平成 28 年度予算の編成等に関する建議 (平成 27 年 11 月 24 日財政制度等審議会) 【国立大学法人運営費交付金関係抜粋】 Ⅱ 財政健全化に向けた取組と 28 年度予算編成 4.教育 (略) また、我が国の国立大学は、運営費交付金にその収入の半分以上を依存している状況にあ る。18 歳人口が減少し、先進国中最悪の状況にある我が国財政が益々厳しさを増す中で、 国立大学がそれぞれの機能強化の方向性等に応じた教育研究の高い質を維持しながら、自立 的かつ持続的な経営を続けていくためには、民間資金の導入などを進め、自らの収益で経営 していく力を強化していく必要があると考えられる。 (略) (2)国立大学法人運営費交付金 ① 18 歳人口の減少と国立大学の入学定員、教職員数 我が国の 18 歳人口は平成 4 年度の 205 万人をピークに急速な減少を続けており、平成 26 年度では 118 万人、34 年後の平成 60 年度では 74 万人になると予想されている。それ に伴い、大学と短大を合わせた進学率は平成 26 年度では 56.7%となっており、28 年前の 34.7%に比べ、今では 18 歳人口の2人に1人以上が大学・短大に進学する状況になってい る。国立大学の志願者についても、11 年前の 45 万人から平成 27 年度では 39 万人に減少 しているが、その一方で、国立大学の入学定員は平成 16 年度の法人化以降横ばいで推移し ているため、結果として、志願倍率は 4.7 倍から 4.0 倍と低下している。 今後も 18 歳人口が急速に減少していくと見込まれる中で、高等教育の質を保証する観点 から、教育研究組織の在り方について再考すべきである。 また、平成 19 年度以来、国立大学の学生数は 1.7 万人減少しているが、教職員数は約2 万人増加している現状を踏まえ、国立大学教職員の適正規模について検討していく必要があ るのではないか。 ② 国立大学の収入構造 国立大学の財務状況は、その収入の大部分を国からの支出に頼った構造となっている。平 成 25 年度決算ベースでは、附属病院収入を除いたベースで約 68%が運営費交付金や補助金 などの国からの支出となっており、自己収入については全体の 33%、その内訳は寄附金収 入が 4.3%、授業料収入が 14.7%、産学連携等研究収入が 10.8%となっている。国からの補 助金が概ね1割である私立大学と比べると、その違いは顕著なものとなっている。 国立大学の授業料については、ほとんどの大学が標準額(学部・大学院 53.6 万円、法科 大学院 80.4 万円)に固定されており、平成 19 年度から標準額の 120%までの引上げが可能 (引下げの下限は未設定)となっているにもかかわらず、標準額と異なる額を設定している 大学は僅か2大学(2専攻科)となっている。国立大学の自己収入構造を考える際、こうし た授業料の引上げについても一定の議論が必要であると考えるが、その際、家計負担に十分 配慮することが重要であり、全体の引上げと併せて、 ・ 意欲と能力がありながらも低所得で就学困難な学生に対する授業料免除の拡大(ある いは特に卓越した学生に対する授業料免除) ・ 奨学金制度の充実拡充や所得連動返済型の奨学金の導入 ・ 多様な教育サービスの提供とそれに応じた多様な授業料の設定 など単なる引上げのみを行うのではなく、学生の納得感を醸成しながら、必要な措置を併せ て検討していく必要がある。 ③ 安定的な国立大学法人運営のための提案 18 歳人口が急速に減少し、主要先進国中最悪の状況にある我が国財政も年々厳しさを増 していく中にあって、今後も国立大学が、それぞれの機能強化の方向性等に応じた教育研究 の高い質を確保しながら自立的かつ持続的な経営を続けていくためには、民間資金の導入な どを進め、今よりも国費(渡しきりの運営費交付金)に頼らずに自らの収益で経営する力を 強化していくことが必要とである。 また、「経済・財政再生計画」において、社会保障の「自然増」を除き「増加を前提とせ ず歳出改革に取り組む」としている中で、国立大学法人についても聖域とはせず、運営費交 付金の適正化を通じ、その改革を妨げない範囲で、できる限りの財政健全化への貢献を果た すべきである。 そうした観点から、運営費交付金の削減を通じた財政への貢献と、その再配分による改革 の加速に関する実効性ある施策を、自己収入の増加による経営の自立性向上の取組を阻害し ないよう配慮しつつ、第3期中期目標期間において実施していくことが必要なのではないか。
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