第3部 自然環境保全の基本理念と基本目標 自然環境保全の

第3部
第3部
自然環境保全の基本理念と基本目標
第3部 自然環境保全の基本理念と基本目標
第1節 本計画の基本理念
都市と自然との共生
∼都市のなかの自然・自然のなかの都市∼
産業都市として発展してきた北九州市ですが、多くの自然環境が今も残されていま
す。これらの自然環境を守っていくことは重要なことですが、産業の発展や私たちの
豊かな生活を維持することも、また、必要なことです。
そのため、私たちが目指す本市の将来像としては、
「都市の中に自然があり、自然
の中に都市がある」というように、都市の機能と自然の機能が相反することなく相方
の中に都市がある」
ともに発揮されている、そのような調和のとれたまちが求められます。
それらを実現するためには、本市の豊かな自然環境や自然の大切さを市民一人ひと
りが認識し、より一層ふれあいを深めることで、生活の活力を支えるための都市環境
づくりが必要になってきます。
このような考え方を示したのが次の図です。
北九州市域
公害の克服
自然的な
空
間
調和
非自然的な
空
間
市民の幸福
健康で安全な生活
持続可能な社会の構築
生物の生息
・生育
共生
人間の生活
自然と賢くつきあい、守り、育てる
安定した経済活動
3- 1
歴史︵伝統・慣習︶
都 市 と 自 然 の 共 生
都市のなかの自然・自然のなかの都市
第2節 本計画の基本目標
自然環境面から見た北九州市の環境像(基本理念)を実現するための基本目標とし
て次の5点を設定します。
基本目標1
基本目標 2
多様な自然
環境の保全
市民が育む
自然
基本目標 3
基本目標 4
身近に自然
を感じる都
市づくり
市民と自然
とのふれあ
いの推進
基本目標 5
自然・生物に
関する情報の
整備
基本理念
都市と自然との共生
「都市のなかの自然・
自然のなかの都市」
基本目標1「多様な自然環境の保全」
産業都市のイメージが強い北九州市ですが、実は、多様な生物が生息するなど大変
豊かな自然環境に恵まれた都市でもあります。
本市の地域特性によれば、三方を異なる性質の海(響灘、関門海峡、周防灘)に囲
まれ、臨海地域(北部)から内陸部(南部)にかけて、順に都市地域、都市・農村近
接地域、農村地域、中山間地域、山間地域というように徐々に自然度が高まっていく
特徴を持っています。また、地理的に九州の最北端に位置していることから、九州と
本州との渡り鳥の飛行ルート上にもなっており、多くの野鳥も確認することができま
す。
このような多様な自然環境を保全していくとともに、河川や海域における自然環境
の再生や臨海埋立地等における新たな自然環境の創出など自然が既に失われた地域に
おいて新たに自然を創造することが今の私たちには求められています。
自然の回復を成しうるものは、自然そのものがもつ回復力にあります。
このため、自然環境の再生に取り組む場合、人間は、自然の回復のきっかけづくり
に取り組むことが重要で、また、回復のプロセスの中で人が手を加える場合、あくま
で補助的なものであるということを認識したうえで、時間をかけて慎重に取り組む必
要があると考えます。
また、取り組みを開始した場合、これは長い年月を要する自然再生の始まりに過ぎ
ず、この意味では、自然再生には、従来の「竣工=事業(再生)
」の完了という概念
が当てはまらず、取り組み後のモニタリングやその結果に基づくフィードバックが重
要と考えます。
3- 2
基本目標2「市民が育む自然」
本市の自然環境を守っていくとともに、作り、育てていくためには、市民の理解と
協力が欠かせません。そのためには、できる限り多くの市民に自然とのつきあい方、
自然に対する正確な知識などを学んでもらい、それらを踏まえて、より良い環境づく
りへの主体的な参加や日常生活の中で行うことのできる環境への配慮など自然保護に
積極的に関わって欲しいと考えています。
さらに、次の世代を担う子供たちを中心に環境教育を推進していくことも大切な施
策の一つです。
基本目標3「身近に自然を感じる都市づくり」
都市の発展や豊かな生活を保っていくためには、開発行為や農林水産活動の実施が
必要です。しかし、これらの行為の実施が自然環境に影響を及ぼすようでは、自然と
調和がとれた都市づくりを目指すことにはなりません。
これからは、エコロードや多自然型河川、屋上・壁面緑化など、あらゆる分野で環
境に配慮した公共事業の実施が求められています。また、安全・安心を求める市民に
こたえる農林水産業の取り組みが必要であり、その結果、多くの自然・風景が維持さ
れます。
自然は私たち人間に多くの恵みをもたらすものです。
そして、人間はその恵みを受けるため、自然と賢くつきあうことが極めて大切です。
このことを基本に、自然の恵みとうるおいのある都市空間づくりを目指します。
