特異酵素による ヒト型糖タンパク質の糖鎖工学 大阪市立大学大学院 理学研究科生物地球系専攻 准教授 伊藤 和央 1 従来技術とその問題点 糖タンパク質のアスパラギン結合型糖鎖の糖鎖工 学のための糖鎖遊離に実用化されている酵素として、 エンドHやペプチドN-グリコシダーゼなどがあるが、 ヒト型高分岐コンプレックス型糖鎖を遊離できない 糖タンパク質を変性やペプチド状に分解しないと糖 鎖を遊離できない 等の問題があり、糖タンパク質の糖鎖工学的利用 範囲は限定的である。 2 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来の酵素では遊離できないヒト型の高分岐コン プレックス型糖鎖を、エンド-β-N-アセチルグルコサ ミニダーゼ(エンド)HSを用いることによってすべて 遊離するができる。 • 従来の酵素は糖タンパク質を変性やペプチド状に 分解しないと糖鎖を遊離できなったが、エンドHSを 利用して糖タンパク質の構造や機能を損なうことな く糖鎖を遊離することができる。 • エンドHSによって遊離したヒト型糖タンパク質糖鎖 を他の化合物に転移導入することに成功した。 • 遺伝子組換えエンドHSの生産と精製酵素の供給 システムを構築した。 3 エンド HSによる糖タンパク質からの アスパラギン結合型糖鎖の遊離 (α1-AG) 組換えエンドHSの結晶 0 反応、 反応、時間 0.5 2 20 α1-AG→ 脱糖鎖 ←α1-AG 4 糖タンパク質からの コンプレックス型糖鎖の転移導入 5 想定される用途 • バイオ医薬品開発における酵素的糖鎖改変 • 糖鎖の酵素分析による臨床診断法の開発 • 糖鎖の生体認識機能に基づく生理活性配糖 体・ドラッグデリバリーシステムの設計・開発 • エンドHSの特徴を生かすためには、上記の 用途に適用することで、薬剤開発や診断医療 におけるメリットが大きくなると考えられる。 • 上記以外に、細胞表面糖タンパク質糖鎖抗原 の改変の効果が得られることも期待される。 • このため、移植医療の分野に応用展開するこ とも可能と考えられる。 6 実用化に向けた課題 • エンドHSを用いて、血漿などの生体試料に存在する糖 タンパク質からの糖鎖遊離が可能で、遊離糖鎖の検出 まで開発がすんでいる。しかし、遊離遊離糖鎖の検出、 構造決定の点が未解決である。 • また、各種単糖、オリゴ糖、多価アルコール、配糖体へ のヒト型糖鎖の転移導入が可能となっている。 • 今後、タンパク質や各種薬剤への糖鎖導入について実 験データを取得し、糖タンパク質の糖鎖組換えや薬剤の ヒト型糖鎖修飾に適用していく場合の条件設定を行って いく。 • 実用化に向けて、糖鎖の転移導入効率を向上する技術 を確立する必要もある。 7 企業への期待 • 未解決の生体試料の糖タンパク質から遊離した糖 鎖の高感度検出、構造決定法については、質量分 析、糖鎖標識の技術により克服できると考えている。 • 糖鎖質量分析の技術を持つ企業との共同研究を希 望。 • また、機能性配糖体を開発中の企業や酵素分析に よる糖鎖診断法の分野への展開を考えている企業、 あるいは糖鎖組換えによる抗体医薬などバイオ医 薬品の機能向上を考えている企業は、本技術の導 入が有効と思われる。 8 本技術に関する知的財 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :糖タンパク質の糖鎖を遊離させ る活性を有する酵素およびその 製造方法、該酵素を用いる糖鎖 の遊離方法 • 出願番号 :特願2014-548618 • 出願人 :大阪市立大学 • 発明者 :伊藤和央 9 産学連携 産学連携の 連携の経歴 • 2012年-2013年 JST研究成果展開事業 研究成果 最適展開支援プログラムフィージビリティスタディ 【FS】ステージ 探索タイプ事業に採択 10 お問い合わせ先 お問い合わせ先 大阪市立大学 産学連携コーディネーター 渡邉 敏郎 TEL 06-6605- 3469 FAX 06-6605- 2058 e-mail watanabt@ado.osaka-cu.ac.jp 11
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