第1問の解説 - livedoor Blog

センター生物~解説~
第1問
全体についてのコメント
A は,リード文の読解がほぼいらない問題であり,短時間で処理したい。
B は,神経伝達物質の分泌についての考察問題。数研出版では Ca2+についての記載がなく知識では問え
ないテーマのため,実験考察になったと思われる。第一学習社では「Ca2+チャネルが開き,Ca2+が軸索内
に流入」と記載されており,この知識(≒先入観)に頼り,丁寧に読解できなかった学生は不正解となる可能
性がある。
設問別解説
A
問1 酵素についての基礎知識を問う設問。触媒である酵素は反応の前後で変化しないので②・⑥が誤り。
③については「最適温度以下では」の部分を読み落とさないことがポイント。
問 2 酵素反応の調節についての基礎知識を問う設問。 イ の手前の「活性部位以外に物質が~変化
する」の記述からアロステリック酵素と見抜く。なお,allo-はギリシャ語に由来する『別の(=other)』
を意味する接頭辞。さらに, ウ の手前の「酵素が作用する物質(=基質)と似た阻害物質が活性部位
に結合」の記述から競争的阻害と決められる。
B
問 3 細胞小器官のはたらきについての基礎知識を問う設問。細胞外に放出されるタンパク質は粗面小
胞体のリボソームで合成され,小胞体を通り,ゴルジ体に運ばれる。そこで濃縮され分泌顆粒に入れら
れエキソサイトーシスによって放出される。
問 4 伝達物質の分泌と Ca2+との関係について実験結果をもとに考察する設問。
(注:図 2 の 8 個の実験を左から順に(1),(2)・・・(8)として解説します。)
まず,リード文中の「細胞質基質の Ca2+濃度が上昇して現象 E(=エキソサイトーシス)が生じる。
」
とあることをチェックする。本問では,この Ca2+濃度の上昇が「(ⅰ)細胞外から流入する Ca2+による」
,
2+
2+
「(ⅱ)小胞体から細胞質基質に放出される Ca による」
「(ⅲ)細胞外からの流入する Ca と小胞体から
2+
放出される Ca の両方による」のいずれかを決めることを目的として実験が行われている。
(1)(2)(5)の条件では,細胞外の Ca2+による Ca2+濃度の上昇は起こらない。この状態で標識された点
の数が 40 存在しており,小胞体内の Ca2+によるエキソサイトーシスが起きたと考えられる。
これとは逆に(7)の条件では,小胞体内の Ca2+による Ca2+濃度の上昇は起こらない。この状態で標識
された点の数が80 存在しており,
細胞外からのCa2+によるエキソサイトーシスが起きたと考えられる。
以上より,神経伝達物質の放出の際の Ca2+の供給源は『細胞外と小胞体の両方』と決まる。くれぐ
れも,中途半端な知識に頼って①を選択しないように。