学会レポート A t r i a l F i b r i l l a t i o n a n d S t ro k e 心房細動 と脳梗塞 Congress Reports STROKE2013 抗凝固療法の最前線 第38回 日本脳卒中学会総会 2013年3月21日∼23日 東京 実地臨床でダビガトランは脳梗塞が比較的軽症で 腎機能が良好な患者に使用されている 国立病院機構 九 州 医 療センター 脳血管・神経 内 科 森 興太 氏 新規の経口抗凝固薬(NOAC)が相次いで登場し、ワルファリンとの使い分け に注目が集まっている。3月21日から23日まで東京で開催された第38回 日本脳卒中学会総会で、九州医療センター脳血管・神経内科の森興太氏は、 実地臨床においてダビガトランとワルファリンが処方された患者背景を比較 検討したところ、ダビガトランはワルファリンよりも脳梗塞が比較的軽症で 腎機能が良好な患者に使用されていたことを明らかにした。 対 象は、2 0 1 1 年 3月1 4日から2 0 1 2 年 9月3 0日までに退 院した非 弁 膜 症 性 心 房 細 動を 有する急性期脳梗塞患者のうち、退院時にダビガトランまたはワルファリンを使用していた90例で、 ダビガトラン群が33例(37%)、ワルファリン群が57例(63%)であった。 患者背景を比較したところ、年齢、性別、高血圧、糖尿病、脂質異常症、脳出血の既往については両群に有意な差は認められなかった。しかし、入院前 modified-Rankin Scale(mRS)はダビガトラン群で0に対しワルファリン群で3であり (P<0.001)、入院時NIHSS(National Institute of Health Stroke Scale)中央値もダビガトラン群で2に対しワルファリン群で5と(P<0.0002)、ダビガトラン群は有意に軽症であった。また、入院時クレアチニン クリアランス(CCr)についても、ダビガトラン群で68.0mL/分/1.73m 2に対しワルファリン群で55.5 mL/分/1.73m 2であり、ダビガトラン群は有意に 腎機能が良好であった(P=0.025)。 退院時の食事形態は、ダビガトラン群では全例が通常食摂取可能であったのに対し、ワルファリン群では8例(14%)が嚥下訓練食、16例(28%)が 経管栄養であった(P<0.001)。転帰は、ダビガトラン群では25例(76%)が自宅退院であったのに対し、ワルファリン群の自宅退院は21例(37%)に とどまり、半数以上が転院または転科であった(P=0.0006)。在院日数についても、ダビガトラン群は14日間であり、ワルファリン群(29日)のほぼ 半分であった(P<0.001)。 森氏は、 「ダビガトランは効果発現が早く、症例ごとの用量調節が不要であり、薬物相互作用も比較的少ないといった特徴がある。さらに、頭蓋内出血の 発現率をワルファリンよりも有意に抑制したことが大規模臨床試験でも報告されている。今回の検討で、ダビガトランは脳梗塞が比較的軽症で腎機能が 良好な患者に使用されていることが明らかになったが、ダビガトランが重度の腎機能低下例への使用は禁忌であることと考え合わせると、ダビガトランが 実地臨床においても、添付文書の記載内容を遵守し、適正に使用されていることが裏付けられたものと考えられる」と結んだ。
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