第3回資料(2)(09/26 up)

0. 流体の力学的エネルギー保存 −ベルヌイの定理−
流体が持つ力学的エネルギーの保存関係を表すベルヌイの定理(Bernoulli’s theorem)
は,流体の運動方程式から導かれる.以下では簡単のため,非粘性流体の定常二次
ベクトル演算子 grad は,スカラー
に作用してベクトルを作る.具体
元流れを考える.この場合,流体の運動は Euler の運動方程式
的には,スカラー A が x,y ,z
の関数であるとき,
grad A =
∂A
∂A
∂A
i+
j+
k
∂x
∂y
∂z
となる.すなわち grad A は,A
を x,y ,z で偏微分したものを x,
y ,z 成分にもつベクトルである.
ux
∂ux
∂ux
∂uy
∂uy
1 ∂p
1 ∂p
+ uy
=−
+ Fx , ux
+ uy
=−
+ Fy
∂x
∂y
ρ ∂x
∂x
∂y
ρ ∂y
(1)
によって記述される.いま,(1) の第一式に ux ,第二式に uy を乗じて辺々の和を
とると,
( ∂u
( ∂u
∂uy )
∂uy )
x
x
+ uy
+ uy ux
+ uy
ux ux
∂x
∂x
∂y
∂y
=−
1 ( ∂p
∂p )
ux
+ uy
+ u x Fx + u y Fy
ρ
∂x
∂y
(2)
のようにまとめることができるので,これを整理して
ux ·
∂p )
∂ ( u2x + u2y )
∂ ( u2x + u2y )
1 ( ∂p
+ uy
+ uy ·
= − ux
+ ux Fx + uy Fy
∂x
2
∂y
2
ρ
∂x
∂y
を得る.さらに,q 2 ≡ u2x + u2y とおき,ベクトル演算子を用いて上式を表せば,
( q2 )
1
u · grad
= − u · grad p + u · F
2
ρ
(3)
となる.ここで,流体がバロトロピー流れであると仮定する.バロトロピー流れの
場合,密度は圧力のみの関数となるので,次式のような積分量を定義できる.
∫
p
P (ρ) =
p0
圧力関数は p の関数であるから,
∂P
dP ∂p
1 ∂p
=
=
∂x
dp ∂x
ρ ∂x
同様に 1 ∂p
∂P
=
∂y
ρ ∂y
∂P
1 ∂p
=
∂z
ρ ∂z
dp
ρ
これを圧力関数(pressure function)という.また,流体に作用する外力 F が保存
力であれば,F = −grad ϕ を満たすポテンシャル ϕ が存在する.以上の条件のも
とで,(3) を整理すれば,
( q2
)
u · grad
+P +ϕ =0
2
の関係が得られる.これは,全エネルギーのこう配( grad でまとめられたベクト
ル量)と流速ベクトル u とが直交することを意味している.したがって,ベクト
したがって,
1
grad p = grad P
ρ
ル grad( · · · )の流速ベクトルに沿う成分は 0 になるから,流線方向を s とすれば,
)
∂ ( q2
+P +ϕ =0
∂s 2
が成立する.すなわち,流線に沿って s 方向に上式を積分すれば,その値は定数
となるので,
q2
+P +ϕ=C
2
を得る.これを Bernoulli の定理という.定数 C は流線ごとに定まる定数である.
1