圧縮センシングの復元ダイナミックス解析 北大院情報科学 井上 純一 Reconstruction Dynamics of Compressed Sensing Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University Jun-ichi Inoue 線形パーセプトロン (LP) と元信号のスパース率が ρ である圧縮センシング (CS) との構造的類 似性に着目し, 対数尤度と Lr -ノルムから構成されるエネルギー関数 (両者比を β) を持つ系に関 し, 学習係数を η と選んだ勾配学習に基づく「絶対零度ダイナミックス」を考える. そこで, CS の MAP 推定の処理過程を, 有限個のマクロ変数 (信号ノルム: Q, 重なり: R) の離散時間発展方程 式を介して議論する. 具体的には, サンプリング数 αN を「例題数」, 信号ベクトルを「シナプス 加重」とみなすことで, CS の復元過程は「例からの学習」とみなせる. 講演では特に r = 2 の場 合を扱うが, 勾配学習として陽に離散時間ダイナミックスを与えると, その定常解は疑似逆行列で 表される. これは LP の ‘AdaLine 学習’ に対応する結果である. また, 勾配学習法の性能評価とし て, 特定の測定行列, 元信号に依らない復元過程の「平均的振る舞い」を平均自乗誤差の発展式で 記述する. このとき, 測定行列要素からなる相関行列の固有値分布 φ(λ) が必要となるが, 最も簡 単な測定行列アンサンブルに対し, φ(λ), および, 平均自乗誤差 δt の時間発展は N → ∞ 極限で ∫ λmax δt = ρ(1 − α) + ρα dλ φ(λ){1 − η(λ + β)}2(t+1) λmin √ √ √ (λmax − λ)(λ − λmin ) φ(λ) = , λmin = (1 − α)2 , λmax = (1 + α)2 2παλ で与えられる. 講演では, ここから得られる図 1 に示すような知見のいくつかを紹介したい. 0.6 0.6 0.5 0.3 0.2 0.1 0 Q 0.3 α=0.2 0.4 δt 0.4 α=0.8 α=0.5 α=0.8 0.5 0 20 40 60 80 100 t 0.2 0.1 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 R 0.3 0.35 0.4 0.45 図 1 φ(λ) が |1 − η(λ + β)| > 1 を有限頻度で満たす √ 7 λ を含むと, マクロ変数の軌道 Q-R は不安定化 し, 例えば β = η = 0.5 のとき, 臨界点 αdiv = ( − 1)2 ∼ 0.758 で平均自乗誤差 δt は発散する. 2
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