ヒヤリハットマップ自動生成システムへの心拍情報の利用 Utilization of Driver’s Heart Rate in the Near Miss Map System コミュニケーション学講座 指導教員: 村山 優子 1. はじめに 車は人々の生活にとって切り離せない大事な移動 手段である.しかし交通事故は多く平成 26 年度では 57 万件の交通事故が発生し,約 4100 名の死者と約 71 万の負傷者をだしており,人々にとって車は欠か せないものでありながら危険な存在でもある.交通 事故件数の減少させる為に人間的な側面からの運転 支援が必要である. 先行研究では,運転手の感情を利用することでヒ ヤリハットマップの自動生成を行った.ヒヤリハッ トマップは運転手が危険と感じた場所の情報を取得 し,マップ上に表示させたものである.先行研究で は運転手が恐怖・驚きの感情を示した場所をスマー トフォンを用いて自動的に検出し,その情報をもと にヒヤリハットマップを自動作成する.しかし,自 動作成されたヒヤリハットマップは検出漏れがあっ た.本研究では危険と感じた場所情報の取得に心拍 情報を用いることでより精度の高い情報取得を行う. 0312008161 吉村修生 齊藤 義仰 西岡 大 感情に基づいたヒヤリハットマップ自動生成システ ムで作成されたマップとアンケートで手動で作成さ れたヒヤリハットマップで比較した結果、危険な場 所の検出漏れした割合が 36%であり精度向上が課題 となった. 3. 提案システム 人間が恐怖・驚きを感じた際,心拍数が大きく上昇 する.このことから心拍情報を計測することで運転 手の状態を知ることができると考えられる.そこで, 本研究では,先行研究の運転手の感情と位置情報に 加えて,心拍情報を用いることでヒヤリハットマッ プ自動生成システムの精度を向上させることを目指 す.図 1 にシステムモデルを示す. 2. 先行研究 本研究の先行研究¹⁾となる運転手の感情に基づい たヒヤリハットマップ自動生成システムでは,自動 車の加速度が一定以上変化し,運転者が一定以上特 定の感情を感じた場合と運転者が特定の感情を高確 率で感じた場合にサーバに対し危険地点の情報を送 信する。サーバは,クライアントから受信した危険 地点情報の蓄積を行う.蓄積したデータを元にヒヤ リハットマップの自動生成を行う。先行研究では, スマートフォンのカメラを用いて表情認識 を行う ことで,人間の感情を検知する手法を用いる.表情 認識による人間 の感情検 知では,まず ,「 angry」, 「disgusted」, 「fear」,「sad」,「surprise」,「happy」 等の基本感情を抱いた際の表情の特徴をデータベー ス化する.次に,データベースを撮影した映像と比 較することにより,高確率で一致 するものを提示す る手法である。そこで得られた感情情報と既存のシ ステムでも自動取得に用いられている加速度情報を 組み合わせる.これにより,質の高いヒヤリハット マップの自動作成を目指すものであった。運転手の 図1:システムモデル 危険を感じた運転手の車の異常状態と運転手の感 情と位置情報に加え,運転手の心拍情報をヒヤリハ ットマップ自動生成システムに送信する.自動作成 システムから送られた情報を危険な箇所を通過する 運転手に通知する. しかし,実際に心拍情報で精度が向上できるかわ かってない.そこで,心拍情報が危険な箇所に関係 あるのかドライビングシミュレータで実験した. 4. 実験 本実験では,ドライビングシミュレータ D3sim を 用いて 3 つのシナリオのシミュレーションを行った. まず,心拍情報を取得するために,被験者に心拍数 計測装置 whaoo²⁾をつけてもらう.そして,ヒヤリハ ットするシナリオを用いてシミュレーションを行い, 実際に心拍数が変化するか検証をした. 実験シナリオとして「子どもの飛び出し」と「他 車の急な割り込み」を作成した.これら 2 つのシナ リオを作成した理由は, 「交通事故とヒヤリハットに 3 関する意識調査」 ⁾で行われた「ヒヤリハットした外 的要因」の 1 位「歩行者・自転車の飛び出し」と 2 位「他車の急な追い越し・割り込み」だからである. 子供の飛び出しシナリオは,直線道路を走行中に歩 道から向かいの歩道に向かって子供が飛び出すシナ リオである.他車の急な割り込みシナリオは,直線 道路を走行中に隣の車線から車が目の前に急な割り 込みをするシナリオである.最後に比較のため何も 起きない直線道路を走行するシナリオを作成した. この 3 つのシナリオについて,運転免許証を所持す る 3 名の被験者 A~C に心拍数計測装置を装着しても らい,それぞれ走行する順序を変えシミュレーショ ンを行った.実験データから走行中どのタイミング で心拍数が上昇したか調べ,ヒヤリハットする状況 で心拍数が上昇するか検証した. 図 2~4 に各シナリオにおける被験者 B の心拍数の 変化を示す.図 2 では子どもの飛び出しシナリオで の心拍の変化である.子どもが飛び出してきたタイ ミングは 17 秒経過したときである.グラフから心拍 数が上昇していることがわかる.図 3 は他車の急な 割り込みシナリオでの心拍の変化である.他車の急 な割り込みのタイミングは 7 秒経過した時である. グラフから 7 秒以後に心拍が上昇していることがわ かる.図 4 では比較のためイベントがないため心拍 に変化は見られない.以後の結果からヒヤリハット する状況では心拍数が上昇することがわかり,危険 な箇所の検出精度向上に役立つ可能性があることが わかった. 図 3:他車の急な割り込み 図 4:直線走行 5. おわりに 本稿では,運転者の心拍情報を利用して,高品質 なヒヤリハットマップを作成するシステムの精度向 上を目指した.実験により,ヒヤリハットする状況 で運転手は心拍数が上昇した.その結果,心拍情報 から運転手がヒヤリハットした場所を,検知するこ とができる可能性があることがわかった. 今後は,実験人数を増やし,さらなる検証を重ね る必要がある.また,被験者の一人が車酔い状態に より、実験中に心拍数に大きな変動がなかったとい う課題が見つかったので,対策が必要だと考えられ る.さらに,先行研究の車の異常状態,運転手の感 情情報,位置情報に加えて心拍情報を取得した場合 の精度の向上がどれだけできるかを検証していく. 参考文献 1) 鈴木 清寛,運転者の感情に基づいたヒヤリハッ トマップ自動生成システムの開発 岩手県立大 学ソフトウェア情報学部卒業論文(2015). 2) Whaoo fitness, http://www.wahoofitness.com/ 図 2:子どもの飛び出し 3) 保険スクエア bang! 自動車保険, http://www.bang.co.jp/cont/colim-20140411
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