第二回「思いっきり涙を流しましょう」 ― 看取りの先へ ベトレヘムの園病院 院長 青木信彦 ベトレヘムの園病院には重度の疾患の方が入院しています。カトリ ックの病院ですので基本的な診療とともに、患者さんを「見守る・ 支える・看取る」ことの一つひとつを大切にしています。この1年 間に33名の方が天国に召されました。 昨年11月末、秋津教会マリアホールで 帰天された方々のご家族をお招きして、 「追悼の祈りの集い」が催されました。 ご遺族にとって亡くなった病院に足を運 ぶことは決して容易なことではないので すが、半数以上のご家族が参加されました。 患者さんのお世話をされた「きずなの会」の方々にも出席いただき ました。「追悼の祈りの集い」は神父様の温かい言葉に始まり、最 後にはご家族の一人ひとりにお話をしていただきました。 大切な身内を失った今の気持ちを率直に述べられました。入院に 1 至るまでに体験された出来事や生前に語っていたエピソード、さら には「思い出すのもつらい」 、「胸が張り 裂ける思い」 、などなど。どなたも涙を流 さずに語ることはできませんでした。お 世話をさせていただいた病院職員も目を 真っ赤にしていました。入院中とはまた 少し違って、真の気持ちを聞くことがで きたように思われました。世間では 「いつまでもメソメソしていたら、仏さんが浮かばれませんよ」な どということもありますが、涙の泉が枯れ果てるまで泣いてみるこ とも良いのではないでしょうか。 私の場合も、すでに10数年も経ちますが、亡くなった父母のこ とを思い出すと止めどなく涙があふれます。泣く事の少ない時代で す。言い換えれば泣くほどの感動が少ないのかもしれません。人生 で、親しい身内との別れほど悲しいことはありません。そんな数少 ない貴重な場面では沢山の涙を流してはいかがでしょうか。涙をこ らえる必要はないのです。 ひとの痛みを感じること、ひとの辛さに共鳴することは人間が人 2 間だからなのです。 「追悼の祈りの集い」を終えて、あらためて感じ たことは、例外なく訪れる人生の終焉に、去り行く人と共に時を過 ごして、「見守る・支える・看取る」ことの大切さでした。 青木信彦プロフィール: 1944年、東京生まれ、栃木県足利市育ち 1970年 東北大学医学部 卒業 1972年 都立府中病院 脳神経外科 2005年 都立府中病院 院長 2010年 都立多摩総合医療センター 2012年 多摩北部医療センター 医員 院長 院長 (都立多摩総合医療センター名誉院長) 2014年 ベトレヘムの園病院 院長 *ベトレヘムの園病院ホームページにも紹介あります。 3
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