事例 運動会 仲間と全力を尽くす中で、 より良い価値を生む関係の あり方を学ぶ 愛 媛 県 立松 山 東 高 校 かじはら・ゆうき 愛媛県立松山東高校 2年生︵理系クラス︶ 梶原夕希 同じ目標を持った仲間が支え合い、 時に衝突し、お互いを高めた ト レ ー ス 大 会 の 頃 に は、 グ ル ー プ の 運動会 概要 ﹁ 愛 媛 県 立 松 山 東 高 校 の ス ク ー ル・ アイデンティティーが具現化された は、 運 動 会 を 運 営 す る た め に 必 要 な ︵4人︶であり、グループのメンバー ループ長が運動会に懸ける自分の思 ン バ ー を 前 に、 グ ル ー プ 長 と 副 グ 毎 年5 月、 グ ル ー プ 別 に 初 め て の 集 会 が 開 か れ ま す。 約26 0 人 の メ パ ー ト の ほ か、 劇、 大 道 具 な ど い ろ 援合戦でのダンスの振り付けをする ら を 飾 る パ ネ ル 絵 を 作 る パ ー ト、 応 運 動 会 の 準 備 は、 パ ー ト ご と に 進 め ま す。 や ぐ ら を 組 む パ ー ト、 や ぐ 中のいろいろな人と学年やクラスを 行 事﹂ と 言 わ れ る の が、9 月 に 行 わ 作 業 を 分 担 す る﹁ パ ー ト ﹂ に 所 属 す い を 述 べ る の で す が、 今 年 度、 私 の い ろ な パ ー ト が あ り ま す。 私 は1 年 徒の自主性を最大限に尊重する点に れ る 運 動 会 だ。 ま ず は 5 月 初 旬 に、 る。 パ ー ト に は、 26 0 人 の 生 徒 が グ ル ー プ で は、 先 輩 全 員 が﹁一 人 ひ 生 の 時 は 応 援 パ ー ト で し た が、 2 年 グ ル ー プ 長 ︵1 人 ︶ と 副 グ ル ー プ 長 る パ ー ト な ど が あ り、 そ れ ぞ れ パ ー そ れ か ら2 週 間 程 経 つ と、 リ レ ー カ ー ニバ ル が あ り ま す。 グ ル ー プ が ら で す。 実 際、 い ろ い ろ な パ ー ト を 事をしているのかを知りたかったか 成︶ に 分 け ら れ、 そ れ か ら、5 月 の 応援合戦を行うミニ運動会︶ 、7 月 ト 長 の 指 示 の 下、 運 動 会 本 番 に 向 初 め て 団 結 し て 臨 む 行 事 で す。 私 も 手 伝 う こ と で、 例 え ば や ぐ ら の 組 み 分間の劇をつく のボートレース大会をグループ対抗 け て 夏 休 み 中 か ら 準 備 を 進 め る。 グ 1 年 生 の 時、 リ レ ー カ ー ニバ ル を 経 動会中に披露する で 競 い 合 う。 そ れ ら の 行 事 を 通 し て ル ー プ 長、 副 グ ル ー プ 長、 パ ー ト 長 上 げ 方 な ど、 何 十 年 に も わ た っ て 先 リレーカーニバル︵リレー、綱引き、 学 年・ ク ラ ス を 超 え た 絆 を 深 め た 上 験 し て、﹁学 校 行 事 っ て 楽 し い な あ﹂ のすごさを知ることが出来ました。 の 選 出、 メ ン バ ー の パ ー ト 分 け、 そ ていこう﹂ と思いました。7月のボー で 開 か れ る 運 動 会 は、 ま さ に グ ル ー られる。 輩 か ら 受 け 継 が れ て き た 技 術、 伝 統 同 校 の 運 動 会 の 最 大 の 特 徴 は、 生 ﹁これからはもっと積極的に参加し し て 企 画 の 全 て が、 生 徒 主 導 で 進 め し た。 そ れ ぞ れ の パ ー ト が ど ん な 仕 超えて仲良くなりました。 全 校 生 徒 が 学 年 縦 割 り の4 グ ル ー プ 乗ることが出来るやぐらを竹と縄だ と り が 役 割 を 持 ち、 み ん な で 運 動 会 生では他のパートを臨機応変に手伝 運動会に向けて、 グループの団結力を高めます ︵青 柳・ 紫 雲・ 紅 樹・ 黒 潮 グ ル ー プ。 け で 組 み 上 げ る パ ー ト、 や ぐ ら を 飾 を つ く り 上 げ た い﹂ と い う こ と を 話 う﹁ ヘ ル プ ﹂ と い う パ ー ト を 選 び ま あ る。 各 グ ル ー プ の 指 揮 を 執 る の は 各グループ約260人の生徒で構 る 巨 大 な パ ネ ル 絵 を 作 る パ ー ト、 運 していたのが印象的でした。 ●愛媛県立松山東高校 生徒が語る プ活動の集大成と言える。 