両下腿脂肪織炎の経過中にRPGN様の経過を認めた一例 - SQUARE

両下腿脂肪織炎の経過中に
両
腿脂肪織炎 経過中に
RPGNを来した 例
RPGNを来した一例
京都府立医科大学 循環器
循環器・腎臓内科
腎臓内科
松岡英子 木村兌宖 迫田知佳子 石田真美 岡崎明子
薗村和宏 岸本典子 丹田修司 中川久子 沖垣光彦
森泰清 松原弘明
症例
63歳
男性
主訴: 両側下腿の浮腫・色素沈着・皮膚硬化、下肢疼痛
現病歴:
平成18年7月より両下腿浮腫が出現。近医での精査に
て心 腎 肝 甲状腺疾患 DVTは否定的。2/27皮膚生検
て心・腎・肝・甲状腺疾患・DVTは否定的。2/27皮膚生検
により脂肪織炎と診断。炎症反応上昇に対し抗生剤投与
されるも改善を認めず、下腿に色素沈着を残した。
平成18年12月より発熱・関節痛が出現。膠原病を疑わ
れ、平成19年3月当院アレルギ 膠原病科 転院とな
れ、平成19年3月当院アレルギー・膠原病科へ転院とな
る。精査の結果、各種自己抗体陰性であり、皮膚再生検
の結果も脂肪織炎であった。
経過中の尿検査にて糸球体性血尿・蛋白尿を認め、ま
た数週間で進行する腎機能低下も出現したため、原因精
査目的に腎生検を施行することとなった。
既往歴 1992
1992・2002年:両下腿浮腫→自然軽快
2002年 両下腿浮腫 自然軽快
肥満歴あり(平成18年までBMI28∼30)
検尿歴は不明
家族歴 父:腎疾患(詳細不明)
嗜好歴 喫煙歴:20本/日×14年(30歳以降は禁煙)
飲酒歴:焼酎1升/日×15年
薬剤歴 前医からのプリンペラン・アシノン・
マイスリーを継続内服。
イ リ を継続内服。
下肢疼痛に対してNSAIDs頓用
身体所見
身長 173cm 体重 71kg. BMI 23.7
血圧 121/73mmHg(左右差なし) 脈拍 92/min 整
眼結膜: 貧血なし、黄疸なし
頚部 リンパ節腫脹なし、甲状腺腫大なし、
頚部:
リンパ節腫脹なし 甲状腺腫大なし
扁桃両側腫大なし
胸部: 心雑音なし、呼吸音清明
腹部: 平坦
平坦・軟で腸蠕動音正常、圧痛なし、血管雑音なし
軟で腸蠕動音正常、圧痛なし、血管雑音なし
肝・脾触知せず
四肢 両下腿に浮腫・色素沈着・皮膚硬化を認める
四肢:
両下腿に浮腫 色素沈着 皮膚硬化を認める
神経学的所見: 明らかな異常認めず
入院時(3/14)検査所見①
尿検査
(定性) 比重
1 009
1.009
蛋白
(+)
潜血
(3 )
(3+)
WBC
(-)
糖
(-)
(沈渣) 変形RBC
30-49 個/Hpf
(定量)蛋白
0.42 g/day
NAG
58.60 U/day
β2m
104 µg/day
Ccr
67.7ml/min/1.73m²
(eGFR 58.1ml/min/1.73m²)
生化学検査
LDH
GOT
GPT
TP
Alb
UN
Cr
C
UA
Na
K
Cl
CRP
T-chol
HDL
TG
入院時(3/14)検査所見②
100
25
38
9.5
28
2.8
15.1
1.02
.0
3.6
134
4.4
100
10 88
10.88
156
26
88
IU/l
IU/l
IU/l
g/dl
g/dl
mg/dl
mg/dl
g/d
mg/dl
mEq/l
mEq/l
mEq/l
mg/dl
mg/dl
g
mg/dl
mg/dl
FBS
HbA1c
C3
C4
CH50
IgG
IgA
IgM
IgE
CEA
CA19 9
CA19-9
125 mg/dl
6.9
%
168.0 mg/dl
45.2 mg/dl
64 9 U/ml
64.9
U/ l
4091 mg/dl
771 mg/dl
78
mg/dl
113 mg/dl
2.0
2.6
26
ng/ml
U/ml
入院時(3/14)検査所見③
血算
RBC
Hct
Hb
WBC
neut
lymph
mono
eos
PLT
ESR
338×104
28.3
8.9
11300
/µl
%
g/dl
/µl
70.4
19
19.9
9
7.7
1.7
%
%
%
%
46.7×104
/µl
(1h)>140mm
(2h)>140mm
凝固系
PT
INR
APTT
Dダイマー
ダ
15.7
5.7
s
1.24
40.2
s
10.3µg/ml
感染症
STS
HBs Ag
HCVAb
(-)
(-)
((-))
入院時(3/14)検査所見④
免疫・自己抗体
ANA (Speckled) 40倍
倍
CIC(C1q) < 1.5 µg/ml
CLβ2GPI < 1.2 U/ml
抗dsDNA抗体 < 5 IU/ml
抗ssDNA抗体 7 IU/ml
抗S 抗体
抗Sm抗体
<7
U/ml
U/ l
抗RNP抗体 < 7
U/ml
抗Scl-70抗体
抗S
l 70抗体 < 7 U/
U/mll
抗Jo-1抗体
< 7 U/ml
セントロメア抗体 5.6INDEX
MPO-ANCA
MPO
ANCA <10
EU
PR3-ANCA
<10 EU
尿中B
尿中Bence
JJones蛋白
蛋白 陰性
血清クリオグロブリン 陰性
血清免疫電気泳動
清免疫電気泳動 M-protein
p
認めず
胸部X線
CTR 50%
心電図
HR 88/min, NSR、有意なST-T変化認めず
腎臓超音波
左右ともサイズ正常、 皮質保たれている、
