ミセルとは 混じり合わない液体のうちの一方が粒状に会合している集合体。 体内での薬物運搬 • ミセルに医薬品を封入する と薬物が血液中に長い間残 り効果が持続する。 • 副作用を減らせる。 • 薬物量を簡単に 調節できる。 水中での有機蛍光体 • 水中でも有機蛍光物質が使え ることから水槽やプールに絵 や画像の表示が可能。 • 光るプール。 • 水をディスプレー化。 • 新しい噴水の開発。 ミセルを用いた研究は多数存在し活用方法も多い。 逆ミセルによる無機ナノ蛍光体の合成 当部活動では逆ミセル法により作製した無機ナノ蛍光体の 研究を行ってきた。 改善後 60 発光強度 50 40 30 20 Ex = 302 nm 10 0 400 450 500 550 波長/nm 600 650 700 高校の化学室でもできる簡単な逆ミセル法の確立 簡単な合成法の確立と詳細な発光メカニズムを解明。 研究目的 逆ミセル法を応用したミセル法により, 高校の実験室で簡単にできる有機ナノ蛍 光体の合成法を確立する。 ドデシル硫酸ナトリウム(SDS) 今回はドデシル硫酸ナトリウムを界面活性剤として使用した。 化学式 NaC12H25SO4 ドデシル硫酸ナトリウムは洗剤 や石鹸にも使われるなど生活に おいてもなじみ深い。 化学の教科書にもある一般的な試薬を用いた。 臨界ミセル濃度(CMC) 臨界ミセル濃度はミセルのでき始める濃度。 ミセルを作製するには界面活性剤の濃度を CMC以上にする必要がある。 SDS の 濃 さ SDSの臨界ミセル濃度は 8.2mM ミセルができ始めた。 換算すると 蒸留水50 mLに0.11 g 蒸留水50 mLに0.11 g以上の濃度からミセルが形成される。 実験1 界面活性剤の適正量の評価 蒸留水50 mLに対するのSDSの量を変化させ,水溶液の発光を 観察した。 SDS / g 0.11 0.13 0.15 0.17 発光 × ○ ○ ○ 発光あり:〇 無:× (アントラセンのヘプタン溶液2.1mM) 0.11 g以外全ての濃度で有機ナノ蛍光体が作製できた。 CMC(0.11 g)を超える濃度であれば蛍光体は作製可能。 実験2 アントラセンの適正量の評価 ミセル溶液にアントラセンのヘプタン溶液を滴下し,ミセル中 のアントラセン濃度を変化させた。 アントラ セン (μM) 0.028 0.056 0.084 0.11 0.47 2.72 光り方 SW ○ LW × SW ○ LW △ SW ○ LW △ SW ○ LW △ SW ○ LW ○ SW △ LW ○ ○:強く光る △:弱く光る ×:光らない SW:ショートウェーブ 254 nm LW:ロングウェーブ 365 nm 薄い溶液ではSWで良く光り,濃い溶液ではLWで良く光る。 アントラセンの濃さによって励起波長が変わる。 実験2 アントラセンの適正量の評価 アントラセンの量で励起波長が異なることについて。 薄い場合 濃い場合 ミセル中の溶液濃度が濃くなると,分子間力によってアン トラセンの多量体が形成され,励起波長が長くなる。 ミセル内でのアントラセンの凝集が原因。 実験3 1. 2. 3. 4. アントラセンの有機ナノ蛍光体 水にSDSを溶かし空のミセル溶液を合成した。 アントラセンのヘプタン溶液を合成した。 2つの溶液を混合,攪拌した。 紫外線を照射して発光を観測した。 〈アントラセンのミセル溶液〉 アントラセンのミセル水溶液が完成。 実験3 アントラセンの有機ナノ蛍光体 A液とB液の比較 バルクとナノサイ ズでSW,LWともに 同じ青色に発光し た。 紫外線 SW:ショートウェーブ 254 nm LW:ロングウェーブ アントラセンはバルクとナノサイズで同じ発光をした。 365 nm 実験4 1. 2. 3. 4. ナフトールの有機ナノ蛍光体 水にSDSを溶かし空のミセル溶液を合成した。 ナフトールのトルエン溶液を合成した。 2つの溶液を混合,攪拌した。 紫外線を照射して発光を観測した。 〈ナフトールのミセル溶液〉 ナフトールのミセル水溶液が完成。 実験4 ナフトールの有機ナノ蛍光体 C液 D液 D液とE液の比較 D液 E液 ミセル溶液の 方が強く発光 した。ミセル 溶液はSWで よく光る。発 光の色は同じ だった。 ショートウェーブ 紫外線SW:ショートウェーブ E液 C液とE液の比較 C液 E液 C液 E液 ショートウェーブ ロングウェーブ 254 nm LW:ロングウェーブ ミセル溶液 はSW,バ ルクはLW でよく発光 した。発光 の色は同じ だった。 365 nm ナフトールはバルクとナノサイズで異なる発光をした。 有機ナノ蛍光体の作製のまとめ 有機ナノ蛍光体の作製方法が確立できた。 ナフトールの発光を調べ,ナノサイズにす ることで励起波長が変わったり発光強度が 変わったりすることが分かった。 バルクとナノサイズで違いがみられること からミセルを用いることで量子サイズ効果 が起こることが示唆された。 結論 逆ミセル法を応用し,水溶媒中にナノサ イズの有機発光体を作製するための高校 の化学室でもできるミセル法を確立でき た。 今後の予定 アントラセンを用いた有機ナノ蛍光体の蛍 光・吸収スペクトルをとり,ナノサイズの 効果を評価する。 アントラセン以外の蛍光物質でも同様に評 価する。 界面活性剤の種類をかえて同様に評価す る。 バルクでは光らない物質でもナノサイズに することで光る物質があるか調査する。
© Copyright 2024 ExpyDoc