K+

カエル摘出心臓の実験
病態生理学分野担当
学生実習(心臓の収縮と活動電位)
心房
心室
① 実習1日目:心筋収縮の実験
スターリング Starling の心臓法則
筋細胞が収縮前にどれだけ引き伸ばされたか、
によって一回の拍出量が決まる!
昨日の八木式灌流装置の場合・・・
静脈血貯留層の高さを上げる
心室へのリンガー液の流入量が増加
(心室容積の増加)
一回拍出量の増加
心筋の収縮特性を変えることによって、
神経などの影響なしに心臓自体の活動を調節する!
アセチルコリンによる心拍の制御
レーヴィの実験
化学物質によって心臓の拍動が制御される!
神経化学物質を介したシナプス伝達による心臓の制御の発見
② 実習2日目:心筋活動電位に関する実験
細胞内外のイオン組成
Na+/K+ ポンプの働き:3Na+を排出し、2K+を取り込む
細胞外
静止膜電位が発生する仕組み
~Kイオンの平衡電位~
イオンチャネルのモデル図
膜を隔ててイオン濃度に
差があっても、イオンは
移動しない。
※膜自体はイオンを通さない
K+ イオンだけを通す小孔
が膜にあると、 K+ イオンだ
けが、濃度差により、移動
を開始する。
K+漏洩チャネルが常に開口し
ているため、
静止膜電位はKイオンの平衡
電位に近い値を取る。
⇒開口しているK+チャネルが
多いほど、静止膜電位はKイ
オンの平衡電位に近づく。
K+イオンの移動により、
膜に電位が発生して、
K+イオンの見かけの移動が
なくなり、平衡状態になる
→→K+ イオンの平衡電位
静止膜電位とネルンストの式
課題
ネルンストの式
[K+]i
EK=‐61 log +
[K ]o
※37℃
K+のとき
それぞれのイオンの平衡電位を決定する式。
平衡電位は他のイオンに関わらず、膜内外
のイオン濃度によって決まる。
K+ イオンの平衡電位
細胞内液: [K+]= 140 mM
リンガー液:[K+]= 2 mM
高K+溶液: [K+]= 40 mM
の時、リンガー液と高K+溶液それぞれに
おけるカリウムの平衡電位は?
またその時、脱分極しているか?
心室筋の活動電位
脱分極
分極・再分極
各イオンが濃度勾配に従い流入・流出することで
活動電位が発生する!
⇒正電荷が外へ流れるか?内へ流れるか?
心室筋の活動電位のイオン機構
イオンの流れ概要
細胞外
0相
Na+
細胞内
Naチャネルは脱分極状態で不活性化される
K+
1相
2相
(
K+
)
3相
K+
4相
K+
Ca2+
③ 刺激伝導系と心筋の活動電位
2日目の内容
刺激伝達系(=活動電位の流れ)
カエルの
心室筋で
実際に
測定する
ヒトの場合:
洞房結節(ペースメーカー)
心房・房室結節
ヒス束・プルキンエ線維
心室
心電図のQ波とT波の間隔が
心室筋の活動電位の間隔と等しい!
ペースメーカーの活動電位と副交感神経の影響
例外:
ペースメーカー電位は、 主に非選択的Ca2+チャネルの開口により立ち上がる。
洞房結節のペースメーカー電位
閾値を超えると、開口するCa2+チャネルが増加する。
=急激な立ち上がり
1日目の内容
副交感神経刺激は膜電位を過分極させることで心拍数を減少させる!
アセチルコリンの作用
1日目の内容
閾値に達するまで
の時間が延長
④ 筋収縮の仕組み
心室筋の構造
筋の収縮と Ca2+ イオン
筋の収縮には、
筋小胞体からのCa2+の流入が必要!
骨格筋の場合:
活動電位をDHPRが受容
結合しているRYR1にシグナルを伝達
RYR1が開口・筋小胞体からCa2+が流入する
心筋の場合:
活動電位をDHPRが受容
結合しているCa2+チャネルからCa2+が流入
流入したCa2+により、RYR2が開口
筋小胞体からCa2+が流入する
⇒Calcium-induced calcium release
心筋の収縮には細胞外からの Ca2+ イオンの流入が必要!
実習にあたって
目的・・・心臓の収縮に関する基礎を学ぶ。さらに、
心室筋の静止電位と活動電位の発生に
関与するイオンチャネルの性質について学ぶ。
標本・・・食用カエルから摘出した心臓
(室温で空気中に出しても長時間拍動し続けるので実習に使いやすい)
実験項目
1. 心臓の収縮に関する実験
八木式心臓灌流標本を用い、心臓収縮に影響する
イオン環境や薬物について学ぶ。
2. 心室筋の活動電位に関する実験
電気生理学的手法により、心臓の活動電位を観察する。
更に1日目の実験と合わせて考察して、活動電位の発生
と心臓収縮の関係について理解を深める。
食用カエルの心臓
・ 2心房1心室
・ 静脈洞がペースメーカー
・ 動脈球から2本の動脈
摘出心臓標本を用いた心臓循環に関する実験
検討項目
1. 静脈カニューレ中の液面の高さを変化させ、
1分間の心拍数と心拍出量を測定する。
2. 液面をほぼ一定に保ちながら、ACh の
効果を検討する。
3. 高 K+ 溶液の効果を検討する。
4. 無 Ca2+ 溶液の効果を検討する。
5. 低 Ca2+ 高 Mg2+ 溶液の効果を検討する。
(電位依存性 Ca2+ チャネルが抑制される)
摘出心臓標本を用いた心室筋活動電位に関する実験
心房から
心室から
心室筋活動電位の測定
引圧で細胞膜が壊れ
て、細胞内の電位が
測定出来る様になる。
検討項目
1. 高 K+ 溶液の効果を検討する。
2. 無 Ca2+ 溶液の効果を検討する。
3. 低 Ca2+ 高 Mg2+ 溶液の効果を
検討する。
考察
心臓収縮で得られた結果と活動電位
の測定で得られた結果について、よく
比較して、なぜこのような結果になる
のかを考察する
横軸は1マスで2秒。