KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date URL 遍歴電子磁性体(Sr-Ca)RuO[3]の物性( Abstract_要旨 ) 木山, 隆 Kyoto University (京都大学) 1999-03-23 http://hdl.handle.net/2433/181975 Right Type Textversion Thesis or Dissertation none Kyoto University 【1 28】 氏 名 呆 箇 詣 学位 ( 専 攻分野) 博 士 学 位 記 番 号 理 学 位 授 与 の 日付 平 成 11年 3 月 23 日 学 位 授 与 の要 件 学 位 規 則 第 4 条 第 1項 該 当 研 究 科 ・専 攻 理 学 研 究 科 化 学 専 攻 学位 論 文 題 目 遍歴電子磁性体 ( sr ca)Ru03 の物性 博 第 ( 理 学) 2065 号 Phys i c ala ndc he mi c alpr ope r t i esi t ni ne r a nt el ec t r onmagne t i cs ys t e m ( Sr Ca)RuO3 ( 主査) 論 文 調 査 委 員 教 授 小 菅 暗 二 論 文 内 教 授 高 野 幹 夫 容 の 要 教 授 新 庄 輝 也 旨 高温超伝導体の発見以来,遷移金属酸化物の研究が活発 に行 われてい るが中で もRuの酸化物 は非常に興味深 い物質群 で ある。例 えばRud dl e s de nPo ppe r 相( An+1 BnO叫 1 )のn- 1にあたる ( Sr , Ca)2 RuO。はAサイ トをSrか らCaに置換 してい く とバ ン ド幅が変わることによ り物性 が変化す ることが報告 されてい る0 Sr 2 RuO。は超伝導体 ( Tc ∼1 . 5 K)であるが,Srを Caで置換 したCa RuO。は反強磁性絶縁体 となる。 また,n-2の ( Sr , Ca)3 Ru2 0日まCa3 Ru2 07 が基底状態では反強磁性絶 で置換 してい くと弱い強磁性 を示 しSr 3 Ru2 07 は強磁性 に近い金属ではないか と議論 されてい る。 さらにパイ 縁体,CaをSr 2 Ru2 07 は金属絶縁体転移 を示す等非常に興味深 い。本研 究で取 り上 げた ( Sr, Ca) ロクロア構造 を とる物質 について もT1 Ru03 はRud dl e s de nPo ppe r 相のn--にあたる。 Sr Ru03 は 4d 遷移金属酸化物 としては極 めて珍 しくTc ∼1 6 0 Kで強磁性 を 示す. も う一方のCa Ru03 は I1 5 0 K程度の負 の大 きなWe i s s 温度 をもつが低温までCur i e We i s s 的な磁化率の温度変化 を示 し,また磁気秩序 をもたない ことが中性子回折,9 9 RuMds s baue r 測定によ り報告 されてい る. Ca Ru03 が大 きな負 のWe i s s 温度 を示す ことか ら局在モーメン トモデルか らは大 きな反強磁性相互作用 をもつ ことが示唆 され るが,それ にも関わ らず低 温まで磁気秩序 をもたない原 因についてGo o de no ug hら多 くの人 に よって長 い間議論 され てきた。本研 究では ( Sr, Ca) の系は遍歴電子磁性体の系 として系統的に説 明できると予想 し,試料合成 か ら低温Ⅹ線 回折測定,磁化率測定,強磁 Ru03 7 0NMR測定, さらに弱い強磁性 ,強磁性 に近い金属の動的な理論であるSCR理論 による解析 を 場磁化測定,比熱測定,1 行 った。 Cax Ru03 をRho de s I Wo hl f ar h プ ロッ ト上にプ ロッ トした。Rho t de s I Wo hl f ar t hプ ロッ トは横軸 に強 まず,本研究のSr卜Ⅹ 磁性転移温度Tc ,縦軸 に常磁性磁化率か ら見積 もった 2Sの値 と低温の強磁性状態での 自発磁気モーメン トの大 きさPs の比 2S/ Psをさま ざまな物質 についてプ ロッ トした ものである。 局在モー メン ト系,絶縁体の強磁性体ではTcの大 き さに関わ / Ps- 1の直線上にの るが,遍歴電子磁性体では 2S/ Psは 1よ り大 き くな り一般 にある曲線 と 2S/ Ps- 1の直線 と らず 2S で囲まれた領域 に分布す ることが経験的に知 られてい る。