10 14 Fe b r ua r y 2 0 15 3 目標が同じだから、 衝突することもあります 対して自分のアイデアを遠慮せずに る と 思 っ た ら、 下 級 生 で も 上 級 生 に た時期があったようです。 わ ず、 議 論 が 延 々 と 続 い パート長の意見が折り合 年生の先輩がす 言える雰囲気があります。 で も、 ご い の は、 そ う し た 様 子 http://matsuyamahigashi-h.esnet.ed.jp/ た だ、 良 い 運 動 会 に し た い と 全 員 が 強 く 思 っ て い る か ら こ そ、 意 見 が 〒 790-8521 愛媛県松山市持田町2- 2-12 運動会の準備風景 き出す心配りが大切だということで 他 の 人 の 主 体 性 も 尊 重 し、 そ れ を 引 主 体 と な っ て 行 動 す る だ け で な く、 運 動 会 の 成 功﹂ は 全 員 が 目 指 す 目 標 伝 う 場 面 を 見 た 時、﹁ 松 山 東 高 校 の ループが自分たちの作業を止めて手 運 動 会 の 本 番 直 前、 大 道 具 が 壊 れ て し ま っ た あ る グ ル ー プ を、 他 の グ 1 つ の 目 標 を 目 指 す 時 に は、 自 分 が す。 そ し て、 意 見 が 対 立 し た 時 に、 る よ り も、 相 手 の 意 見 と 自 分 の 意 見 の そ れ ぞ れ の 良 い と こ ろ を 生 か し、 新しい展開へとつなげていく粘り強 運 動 会 を2 度 経 験 し て、 先 生 や 保 全力を尽くした経験は 受験にも生きると思います なのだと確信しました。 やぐらを飾るパネル絵を作る生徒たち。パネル絵の大きさは横幅 24 メートル。 運動会の午前と午後で掛け替えるため、各グループで2枚ずつ制作する。 衝突を恐れて自分の意見を引っ込め 先輩の後ろ姿を見て気 付 い た こ と は、 み ん な で した。 と、 後 か ら 先 輩 に 聞 き ま からするようにしていた 議論は1・2年生が帰って を心配させてしまうので、 ろ し て い る と、 後 輩 た ち ろ で す。 3 年 生 が お ろ お 3 さが必要なのだと分かりました。 Febr u ar y 2 0 15 15 夏 休 み 中 は、 補 習 が 終 わ っ て か ら 夕 方 時 の 下 校 時 間 ま で、 ほ ぼ 毎 日 年度入試では、国公立大は、東京大、京都大、大阪大、愛媛大、九州大などに 202 人が を1・2年生には極力見せ 。 合格。私立大は、慶應義塾大、早稲田大、同志社大などに延べ 404 人が合格(現役のみ) ぶ つ か っ て し ま う こ と も あ り ま す。 ◎ 1878(明治 11)年設立。全日制・通信制/普通科/共学。1学年約 360 人。2014 準 備 作 業 を し ま す。 パ ー ト 長 の 指 示 での文武両道を目指す。スーパーグローバルハイスクール(SGH)指定校。 ないようにしているとこ より豊かに」をモットーに、人間的魅力のあるリーダーの育成を標榜。野球部、サッカー 私 の グ ル ー プ で も、 グ ル ー プ 長 と 部、ボート部、俳句部、囲碁・将棋部など、伝統、実績に秀でた部も多く、高いレベル ● 高みに挑む教科外活動 変化を生き抜く﹁軸﹂と﹁修正力﹂の育成 愛媛県立松山東高校 に 従 い つ つ も、 グ ル ー プ の た め に な 特 集 ◎旧制愛媛県松山中学校以来の伝統を持つ。 「より高く、より広く、より深く、そして 3 写真 6 護者が生徒の自主性を尊重してくれ いという気持ちが強くなりました。 で す。 私 の 母 校 も 学 校 行 事 は 盛 ん で し た が、 松 山 東 高 校 が ユ ニ ー ク な の れ た 上 で、 最 終 的 に は 希 望 者 同 士 の 話 し 合 い で 決 め ら れ ま す。 自 分 の 力 輩 に 憧 れ て、 リ ー ダ ー の 仕 事 を 希 望 残 念 で す が、 そ れ は 仕 方 の な い こ と し、 も し も 希 望 が か な わ な か っ た ら が な い 生 徒 は1 人 も お ら ず、 逆 に 言 と こ ろ だ と 思 い ま す。 や る べ き 仕 事 1・2 年 生 に も 役 割 が ち ゃ ん と あ る 徒 主 体 で 行 い ま す。 