0. 流体の力学的エネルギー保存 −ベルヌイの定理− 流体が持つ力学的エネルギーの保存関係を表すベルヌイの定理(Bernoulli’s theorem) は,流体の運動方程式から導かれる.以下では簡単のため,非粘性流体の定常二次 ベクトル演算子 grad は,スカラー に作用してベクトルを作る.具体 元流れを考える.この場合,流体の運動は Euler の運動方程式 的には,スカラー A が x,y ,z の関数であるとき, grad A = ∂A ∂A ∂A i+ j+ k ∂x ∂y ∂z となる.すなわち grad A は,A を x,y ,z で偏微分したものを x, y ,z 成分にもつベクトルである. ux ∂ux ∂ux ∂uy ∂uy 1 ∂p 1 ∂p + uy =− + Fx , ux + uy =− + Fy ∂x ∂y ρ ∂x ∂x ∂y ρ ∂y (1) によって記述される.いま,(1) の第一式に ux ,第二式に uy を乗じて辺々の和を とると, ( ∂u ( ∂u ∂uy ) ∂uy ) x x + uy + uy ux + uy ux ux ∂x ∂x ∂y ∂y =− 1 ( ∂p ∂p ) ux + uy + u x Fx + u y Fy ρ ∂x ∂y (2) のようにまとめることができるので,これを整理して ux · ∂p ) ∂ ( u2x + u2y ) ∂ ( u2x + u2y ) 1 ( ∂p + uy + uy · = − ux + ux Fx + uy Fy ∂x 2 ∂y 2 ρ ∂x ∂y を得る.さらに,q 2 ≡ u2x + u2y とおき,ベクトル演算子を用いて上式を表せば, ( q2 ) 1 u · grad = − u · grad p + u · F 2 ρ (3) となる.ここで,流体がバロトロピー流れであると仮定する.バロトロピー流れの 場合,密度は圧力のみの関数となるので,次式のような積分量を定義できる. ∫ p P (ρ) = p0 圧力関数は p の関数であるから, ∂P dP ∂p 1 ∂p = = ∂x dp ∂x ρ ∂x 同様に 1 ∂p ∂P = ∂y ρ ∂y ∂P 1 ∂p = ∂z ρ ∂z dp ρ これを圧力関数(pressure function)という.また,流体に作用する外力 F が保存 力であれば,F = −grad ϕ を満たすポテンシャル ϕ が存在する.以上の条件のも とで,(3) を整理すれば, ( q2 ) u · grad +P +ϕ =0 2 の関係が得られる.これは,全エネルギーのこう配( grad でまとめられたベクト ル量)と流速ベクトル u とが直交することを意味している.したがって,ベクト したがって, 1 grad p = grad P ρ ル grad( · · · )の流速ベクトルに沿う成分は 0 になるから,流線方向を s とすれば, ) ∂ ( q2 +P +ϕ =0 ∂s 2 が成立する.すなわち,流線に沿って s 方向に上式を積分すれば,その値は定数 となるので, q2 +P +ϕ=C 2 を得る.これを Bernoulli の定理という.定数 C は流線ごとに定まる定数である. 1
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