本研究のSr l _ Ⅹ Ca x Ru03 についてみ る とこの図か らSr Ru03 はNi 等 と同 じ中間領域 の遍歴電子磁性体,Sr をCaで置換 してい くと弱い強磁性 になってい ることが予想 され る。 さらにここか Ru03 では遍歴電子磁性体の強磁性発現の条件,いわゆるS t o ne r 条件 を満た していないために基底状態でも ら類推す るとCa 常磁性である交換増強 された常磁性体,いわゆる強磁性 に近い金属であると予想 され る。 さらにCur i eWe i s s 的な磁化率は 局在モーメン ト系のものではな くTi Be2 やY ( Col _ Ⅹ Al x )2等の物質で高温で観測 されてい るもの と同様 の ものであると考 え られ る。 この よ うな遍歴電子磁性体 の系 では大 きな磁気 体積効果 が期待 され るこ とか ら低温Ⅹ線 回折測定 を行 った。 その結果 CaRu03 の体積 の温度変化 は一般 に見 られ るよ うな格子振動 による熱膨張の振 る舞い を見せた。それに対 し, Sr Ru03 は強 磁性転移温度Tc ∼1 6 0 K以下で明 らかに異常を示 し,体積 がほ とん ど温度変化 していない。 これは, 自発体積磁歪 によって - 343- 格子体積が強磁性転移温度 Tc 以下で温度変化 しない とい う, 3d遷移金属のFe Ni 合金等で観測 されているイ ンバー効果 を 示 していることになる。遷移金属酸化物でイ ンバー効果が観測 されたのは初 めてのことである。局在モーメン ト系の磁性体 では この よ うな大 きな 自発体積磁歪 を示 さない ことが知 られてお り, この ことか ら上の予想通 りにSr Ru03 は中間領域の遍 歴電子磁性体であるとい うことが結論 され る。 次に比熱測定 を行 った。その結果で特徴的なことはC/ TをT- 0に外挿 して見積 もった見かけ上の電子比熱係数 が3 0-1 0 0 mJ/ mol・K2 と非常に増大 してい ることと電子比熱係数 が極大 を とる組成 Ⅹ∼0.2,0. 4が強磁性相 と常磁性相 の臨界組成 に Ru03とSr 。 . 2 Ca。 . 8 Ru03 では低温でC/ Tの上昇が見 られ るとい あた ることである。 さらに重要なことは常磁性の試料であるCa うことである。 これ らの特徴 は弱い強磁性体か ら強磁性 に近い金属-変わるY ( Co卜Ⅹ Al x) 2等で も全 く同様 に観測 されてお り, この系 も弱い強磁性体か ら強磁性 に近い金属-変 わってい ることを強 く支持 してい る。 さらに常磁性 の試料である Ca RuO。とSr 。 . 2 Ca。 . 8 Ru03 の結果 についてSCR理論 によ り与 え られてい る比熱 の表式でフィ ッティ ングを行 うと,実験結果 を良 く再現 しさらに得 られたパ ラメー ターについて もバ ン ド計算,熱膨張測定,NMR測定で得 られたパ ラメー ター と良い 一致 を示 し定量的にもこの系がSCR理論で説明できるとい うことが分かった。 NMRによってス ピン-格子核磁気緩和率 1/ Tlを測定 した。 1/ Tlは試料 の組成 に因 らず高温では2 0 0 s e c 1程 さらに170度の大 きさの一定値 を示 した。 この値 について局在モーメン トモデルでの理論値 と比較す ると実験結果は理論値 よりもずっ と小 さく局在モー メン トモデルでは説明できない ことが分かった.次に 1/ TI Tを静磁化率 xに対 してl o g・ l ogプ ロッ トす ると 直線 の傾 きは組成 によらず ほぼ1で,つま り 1/ TI Tは xの一次に比例す ることが分かった. この結果は強磁性相 関が発達 し r e nt z関数で表 したモデルでの計算結果 と一致す るO局在モー メン ト系のTc 以上で成 り立っ た遍歴電子系の動的磁化率をLo と考 え られ るス ピン拡散モデル を用い るとこの結果 は説明できない。 これ らの ことか らNMRの実験結果 もこの系が強磁性 相関の発達 した遍歴電子磁性体の系であることを示 してい ると考えられ る。 最後 にTc 以下の磁化測定お よびM Rによって得 られたパ ラメー ターを用いて,SCR理論 によって強磁性 の試料の常磁性 磁化率を計算 した。