2015年6月 NPPV実践編 - 医療法人 徳洲会 大垣徳洲会病院

発行日 2015.6.20
みなさんこんにちは。大垣徳洲会病院 臨床工学科が発行する
医療情報誌
です。
装着の手順
①開始前に必ず患者に説明を行います。NPPVでは挿管患者と違い意識のある患者様に装着することになりま
す。そのためマスク換気がどういうものであって、装着すると呼吸が楽になること説明し、可能な限り協力して
もらうようにします。
②患者に装着する前に可能であれば圧の設定を低い値に設定する。患者に装着してから作動させるのではな
く、作動させてから患者に装着します。
③患者に合ったマスクを選択し、顔に密着させます。 顔にマスクがソフトに密着するように補助します。ただし、
無理やり押し付けたり、すぐにバンドで固定をせず、可能であれば患者本人にマスクを持ってもらいます。
④患者に説明しながら、設定を変更していきます。患者の呼吸状態を観察し、SPO2や呼吸回数などをモニタリ
ングし、評価を行います。
⑤設定を決定後、バンドで固定します。この時、バンドをきつく締めすぎず、ある程度のリークは許容してフィッ
ティングします。また、胃管などが入っている場合、リークを少なくする為にチューブパッドなどの工夫が必要に
なります。
⑥患者の必要に応じた、アラームの設定を行う。
⑦患者の状態を確認できるように30分程度はそばで観察を行い、呼吸状態や酸素化の評価を行います。SPO2
だけではなく、動脈血液ガスを測定します。
Medical partners
NPPVにおける注意点
「NPPVを違和感なく装着できるテクニック」の一例
IPAP(inspiratory positive airway pressure)
4~8㎝H2O
EPAP(expiratory positive airway pressure)
4㎝H2O に設定する。
IPAP-EPAP=PSとなるため、最初はPS:0~4㎝H
2Oから開始する。
といった方法があります。最初からPSを多くせず、で
きるだけ低い値から導入した方が、受け入れやすい
ことがあります。
・開始から1~2時間後の血液ガス所見で改
善が見られないとき、開始から4~6時間
で治療目的に達しないときは、気管挿管
が必要となります。気管挿管を遅らせない
よう注意が必要です。
・胃の膨張を避けるために、20㎝H2O以上
の吸気圧は避ける。
・NPPVを施行するときの鎮静は慎重に行
い、十分なモニタリングを行う。
・経口摂取は、患者の状態が安定し、気管
挿管の可能性がなくなるまでは制限した
方が良い。
NPPV施行中の観察項目
対処
NPPV使用時には大きく分けて4つの観察項目があります。
以下にそれぞれの項目と観察内容を記載します。
意識
・意識レベル(GCS) 鎮静スケール(Ramsay・RASS)
せん妄評価(CAM-ICU) 鎮痛の評価(BPS)
Airway(気道)
・気道分泌物の量・喀痰状況
Breathing(呼吸)
・胸郭の動き ・呼吸音 ・呼吸回数、呼吸パターン
・補助呼吸筋の動き ・NPPVと患者の同調性 ・呼吸困難感 ・血液ガス
Circulation(循環)・その他
・循環動態(心電図、心拍数、血圧、SpO2)
・換気動態(1回換気量、分時換気量、リーク量、気道内圧)
・グラフィックモニタ・合併症の有無など
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問題点 対処
NPPVの設定での問題点と対処方法
NPPVを使用中に患者様との同期や機械設定で変更したい点や問題が出てくると思います。一例ですが
下記に表として纏めておきます。
問題点
対処
PaO2を
PaO2を上げたい
PaCO2を
PaCO2を下げたい
EPAPを上げる。
FiO2を上げる。
IPAPあるいはPSを上げる。
リークで同期
リークで同期が
同期が取れない
マスクフィッティング゙の確認
一回換気量が
一回換気量が少ない
IPAPあるいはPSを上げる。
風が強い
IPAPあるいはPSを下げる。
ライズタイム設定を遅くする。
NPPVから気管挿管への移行
マスク換気は換気量が保障されていないことや患者様との同調が必要なこともあり、状態悪
化が懸念される場合は早急に挿管へ移行することが必要となります。具体的には
NPPV開始1-2時間後、
呼吸状態や全身状態の再評価にて(呼吸数、pH、酸素化、P/F比、PaCO2など)改善傾向が
ない場合
・下記の項目があった場合などになります。
意識に関連する項目
・意識障害または興奮状態
・患者の要望
・病態悪化
呼吸に関連する項目
・血液ガスが改善しない (PaO2<60mmHg、 PaCO2の上昇)
・呼吸数の上昇(>35回/分)
問い合わせ先
循環に関連する項目
・血圧低下(<70-90mmHg)
2015年6月号
・脈拍上昇
臨床工学科 内線 2038
その他・病態に関連する項目
・気胸、痰の貯留などの症状や 合併症発生時
制作・編集担当 中野 路子
・同調不良
坂口 耕一郎