実験発達心理学ワークショップ 2015(EDPWS-S2015) 第 26 回日本発達心理学会自主ラウンドテーブル 予稿集 2015 年(平成 27 年)3 月 20 日(金) 9:30~11:30 東京大学 本郷キャンパス 講義室 222 (工学部 2 号館) 企画・ファシリテーター:橋彌和秀(九州大学大学院人間環境学研究院) 企画・ファシリテーター:友永雅己(京都大学霊長類研究所) 企画・ファシリテーター:杉村伸一郎(広島大学大学院教育学研究科) 企画・ファシリテーター:針生悦子(東京大学大学院教育学研究科) 企画・ファシリテーター:金沢創(日本女子大学人間社会学部) 1 発表スケジュール 9 : 30 – 11 : 30 9 : 30 - 9 : 35 趣旨説明 9 : 35 - 10 : 00 ○金重 利典 針生 悦子 10 : 00 - 10 : 25 ○ユ リラ 友永 雅己 10 : 25 - 10 : 50 ○岸本 励季 橋彌 和秀 10 : 50 - 11 : 15 ○三宅 英典 杉村 伸一郎 11 : 15 - 11 : 30 ロスタイム 2 乳児における表情を手がかりとした協調的行動の予測 -10か月児、14か月児を対象として- 金重 利典 針生 悦子 (東京大学 大学院) E-mail: kanesige[at]yb3.so-net.ne.jp 集団生活を行うヒトにとって、協調的な行動をとる人物を見極めることは重要であり、表出者の内的状態や性格を伝 える表情はその際に有用な手がかりとなる。では、表情を用いて表出者が協調的な行動をとるかを判断する能力はいつ から子どもに備わっているのだろうか。先行研究では、乳児が表情を手がかりとして、モノに手を伸ばす行動や、なでる・叩 くといった行動を予測することは示されてきたが、他者との協調的な行動の予測を直接示したものはない。そこで本研究 では、10 か月児、14 か月児が表情から表出者の援助・妨害行動を予測するかを検討した。その結果、どちらの月齢に おいても、怒り表情の人物が援助する場合に幸福表情の人物が援助する場合よりも驚くことが示された。このことより、 10 か月児・14 か月児は、怒り表情の人物は援助行動をとらないと予測することが示唆された。 チンパンジーにおける行動の同期 ユ リラ 友永 雅己 (京都大学 霊長類研究所) E-mail: yu.lira.87z[at]st.kyoto-u.ac.jp 人類学によれば、ほぼ全ての民族がダンスを持っている。また、ダンスのような同期する行動は社会的なつながりを強め ているとされる。このようなヒトの共有形質である同調行動は、いつ、どのように、なぜ、生まれたのだろうか。本研究は、ヒ トともっとも近縁なチンパンジーを対象に自発的な行動の同期の進化的起源を検討した。個体固有のリズミカルな運動 を実験室において安定的に出すために左右交互にボタンを押す「タッピング課題」を用いた。対面場面下で、二個体のチ ンパンジーが同時にタッピング課題を行ったときの行動を分析した。その結果、ヒトで見られるようなタイミングを一致させる 行動の傾向が観察された。これらの結果は、行動の同期を可能とさせる知覚-運動システムがヒトとチンパンジーで共有 することを示唆する。 3 幼児は「裏でいい人」を選好する ―評判を効率的に獲得するものに対する社会的評価― 岸本 励季 1 橋彌 和秀 2 (1 九州大学大学院 人間環境学府 2 九州大学大学院 人間環境学研究院) E-mail: kishimoto.r.k[at]gmail.com 他者を援助することで得られる第三者からの評判は、行為者にとって一種の報酬である。しかし援助行動はコストを 伴う行動であるため、行為者はできる限り少ない援助(=コスト)で評判を得るのが適応的であると考えられる。この観 点に従うと、誰かから見られているという、評判を獲得できる場面でのみ援助を行う戦略が適応的となる。社会的評価の 初期発達に関する研究では、行為者が、誰かから見られていることを、すなわち評判が獲得できる状況かを知っているか どうかという要因は考慮されてこなかった。本研究では、幼児に「見られていることを知っている場面でのみ援助を行う行為 者」と「見られていることを知らない場面でのみ援助を行う行為者」を呈示し、どちらが選好されるのかを検証した。結果、 4 歳児と 5 歳児は前者の行為者を選好した。本結果は、4 歳児と 5 歳児が、行為者が「見られていることを知らない場 面」での行為を重視し、社会的評価を下す可能性を示唆する。 幼児における発話と身振りの統合的な理解 -身振りを指示する発話の効果- 三宅 英典 杉村 伸一郎 (広島大学大学院教育学研究科) E-mail: h.forte.rc[at]gmail.com 近年、メッセージ理解における発話と身振りの統合に焦点が当てられつつある。しかし、先行研究では、指さしのような 直示的身振りを扱ったものが多く、身振り自体が指示対象を表現する描写的身振りを扱ったものは少ない。本研究では、 発話と描写的身振りの統合的理解の発達過程と、統合的理解を促進する要因として「これくらい」という指示語発話の 効果を検討した。具体的には、3~5 歳児を対象に、発話と身振りによって選択課題を提示し、身振りには具体物を表 現する映像的身振りと、抽象的なものを表現する暗喩的身振りを設定した。その結果、どちらの身振りにおいても、指示 語発話あり群は、指示語発話なし群よりも正答率が高く、発話と身振りの統合能力が確認された。これと正答率の変 化などから、映像的身振りは 3 歳児から、暗喩的身振りは 4 歳児から発話と統合することが可能であることが示唆され た。 4
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