.4 5.6 合計 888 100.0 946 100.0 1,019 100.0 940 100.0 893 100.0 1,030 100.0 874 100.0 900 100.0 3.0 4. まとめ 2014 年の「休廃業・解散」は全国で 2 万 4106 件、埼玉県では 1040 件となった。金融機関によ る支援やアベノミクスの各種施策による株高、円安の進行などに伴い景況感の改善が進むなか、 全国の「休廃業・解散」は「倒産」同様に減少したが、埼玉県では「倒産」が前年比 16.3%減少 したのに対し、「休廃業・解散」は 4.1%増加した。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 4 2015/2/17 特別企画:埼玉県「休廃業・解散」動向調査(2014 年) 埼玉県の「休廃業・解散」は増減を繰り返しながらもほぼ年間 1000 件を上回るペースで判明し ている。中小企業金融円滑化法終了後も金融機関が経営難に陥った中小企業に対して支援の姿勢 を続けているが、この間、経営改善が進んでいる企業はまだ少数に過ぎない。加えて、金融機関 からの支援の対象外となるような零細企業も多く存在する。また、それら以外でも、今後時代の 流れに合わせて変化できない企業、企業規模格差の優劣が際立っているような業界の零細企業な どは、淘汰されていくことが想定される。代表者年齢の高齢化も「休廃業・解散」の増加の要因 であろう。70 歳以上の構成比が 2007 年の 27.9%から 2014 年には 47.2%と 19.3 ポイントも増加 しており、半数に迫る水準に達している。 近年、大手企業においては、取引先企業の選定に対し事業の継続性、つまり、後継者の有無を 重視する傾向がある。事業承継を進めておかなければ取引先を失う局面に遭遇する可能性が高ま るということを、中小企業経営者は理解する必要がある。こうした要因が相まって、「休廃業・解 散」は 2015 年も高水準での推移を続けると思われる。 【内容に関する問い合わせ先】 株式会社帝国データバンク TEL 048-643-2146 大宮支店 情報部 FAX 048-645-7578 当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。 当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的以外の利用につきましては、著作権法 の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 5
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