運 動 会 に 関 す る て 竹 の 運 搬 な ど も3 年 生 を 中 心 に 生 の 所 有 者 へ の 許 可 申 請、 伐 採、 そ し を、 山 に 取 り に 行 く の で す が、 土 地 巨大なやぐらを組むために必要な竹 ように変えた方がよいと思います﹂ ト 長 に﹁こ の 作 業 の 進 め 方 は、 こ の ります。そうなると、 1 年生からパー の完成形をイメージできるようにな 日 か 経 つ と、 全 員 が 最 終 的 な 運 動 会 か ら ね﹂ と 説 明 し ま す。 そ う し て 何 う 先 輩 の 姿 を 見 た か ら、 私 も 勉 強 は ちゃんとやりました。 16 Fe b r ua r y 2 0 15 て い る こ と を 実 感 し ま し た。 私 た ち は、確かに 私たちもルールはしっかり守らなけ す る 人 は た く さ ん い る の で、 競 争 率 で す。 グ ル ー プ 長 や 副 グ ル ー プ 長 に え ば、 全 員 が 協 力 し な い と 運 動 会 が 年生が中心だけれども、 量を見極められるのはしんどいです れ ば い け な い と 自 覚 し て い ま す し、 は と て も 高 い で す。 グ ル ー プ 長 と 副 な れ な く て も、 同 じ 目 標 に 向 け て 自 成 り 立 た な い の は、 こ の 学 校 の 運 動 来 年 度 は、 グ ル ー プ 長 か 副 グ ル ー プ 長 に な り た い と 思 っ て い ま す。 先 そうしないと伝統が途絶えてしまう グ ル ー プ 長 は、 同 じ3 年 生 の 仲 間 か 分 の 役 割 を 全 う す れ ば い い ⋮⋮ き っ を 信 頼 し て 任 せ て く れ る の だ か ら、 ことをみんな分かっています。 ら﹁ こ の 人 に は ま と め る 力 が あ る ﹂ 年 生 の パ ー ト 長 が﹁ こ ん な 仕 事 が あ ん。 そ う し た 生 徒 を 見 付 け て は、3 すればよいかすぐには分かりませ 生 の 時 と 違 う パ ー ト に 入 れ ば、 何 を 見 ら れ ま す。 2 年 生 に し て も、 1 年 持ち無沙汰な様子の生徒もちらほら 分 は 何 を す れ ば よ い か 分 か ら ず、 手 そ う は 言 っ て も、 運 動 会 の 準 備 が 始 ま っ た 直 後 は、 1 年 生 の 中 に は 自 会の特徴と言えます。 愛媛県立松山東高校 いしまる・たかよし 生徒主体だからこそ 教師に出来る支援を見極める 教職歴1年。同校に赴任して2年目。進路課。 石丸隆祥 と誰もがそう思っているはずです。 長 い 準 備 期 間 の 中 で、 悩 ん だ り、 困ったりしたこともたくさんあった は ず で す が、 運 動 会 が 終 わ っ た 今 は ど れ も さ さ い な こ と に 思 え ま す。 そ れだけ運動会本番は盛り上がった し、 楽 し か っ た で す。 最 後 に 校 歌 を 歌 っ た 時 は、 た く さ ん の 生 徒 が 泣 き ました。もちろん、私もです。 ﹁目標に向けて全力を尽くした運 動 会 の 経 験 は、 受 験 に も 生 き る と 思 う﹂ と、 私 は 何 人 も の 先 輩 か ら 聞 き 本 校 の 運 動 会 は、 基 本 的 に 生 徒 た ちの力だけでつくり上げる行事で 全 て の こ と は、 先 輩 か ら 受 け 継 い だ などと提案する場面も見られるよう る よ ﹂﹁ 次 は こ の 作 業 が 待 っ て い る す。 各 グ ル ー プ に お い て 生 徒 は 自 分 こ と で あ り、3 年 生 に は そ れ を 後 輩 になるのです。 英 単 語 帳 を 広 げ て い ま し た。 そ う い 今、 私 は 医 療 系 の 学 部 を 志 望 し て い ま す。 も と も と 医 療 に 興 味 が あ っ た ち で そ れ ぞ れ の 役 割 を 決 め、 企 画 に伝えていく使命もあります。 困難を自分で乗り越えてこそ、 生徒主体になるのです た の で す が、 運 動 会 で の 経 験 を 通 し を 考 え ま す。 運 動 会 の お よ そ1 か 月 運 動 会 の 準 備 に、 生 徒 は 本 当 に 一 て、 自 分 は 人 と 話 す の が 好 き だ と 気 私も同じ愛媛県の公立高校の出身 前、7 月 の 下 旬 に は、 応 援 席 と な る ま し た。 