胎児期に診断された先天性肺気道奇形 (CPAM;CONGENITAL PULMONARY AIRWAY MALFORMATION)の一例 研修医 T.S. 指導医 I.Y. 現病歴 母親は30歳台、 2経妊3経産女性。 胎児超音波検査で右肺に先天性肺気道奇形 (CPAM;Congenital pulmonary airway malformation)を 指摘されていた。 胎児は37週0日に帝王切開で出生し、CPAM加療 目的でNICUに入院となった。 出生時身体所見(在胎37週0日) Apgar score 6/8 体重 2793g、身長 48.5cm、頭位 32.5cm、胸囲 30.5cm BT 37.3℃、BP 65/30mmHg、HR 130/min、RR 50/min SpO2 97%(口元O2 1L/min投与下) 活気:あり、皮膚色:紅色、筋緊張:正常、大泉門:平坦 胸部:air entry良好、陥没呼吸なし、心雑音なし 腹部:平坦 外性器:正常男性、外表奇形:なし 入院時検査所見 (血算) WB C RB C Hb Ht Plt 16500 /µl 5.08 /µl 16.3 g/dl 53.5 % 25.5万 /µl (生化学) AST 25 U/L ALT 5 U/L LDH 489 U/L ALP 332 U/L T.Bil 2.5 mg/dl D.Bil 0.2 mg/dl CK 321 U/L TP 5.0 g/dl Alb 3.3 g/dl UN 11 mg/dl Cr 0.71 mg/dl Na 138 mmol/l K 3.9 mmol/l Cl 106 mmol/l Ca 9.0 mg/dl Pi 4.7 mg/dl CR 0.04 mg/dl P IgG 844 mg/dl IgA 3 mg/dl IgM 4 mg/dl FBS 30 mg/dl (動脈血ガス) pH 7.321 pCO 44.9 mmHg 2 pO2 84.7 mmHg HCO 22.7 mEq/l 3 BE -2 mEq/l 胎児MRI(22週0日) T2強調画像 • 右胸腔内に高信号を示す嚢胞(13mm大以下)を 多数認める。 胸部単純X線写真(日齢0) • 右上肺野から下肺野にかけて小さな泡沫状陰 影及び境界不明瞭な濃度上昇の集簇を認める。 胸部CT(日齢0) • 右肺下葉に嚢胞(13mm大以下)の集簇を認める。 • 一部嚢胞内に液体貯留を認める。 胸部単純X線写真 (日齢0) (日齢5) (日齢7) 胸部CT(日齢9) • 右肺下葉に嚢胞(15mm大以下)の集簇を認める。 • 右下葉縦隔側にconsolidationの出現を認める。 右肺下葉切除術 病理 • 肉眼的所見:約15mm大までの大小の嚢胞の集簇がみられる。 • 組織学的所見:嚢胞は線毛を有する偽重層円柱状∼立方円柱 状上皮に被覆されている。部分的に嚢胞周囲を膠原繊維∼平 滑筋が取り囲んでいる。嚢胞間には肺胞組織が介在し、とこ ろどころに肺動脈の伴走を欠いた細気管支様構造がみられる。 先天性肺気道奇形(CPAM;CONGENITAL PULMONARY AIRWAY MALFORMATION) 概念:胎児期に終末細気管支が増殖し、さまざまの大きさの 嚢胞を形成する先天性の嚢胞性肺疾患。 • 原因:不明 • 発生頻度:15000∼20000出生に1人程度 • 症状:出生後に頻呼吸、陥没呼吸、チアノーゼ • 合併奇形:腎無形成、心奇形、肺分画症など Ⅱ型では50%程度に奇形を合併、Ⅰ型では稀 • 治療:呼吸器症状あり 外科的切除 無症状 1歳前後までに手術or経過観察 先天性横隔膜ヘルニア・先天性嚢胞性腺腫様奇形 チャイルドヘルス vol13 No.2 予後不良: 合併奇形(腎無形成)をもつ例 胎児水腫発症例 胎児水腫発症予測マーカー :CVRC (CAMvoulmeoar=i)tCCAMの容量c(m3頭 /) 囲c(m ) >1.6 予後不良群 Peranteau WH et al:Growth and fetal survival Fetal Diagn Ther 2007 以前は嚢胞の肉眼的大きさでⅠ∼Ⅲ型に分類されていた。 1994年にstockerらにより0∼4型の5つに分けた新分類が 提唱され、名称がCCAM(先天性嚢胞性腺腫様奇形) CPAMと変更された。 画像による新生児症例カンファランス Neonatal care 2009 vol.22 no.11 CPAM分類 0型 1型 2型 3型 4型 頻度(%) 1-3 >65 20-25 8 2-4 嚢胞の大きさ (最大径cm) 0.5 10.0 2.5 1.5 7.0 表層上皮 偽重層性 線毛円柱 杯細胞 偽重層性 線毛円柱 線毛 立方/円柱 線毛立方 平 肺胞細胞 粘液細胞 あり (100%) あり (33%) なし なし なし 軟骨 あり (100%) あり (5-10%) なし なし 稀 骨格筋 なし なし あり (5%) なし なし 壁の厚さ (µm) 100-500 100-300 50-100 0-50 1型 25-100 診断:CPAM Stocker Stocker in Hammar’s Plumonary Pathorogy 胎児期の嚢胞性肺病変の鑑別 • CPAM • 肺分画症 • 肺内気管支原性嚢胞 • 先天性肺葉性肺気腫 • 気管支閉鎖 • 先天性横隔膜ヘルニア 画像による新生児症例カンファランス Neonatal care 2009 vol.22 no.11 結語 • 胎児期に診断されたCPAMの一例を経験した。 • 胎児期の嚢胞性肺病変を見たとき、CPAMや その他の鑑別疾患を考慮する必要がある。
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