基本目標4「市民と自然とのふれあいの推進」
市民と自然との豊かなふれあいの確保(活動や場の設定)を図るためには、身近な
日常生活圏から非日常的な余暇活動圏に至るまで、自然とのふれあいのための場やそ
の利用施設が適切に配置され、それらが有効に活用されるようにすることが重要です。
そのため、自然とのふれあいの確保に当たっては、その対象となる自然の特性を損な
うことなく維持させることが重要であり、自然環境の保全に十分配慮して推進する必
要があります。
また、市民が自然と正しく楽しくふれあうためのルールづくりも必要です。
基本目標5「自然・生物に関する情報の整備」
本市の自然環境を守っていくためには、本市の自然環境の状態を常に把握しておく
ことが必要です。そのためには、身近に観察できる生き物や生息数が非常に少ない希
少種、市外から侵入してくる外来種など多くの自然環境情報を収集し、整理し、蓄積
しておくことが必要です。そして、それらの情報から少しでも早く自然環境の微妙な
変化を確認することができれば、保全などの対策も素早くとれることとなります。自
然環境情報を収集するためには、行政の力だけでは限界があります。市民やNPO、
専門家など多くの方々の協力が欠かせません。
3- 3
第3節 基本的施策の体系
本計画における将来像(基本理念)
、基本目標を実現するための基本的な施策(大
項目)の体系は 図3-1 のとおりです。基本的な施策(大項目)は、更に、各部局
等で実施される具体的な施策(中項目)に分類しています。
3- 4
将来像(基本理念)
基 本 目 標(章)
基本施策(大項目)(節)
北九州空港移転跡地のまちづくり
と曽根干潟の環境保全
多様な自然環境
の保全
北九州空港移転跡地利用まちづくり構想
曽根干潟の保全と利用
希少種の保全と環境教育
希少動植物の保護・保全対策の検討
特定種に対する保護・保全対策
里地里山の保全と持続的な利用
里山の新しいあり方の検討
移入種の対策と適正な管理
自然環境学習の場としての活用
生態系攪乱状況の把握
法に基づく対策の実施
森林の保全
多様な生物の宝庫である
山地・河川・海の環境保全
市民・NPOによる自然環境の保全
自然環境に精通した人材の育成
市民が育む自然
環境教育・学習の促進、普及啓発
響灘・鳥がさえずる緑の回廊による
響灘埋立地の緑の創成
洞海湾を市民の手に
身近に自然を感じる
都市づくり
基 本 施 策 (中 項 目)
事業の実施に伴う環境配慮
平尾台の保全と利用
農地の保全
河川環境の保全
自然海岸等の保全
モニタリングサイト1000の選定と保全
美化活動の一環としての河川、海辺、里山の保全
自然環境サポーター育成事業
ほたるのふるさとづくり
紫川水先案内人育成事業
環境教育事業の推進
学校教育における自然環境に視点を当てた教育の推進
少年自然の家等における自然教育の推進
農業体験を通じた食農教育・環境教育の推進
顕彰制度の拡充
洞海湾の環境創造の推進
市民参加による環境修復社会実験の実施
環境影響評価制度に基づく環境配慮
(仮称)開発事業に係る環境配慮指針の策定
(仮称)自然環境アドバイザー制度による支援
自然公園の適正利用
採石場、土取場跡地の緑化・修景
地域の自然環境等に配慮した道路事業の推進
自然と調和した都市基盤整備の促進
水循環再生プランの策定
都市緑化の推進
清流の復活と豊かな水辺環境の創造
都市と自然との共生
自然と調和し自然を維持する農林水産業の促進
~「都市のなかの自然・
自然のなかの都市」~
農業・農村の活性化と食の安全性の確保
森林・林業の活性化
市民生活の健康を支え、市民とふれあう、
活き生き水産業の振興
小倉南区発「日本のふるさと」推進プロジェクト
構想による里地里山の持続的な利用
市民と自然とのふれあいの場の整備
市民と自然との
ふれあいの推進
農林水産業とのふれあいの促進
「海辺のスタープラン2010」に基づく水際線の整備
貯水池における水辺とのふれあいの増進
人と野鳥が共存する環境づくり
ビオトープなどの自然共生型地域づくり
農とのふれあいの場つくり
森林レクリエーションの場の整備
市民と交流する魅力ある水産業の創造
水環境館を活用した市民啓発
夏のスターウォッチング
自然環境に関する市民啓発
音の探検隊
その他の市民啓発事業
エコツーリズム、グリーンツーリズムの促進
自然環境調査の実施とデータベースの構築
自然・生物に関する
情報の整備
市民参加による自然環境情報の収集
自然環境調査の実施
実態把握の推進
GISを用いた自然情報データベースのと維持管理
自然環境調査結果のデータベースへの集約
市民参加による自然環境調査
特異な地形・地質、水環境の実態調査
調査を通じた専門家の育成
北九州市の自然を理解してもらうための
市民への自然環境情報の提供
図3-1 北九州市自然環境保全基本計画 目標・施策の体系
3- 5