希土類金属間化合物 EuAl4 の NMR による研究

希土類金属間化合物 EuAl4 の NMR による研究
琉球大理
神戸大理 A
仲村さおり, 比嘉野乃花, 黒島裕子, 通事樹, 與儀護,
二木治雄, 仲村愛, 辺土正人, 仲間隆男, 大貫惇睦
播磨尚朝 A
Eu intermetallic compound EuAl4
Univ. of the Ryukyus and Kobe Univ.A
S. Nakamura, N. Higa, H. Kurosima, T. Toji, M. Yogi, H. Niki,
A. Nakamura, M. Hedo, T. Nakama, Y. Ōnuki, and H. HarimaA
希土類金属間化合物 EuAl4 は,体心正方晶の BaAl4 型(空間群 I4 / mmm)の結晶構造を
示し,Eu は,体心正方晶のコーナーとセンターに位置しており,Al は結晶学的に異なる 2
つのサイトに存在する(図 1)。EuAl4 は,Eu2+ (J = S = 7/2) が磁性を担い,外部磁場 1 T に
おいて,TN = 6 K 以下で反強磁性を示し,磁化容易軸は [001] 方向である。常磁性相では,
磁化はキュリーワイス則 χ = C/(T – θp)に従い,キュリーワイス温度 θp は+14 K [1] で,有効
磁気モーメント μeff は約 8μB である。また,EuAl4 は,150 K 付近で CDW 転移を起こすと
考えられている。
我々は,Al の自己フラックス法で育成した EuAl4 単結晶を粉末化し,常磁性状態での 27Al
NMR 測定を外部磁場 6.5 T で行い,Al の 2 サイトの信号を見出した。150 K での 2 サイトの Al
のスペクトルを図 2 に示す。27Al は核スピン I = 5/2 なので、核四重極相互作用の影響があり,ス
ペクトルが 5 本観測される。観測されたスペクトルを解析した結果を図 2 に実線で示す。スペクト
ルの解析から核四重極周波数 fQ を求めると,150 K において Al(I)は,0.47 MHz,Al(II)は,0.28 MHz
であった。Al(II)は fQ の値が小さいので,図 2 では,元々の線幅によって 5 本に分離せず 1 本のス
ペクトルになっている。また,解析では,Al(I)と Al(II)の線幅は同程度としてフィッテイン
グを行った。
ナイトシフトは, Eu の f 電子による RKKY 相互作用によって,温度が下がるにつれて,負
側に大きくシフトしている (図 3)。また,その温度変化はキュリーワイス則で説明でき,キュリー
ワイス温度 θp = −5 K でよくあう。しかし,磁化率から求めた θp とは一致しない。また,30
K 以下では,ナイトシフトはキュリーワイス側からずれている。ナイトシフトと磁化率の
関係を与える K-χ プロットは,常温から 40 K 付近までは一致するが低温では一致しない。
Al サイトの Hyperfine field は,Al(I)で−3.231 kOe/μB,Al(II)で−1.823 kOe/μB であった。また,
CDW に関連した変化をナイトシフトに見出す事はできなかった。
T1 は,Al(I),Al(II)の両サイトについて,300~2 K まで測定を行った。T1 が分布してい
ると考えられ,T1S と T1L の 2 成分で解析した。1/ T1 は,高温側ではほぼ一定値を示すが 20
K 以下ではほぼ T 3 で減少する (図 4, 5)。両ピークとも T1 の短い成分 T1S が主体となってい
てその割合は 90%程度である。
スペクトルの線幅の温度依存性は,図 6 に示すように温度が下がるにつれて増加するが,
20 K 以下ではほぼ一定の値を示す。300~20 K の間ではキュリーワイス則にのり,θP=−5 K
を示し,ナイトシフトの温度依存性と良く一致する。
[1] J. H. Wernich et al.: J. Phys. Chem. Solids 28 (1967) 271.
Eu
Al (II)
Eu
Al (I)
Al (I)
Al (II)
c
b
a
図1
結晶構造
Al (II)
Al (I)
Knight shift [ % ]
0
-10
EuAl4
-20
P = -5.0 K
-30
Al (I)
Al (II)
-40
0
50
100
150
200
250
Temperature [ K ]
図2
スペクトル
図3
ナイトシフト
300
10
4
10
4
Al(I)
10
10
10
T
2
T
1
T
10
3
10
1/T1S
1/T1L
0
10
-1
2
1
4
3
3
1/T1
10
10
6 8
2
4
10
6 8
2
4
10
6 8
100
図4
1
T
1/T1S
1/T1L
-1
2
1000
4
1
図5
EuAl4
2.0
P = - 5.0 K
4
6 8
2
100
4
6 8
1000
Al(II) の 1/ T1 の温度依存性
1.5
1.0
0.5
0.0
150
200
Temperature [K]
図6
2
Temperature [K]
2.5
100
6 8
10
3.0
50
3
0
Al(I) の 1/ T1 の温度依存性
0
3
2
Temperature [K]
Width [MHz]
1/T1
10
Al(II)
3
線幅の温度依存性
250
300