下部消化管穿孔

救急カンファレンス
2015年7月10日
外科 財津瑛子
なぜ鑑別が重要か?
腹痛について
• 救急外来を受診する患者の5-10%は急に発生した
腹痛を主訴に来院する。
• Yamamoto W et al. J Epidemio 1997; 7: 27-32
• 致死的な患者は0.5%未満、重篤・手術適応は20%。
•
田中 拓ら、 日救医会誌 2009; 20: 60-66
頻度が高い症状であり、軽度なものから重篤なものまで
幅広い臨床経過をたどる。
蹄の音を聞いてシマウマと思うな
急性腹症の頻度
男性(n=5268)
女性(n=6941)
1位
腸管感染症(11.5%)
腸管感染症(11.5%)
2位
急性虫垂炎(9.2%)
腸閉塞(8.0%)
3位
腸閉塞(9.1%)
子宮・卵巣腫瘍(7.9%)
4位
腹膜炎(6.4%)
急性虫垂炎(7.2%)
5位
胆石症(6.2%)
子宮・卵巣の炎症(6.6%)
Murata A. et al.Tohoku J ExpMed 2014; 233: 9-15より改変し引用
女性の腹痛→婦人科疾患の鑑別が重要
急性腹症の年代別頻度(女性)
腸管感染症
腸閉塞
20歳未満
25%
4.9%
20~39歳
13.7%
4.6%
40~59歳
10.2%
8.5%
60~79歳
6.8%
11.3%
80歳以上
7.1%
13%
Murata A. et al.Tohoku J ExpMed 2014; 233: 9-15より改変し引用
前医からの情報
• 症例:59歳 女性
• 主訴:腹痛
• 現病歴:
24日より腹痛、発熱、嘔気があり、25日に近医
内科を受診した。クリンダマイシン点滴を施行
され、グリマック、レバミピド、ブスコパン、
クラリスロマイシンを処方された。26日に再診の
際、嘔気は改善していた下腹部痛が持続して
おり、WBCの上昇をみとめている。
系統立った診察
SAMPLE
S:signs and symptoms
A: allergies
M:medications
P: past medical history
L: last meal
病歴
第一印象
E: events leading up to the illness
検査所見
OPQRST
O: onset
P: palliative or provocative factor
Q: quality
R: region and radiation
バイタル
S: associated symptoms
T: time course
血液検査、EKG、画像検査
A:airway
B:breath
C:circulation
D: dysfunction of CNS
今回の症例
下腹部に限局はした
反跳痛(+) 圧痛(+)
WBC 19000、CRP 26
病歴
検査所見
第一印象
レントゲン:フリーエア(+)
バイタル
A:airway
B:breath
C:circulation HR 105回/分
D: dysfunction of CNS
病院嫌い
短期間で再受診
下部消化管穿孔
下部消化管穿孔は上部消化管穿孔より死亡率が高く、
特に高齢者や発症から時間が経過している場合には
予後不良である。
・下部消化管は菌が多い。
・細菌性腹膜炎
・腫瘍性/宿便性穿孔/
憩室穿孔/医原性/異物
死亡率
8.8-24.7%
・上部消化管は菌が少ない。
・化学的な炎症性腹膜炎
・潰瘍/腫瘍
死亡率
5.5%
Lanas A . et al. AM J Gastroenterol 2009; 104: 1633-1641
秋吉高志ら 日臨外会誌 2005; 66: 2645-50