9 虚血性急性腎不全モデルにおける腎障害に対する新規 Na+ /Ca2+ 交換阻害薬 KB-R7943 の 改善効果 ○山下潤二、黒 敏彦、伊藤 誠、小林 豊、高岡昌徳、松村靖夫 (大阪薬大・薬・第一薬理) 【目的】虚血性の細胞障害において、細胞内 Ca2+ の上昇が重要な因子であることがこ れまで報告されているが、虚血性急性腎不全による Ca2+over1oad の病態生理学的なメ カニズムについては十分に解明されていない。そこで本研究では新規 Na+/Ca2+ 交換阻 害薬である KB-R7943 を用いて本病態モデルにおける腎障害に対する影響について検 討を行った。またこの病態モデルの発症・進展の一因とされている腎エンドセリン−1 (ET-1) 産生についても合わせて検討を行った。 【方法】 実験動物として 8 週齢の SD 系雄性ラットを用いた。右腎摘出 2 週間後、麻 酔下において左腎動静脈の血流を 45 分間遮断し、虚血性急性腎不全モデルを作製した。 溶媒 (対照群)、KB-R7943 (2mg/kg、10mg/kg)を虚血 5 分前に頸静脈から投与した。 再灌流 24 時間後に 5 時間尿を採取し、採血及び腎摘出を行った。腎機能は血中尿素窒 素 (BUN)、血漿クレアチニン (Pcr)、クレアチニンクリアランス (Ccr)、尿量 (UV)、 尿浸透圧 (Uosm) および尿中 Na 排泄率 (FENa) により評価した。得られた腎臓から 腎 ET-1 含量の測定ならびに病理組織化学的検討を行った。また再灌流後に KB-R7943 (10mg/kg) を投与して腎機能パラメ−タ−におよぼす影響についても検討した。なお、 片腎摘出のみを行った動物を sham 群とした。 【結果】対照群では、sham 群と比較して、有意な BUN、Pcr、UV および FENa の 増加ならびに Ccr、Uosm の低下が認められた。これらの腎機能の低下は、KB-R7943 (2mg/kg) の虚血 5 分前投与により改善傾向がみられ、KB-R7943(10mg/kg)では虚血 5 分前あるいは再雇流後いずれの投与によっても有意に改善された。また、対照群にお いてみられた腎組織障害、再灌流2、6、24 hr 後でみられた腎 ET-1 含量の亢進は KB-R7943 (10mg/㎏) 投与によって有意に抑制された。 【考察】KB-R7943 投与によって虚血性急性腎不全による腎機能の低下、腎組織障害 は明らかに改善された。また KB-R7943 は再灌流2、6、24 hr 後においてみられた 腎 ET-1 産生亢進を有意に抑制したことから Na+/Ca2+ 交換系を介する Ca2+ overload に引き続く腎 ET-1 産生の増加がこの病態モデルの発症・進展に深く関わっていること が示唆された。
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