その結果 Sr Ru03 は実験結果 と計算結果は合わないが,Sr 。 . 4 Ca。 . 6 Ru03 では良い一致を示 した。 この結果 RuO。は中間領域の遍歴電子磁性体であ り弱い強磁性 ,強磁性 に近い金属 の理論であるSCR理論では説明できないが, はSr Tc ∼2 5 KのSr 。 . 。 Ca。 . 6 Ru03 は弱い強磁性 の領域にあ りSCR理論で説明できるとい うことを示 していると考えられ る。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 Sr , Ca)Ru03 の合成,物性 についてこれまで研究 を行ってきた。( Sr , Ca)RuO。の特にCaRu03 はCur i e ・ We i s s 申請者 は ( 的な磁化率の温度変化 を示 し,大きな負のWe i s s 温度 をもつことか ら大きな反強磁性相互作用があることが示唆 されるが低温 o de no ug h らによって議論 されてきた.申請者はこのよ うなCaRu03 の まで磁気秩序 を示 さない.その原因について古 くか らGo Sr , Ca)Ru03 の系の磁性 が遍歴電子磁性体 として統一的に理解 できるのではないか とい う今 までの議論 と全 磁性 を含 め ( Ru03 く違 う解釈 を予想 し,実際定量的にもそのよ うな解釈で良 く説明できることを示 した。 これは長年謎 とされてきたCa の磁性 を説明す る非常に重要な成果であると考 えられ る。 Ru03 が大 きな磁気体積効果 を持 ちイ ンバー効果 を示す ことを発見 した。 これは今 までFe Ni 合金 またその研究の中でSr 等遷移金属合金で知 られていた現象で酸化物で発見 したのは初めての例である。インバー効果等 を含む大きな磁気体積効果 が酸化物等 も含め遍歴電子磁性体で一般 に観測 され るとい うことを示 した重要 な結果である と考 え られ る。 さらに申請者 は比熱測定や微視的測定である核磁気緩和率等の測定 も行 った。その結果定性的にもこの系が遍歴電子磁性 体の系 として理解 でき, さらに定量的にもそのよ うな解釈で説明できることを示 した。 このよ うに様々な実験,解析か ら定 性的,定量的にこの系が遍歴電子磁性体であると理解できることを示 した。 さらに高温超伝導の発見以降特 に遷移金属酸化物の強相 関電子物性が注 目されている。本研 究の ( Sr , Ca)Ru03も遷移 金属酸化物であ り,そのよ うな系について遍歴電子磁性 の観点か ら深 く研究 された例はほ とん どな く遷移金属酸化物におけ る遍歴電子磁性 の研究 とい う観点か らも非常に重要な研究であると考えられ る。 また最近 Sr 2 RuO。が超伝導転移す ることが発見 され活発 に研究 されているがSr2 RuO。は ( Sr, Ca)Ru03と同 じRudd l e s - de nPo ppe r 相 に属 し,構造的に深 く関連 しその超伝導機構 の研究の観点か らも重要であると思われ る。 Sr 2 Ru04 は強磁性 - 344- 的電子間相互作用 によ りp波超伝導状態が実現 してい るのではないか と議論 され てお り,また同 じくRuddl es de nPo ppe r 相 07 も強磁性 に近い金属ではないか と思われ るよ うな磁性 を示す ことが分かってい る。つま り一般 にpe r o vs に属す るSr3Ru2 ki t e関連型構造 を持つ金属的なRu酸化物 について強磁性的電子 間相互作用 がその物性 を強 く支配 してい るのではないか と Sr,Ca) Ru03 が強磁性相 関の発達 した遍歴電子磁性体 として定量的にも説 明でき い うことが示唆 され るが,本研究では ( ることを初 めて明 らかに し,広 く遷移金属酸化物の理解 において非常に重要な結果 を与 えた と考 え られ る。 これ らは広 く固体化学 ・固体物理の分野に貢献す るもの と期待 され る。 よって本論文は博士 ( 理学)の学位論文 として十 分価値のあるもの と認 め られ る。 本 申請論文に報告 されてい る内容お よび これ に関連 した分野について諮問 した結果,合格 と認 めた。 - 34 5 -
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