確 か に 先 輩 を 見 る と、 運 動 ﹁この人は決断力がある﹂と評価さ 3 が 付 き、 人 に か か わ る 仕 事 に 就 き た 会 の 準 備 期 間 中 も、 昼 休 み な ど に 教師が語る た生徒の様子を目にしたこともあり す る う ち に、 感 情 が 高 ぶ っ て し ま っ 衝 突 す る こ と も あ る よ う で す。 議 論 企 画 内 容 や 作 業 の 進 め 方 を 巡 っ て、 生 懸 命 取 り 組 み ま す。 だ か ら こ そ、 て は じ め て、 生 徒 主 体 の 行 事 に な る す。 困 難 を 自 分 た ち の 力 で 乗 り 越 え 日 は も う 帰 り な さ い﹂ と 言 う だ け で ち教師は、下校時間が来た時に、 ﹁今 に は 生 徒 た ち に 任 せ て い ま す。 私 た 共有する仲間をつくることが出来れ で な く、 そ こ に 至 る ま で の 苦 し み を 目標を達成する感動を味わうだけ だ と 思 う の で す。 運 動 会 で、 大 き な る の が、 み ん な で 頑 張 る 運 動 会 な の め る こ と も 何 十 年 と 続 く 伝 統 で す。 省 し た 卒 業 生 が、 静 か に 片 付 け を 進 た ち 教 師、 そ し て こ の 日 の た め に 帰 が 余 韻 に 浸 れ る よ う に、 保 護 者、 私 感 極 ま り、 涙 す る そ の 傍 ら で、 生 徒 力 を た た え 合 い ま す。 多 く の 生 徒 が 松 山 東 高 校 に と っ て、 運 動 会 は 最 も ば、 そ れ が 松 山 東 高 校 の 生 徒 と し て 全員で受験に向き合う姿勢へとつな 大切な行事なのです。 のだと思います。 がるはずです。 そ う し た 経 験 が な い と、 ほ し い と 伝 え て い ま す。 などにも全力を尽くして 外 の 遊 び や 趣 味、 部 活 動 の は 当 た り 前 で、 そ れ 以 校なのだから勉強をする 話 し ま す。 そ し て、 進 学 ﹁やりたいことは全力でやっ 私は、 てほしい﹂と生徒によく 慮 だ と 思 い ま す。 ま た、 グ ル ー プ の 仕 活 動 な ど は、 教 師 だ か ら 出 来 る 配 画 し た、 学 校 と し て の 地 域 へ の 奉 の人たちに理解してもらえるよう企 の本校の伝統行事をこれからも地域 外で行うボートレースや竹取りなど 極 め る こ と が 大 切 で す。 例 え ば、 校 そ出来るサポートとは何なのかを見 る た め に は、 私 た ち が 教 師 だ か ら こ 誰もが全力を尽くせるのが 運動会なのだと思います ま す。 そ ん な 時、 私 が﹁こ う す れ ば 解決する﹂と性急に割って入っては、 生徒たちのためにはなりません。 ﹁こ ん な 考 え 方 も あ る﹂ と ア ドバ イ ス す 受験勉強で自分自身を追 運営をグループ長などに任せる一方 運 動 会 は、 確 か に 生 徒 主 体 の 活 動 で す。 し か し、 生 徒 主 体 で あ り 続 け い込むことは出来ないと で、 彼 ら と 面 談 を 重 ね な が ら、 後 輩 運 動 会 終 了 直 後、 生 徒 た ち は グ ル ー プ ご と に 集 ま り、 そ れ ま で の 努 の1つです。 するように働き掛けていることもそ に 対 す る 見 方、 接 し 方 を よ り 豊 か に 思うのです。 ● 高みに挑む教科外活動 の生徒に経験させてくれ せ ん。 私 は、 そ れ を 多 く 言うほど簡単ではありま た だ、 全 力 を 尽 く す こ と は、 何 で あ っ て も 口 で 竹と縄だけで組み上げたやぐらの上に 260 人の生徒が乗り、応援時にはその上 で跳びはねる。やぐらの近くに飾り付けられた巨大な人形の制作、更に劇づくり など、様々なパートが限られた時間で作業を進め、運動会本番を迎える。 変化を生き抜く﹁軸﹂と﹁修正力﹂の育成 Febr u ar y 2 0 15 17 る こ と も 時 に は あ り ま す が、 基 本 的 特 集 3 運動会当日の様子 写真
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