「家で看取る」3例目

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家で看取る
三例目
オガワ スズ ︵仮名︶さん
未治療骨髄腫。
息子さんと娘さんと同居。
歳
お子さん二人で在宅介護をすることになった。
94
家で 看取る[三例目]……オガワ スズさん/94歳
退院前日、退院時共同指導
病院側からオガワさんの病状について、全身リンパ節腫大、血小板減少、出血性胃潰
瘍、胸水貯留、心不全、過換気、不明熱、中毒疹等、直腸癌術後人工肛門増設状態との
説明を受けた。本日、退院時共同指導となったのは、オガワさんのかねてからの﹁自宅
で死にたい﹂という希望を息子さん中心にお子さん方が急遽決断し、昨日実行に移した
ためであった。病院側としては治療が中途半端な状態での退院はお勧めしなかったが、
家族の強い希望なので﹁承諾した﹂と言った。
オガワさんは入院後、一か月前から徐々に全身状態が悪化していた。ここ一週間は何
も口にできず、また不穏状態なので家族が付きそっている。点滴をし、その中に鎮静薬
を混注して対応している。最近は無呼吸と過呼吸を繰り返している。それを見た家族が
不安を煽る対応をし、さらに過呼吸が悪化した。病棟看護師を呼び、看護師が体をさす
りながら深呼吸を促すと落ち着くということを繰り返していたという。酸素投与中。点
滴は一日二〇〇〇ミリリットル。すでに全身浮腫が進展し、点滴確保も困難な状況だ。
そこで中心静脈カテーテル挿入を勧めたが家族は拒否した。
﹁せめて輸血だけでもして全身状態を楽にしてあげましょう﹂との病院側の進言には家
族も応じ、昨日からの輸血を実施し、本日に至っているとのことであった。
退院は明日の予定。朝のうちにエアマットなどの介護サービス物品と酸素濃縮器を搬
入する。昼前に退院し、民間救急車で自宅へ移送。看護師はオガワさんの到着前にオガ
ワさん宅にて待機し、状態確認後、退出の予定。その後往診医による訪問診療の予定。
ここで息子さんから、
﹁自宅療養中に医療者がいない時間があっては困る﹂という要望が出た。
すべてが初めてのことで不 安が多いと思われること。その不 安については電話でも
二十四時間応じられること、必要であれば訪問にも対応することなどをゆっくりと説明
した。それでも息子さんの不安は強かった。
退院日・訪問初日
訪問すると息子さんがタクシーでオガワさんを 迎えに行 くところだった。自 宅の様
家で 看取る[三例目]……オガワ スズさん/94歳
子はすでに介護用ベッドにエアマットと酸素濃縮器の設置が完了されており問題なかっ
た。臨時の酸素ボンベもあった。点滴架台は準備されておらず、とりあえず鴨居にS字
フックを引っかけることで対応することにした。
昼前にオガワさんが到着した。眠っている様子である。息子さん曰く、
﹁移動中、ずっと寝ていてくれ助かりました﹂
患者はしばらく覚醒しなかったが、覚醒するとすぐに過呼吸がはじまった。病棟から
の情報にしたがい、体をさすり、深呼吸を促すことで確かに治まった。
息子さんのたっての希望で可能な限り滞在し、一度退室した。息子さんからは、﹁あ
りがとうございます﹂の言葉があっただけで、医療者がいなくなることを危惧する様子
はなかった。
医師同席
往診医師とのカンファレンスのため戻ると、
﹁おかげさまで落ち着いています﹂と息子さんに言われた。
点滴は減量された。点滴滴下の調整法、ボトルの交換方法をご家族に指導した。人工
肛門からの座薬の挿入方法も指導しつつ、苦悶の表情が見られたため、頓用座剤を挿入
する。医師より病状および今後の在宅療養についての説明が行われた。特に現在の呼吸
について、亡くなる前にみられる呼吸である可能性がある旨が説明された。また、不安
が強いなら、保険外の二十四時間看護サービスも使えるという説明もした。
訪問開始から二日目
昨日は往診後も何度も過呼吸をおこした。
﹁退院で色々な人が出入りして、落ち着かなかったようだ﹂と息子さんは話していた。
座薬を使っても三時間くらいでまた過呼吸になっていた。
﹁足をさすったりすると落ち着くこともあった﹂という。﹁今日も朝からずっと過呼吸
になっているが、どうしたらいいかわから ず 、看 護 師 さんが来るまで様 子みていまし
家で 看取る[三例目]……オガワ スズさん/94歳
た﹂
患者に苦痛表情あり。頓用の座薬を人工肛門から挿入する。苦痛を少しでも取り除い
てあげるよう、夜は特に眠れるように、座薬の使用方法につき再度説明する。
全身に浮腫を認める。家族は、
﹁昨日よりも足の浮腫がよくなっている﹂と話していた。
全身清拭、陰部洗浄、口腔ケア実施。点滴滴下良好、刺入部トラブルなし。今日は初
めての点滴ボトルの交換なのでご家族と一緒に交換した。
在宅介護にあたり、息子さんは、
﹁ 昨日までは不 安が多 く、気 持 ちにも 余 裕がなく、色々と聞いても頭に入っていかな
かった﹂と言った。
今日ひとつ一つ説明し、輸液についても神経質になりすぎないように話す。﹁看取り
のパンフレット﹂を手渡し、今後起こるであろうことのおおまかなイメージをつけても
らうと、少し安 心した様 子であった。吸 引については、吐 血などで窒 息になる危 険が
あっても使用しない、と希望されなかった。吐血時は顔を横に向け、口の中のものを掻
き出すよう説明した。
保険外の看護サービスについてはまだ連絡していない。
﹁このまま家族だけでも大丈夫かな﹂と思っているとのことであった。
訪問開始から三日目・緊急訪問
息子さんから、
﹁朝から呼吸が荒く、いま無呼吸が出てきた﹂という、緊急訪問を希望する電話が入っ
た。
看護師到着時、オガワさんは呼吸停止していた。
﹁午前中に親戚が来ていて、みんなが手を握ったりしていた。目を開けて涙を流し、そ
れが最期になりました。最期はすーっと息をしなくなった。苦しまなくてよかった﹂と
息子さんは言った。
往診医師により、死亡診断となる。