左下極に径2cmのcyst(+)
眼底所見
特記すべき所見なし
肺野に異常陰影を認めず
入院経過中検査所見
尿検査(3/26)
(沈渣) 変形RBC
(定量)蛋白
生化学(4/16) UN
C
Cr
>100 個/Hpf
個/H f
0.29
g/g・c
25.2
1 72
1.72
Ccr(4/16) 41
41.3ml/min/1.73m
3ml/min/1 73m²
(eGFR 31.8ml/min/1.73m²)
mg/dl
mg/dl
/dl
MTC (×40)
PAS ((×100)
100)
PAS (×100)
PAS
PAM
MT
(×200)
PAS
PAM
MT
(×400)
PAS
PAM
MT
(×200)
IgG
IgM
IF
IgA
fib
C3c
C3d
C1q
EM①
EM②
EM③
EM④
EM⑤
EM⑥
EM⑦
腎生検のまとめ
光顕
18個の糸球体が観察され、全硬化糸球体は7個。糸球体は腫大してい
る 分節性
る。分節性にメサンギウム領域拡大・管内増殖変化を認め、分節性硬化・癒着を
ギウ 領域拡大 管 増殖変 を
分節性
癒着を
伴う糸球体が一個。線維細胞性半月体・癒着・分節性硬化を認める糸球体が一
個。その他の糸球体については、メサンギウム領域の拡大は軽度であった。
間質の線維化は軽度。全硬化糸球体の周囲に炎症細胞浸潤・尿細管の萎縮を
認める。
蛍光
メサンギウムに IgM±、C3c+∼
g
± 、C3d ±
糸球体係蹄にC3c +∼ ± 顆粒状∼線状、C3d +∼ ± 線状
電顕 上皮下に比較的大きなelectron dense depositを認める。
基底膜内・内皮下にも小さいdense depositを散見する。
p
フィブリンの析出を伴う半月体を認める。
MPO ANCA
MPO−ANCA
10EU未満(入院時3/14)
( 検直後
)
→ 233EU(生検直後4/20)
PAS
(×100)
PAS →
(×400)
← PAM
(×400)
腎生検のまとめ
光顕
18個の糸球体が観察され、全硬化糸球体は7個。糸球体は腫大してい
る 分節性
る。分節性にメサンギウム領域拡大・管内増殖変化を認め、分節性硬化・癒着を
ギウ 領域拡大 管 増殖変 を
分節性
癒着を
伴う糸球体が一個。線維細胞性半月体・癒着・分節性硬化を認める糸球体が一
個。その他の糸球体については、メサンギウム領域の拡大は軽度であった。
間質の線維化は軽度。全硬化糸球体の周囲に炎症細胞浸潤・尿細管の萎縮を
認める。
〔追加切片〕26個の糸球体が観察され 全硬化糸球体は5個 細胞性半月体形成
〔追加切片〕26個の糸球体が観察され、全硬化糸球体は5個。細胞性半月体形成
を認める糸球体を2個認める。
蛍光
メサンギウムに IgM±、C3c+∼ ± 、C3d ±
糸球体係蹄にC3c +∼ ± 顆粒状∼線状、C3d +∼ ± 線状
電顕 上皮下に比較的大きなelectron dense depositを認める。
基底膜内・内皮下にも小さいdense depositを散見する。
p
フィブリンの析出を伴う半月体を認める。
本症例のポイント
①電顕像にて上皮下に認められたelectron
①電顕像にて上皮下に認められた
l t
d
dense
d
deposit
it
の意義をどう捉えるべきか。
② 生検前は陰性であったMPO-ANCAが生検直後の再
検時には陽性となっており、組織学的には追加切片にて少
数ではあるが細胞性半月体を認めた。腎組織との関連性
はいかなるものか。
はいかなるものか
③ 下腿脂肪織炎と腎炎の関連性はあるのか。
Thomashow D.F.et al:Granulomatous Panniculitis Associated with Crescentic
Glomerulonephritis Nephron :1994;67:374-376
Nick Hateboer.
Hateboer et al:Crescentic Glomerulonephritis in a Patient with Relapsing
Nodular Panniculitis:Am J Nephrol 1998;18:256-257
Z.Korzets.et al:A child with p
panniculitis and microhaematuria / p
proteinuria- an
unusual presentation of p-ANCA-positive vasculitis : Nephrol Dial Transplant 1997
12:787-789
皮膚組織 HE (×40)
皮膚組織 HE (×100)
皮膚組織 HE (×200)
皮膚組織 HE (×40)
皮膚組織 HE (×100)
皮膚組織 HE (×100)
皮膚生検 まとめ
皮膚生検のまとめ
表皮直下から真皮にかけて著名な線維性肥厚が
存在し 汗腺より深部にも線維成分の増生を認める
存在し、汗腺より深部にも線維成分の増生を認める。
皮下脂肪織においては、中隔結合組織の肥厚と、
皮下脂肪織においては
中隔結合組織の肥厚と
小葉中心部の脂肪組織壊死・出血性病変を認める。
炎症細胞浸潤はごく軽度認めるのみである。
皮膚深層の動脈において著明な線維性内膜肥厚
を認めるが 炎症細胞浸潤は認めない
を認めるが、炎症細胞浸潤は認めない。