A t r i a l F i b r i l l a t i o n a n d S t ro k e 学会レポート 心房細動 と脳梗塞 抗凝固療法の最前線 Congress Reports JCS2014 第78回 日本循環器学会学術集会 2014年3月21日∼23日 東京 経口抗凝固薬ごとにアブレーション周術期に必要なヘパリン量は異なる 福岡山王病院ハートリズムセンター 医長 遠山 英子 氏 心房細動患者に対するカテーテルアブレーション(以下、アブレーション)は、血栓塞栓症を予防するために抗凝固療法下で 実施されることが増えている。3月21日から23日まで東京で開催された第78回日本循環器学会学術集会で、福岡山王 病院ハートリズムセンター医長の遠山英子氏は、アブレーション施行時に必要なヘパリン量は患者が服用している経口 抗凝固薬により異なること、およびアブレーション施行患者に対する抗凝固療法として新規経口抗凝固薬(NOAC)と ワルファリンは有効性・安全性も同等であったことを報告した。 対象はアブレーションを施行した非弁膜症性心房細動患者736例で、ダビガトラン群455例(150mg×2回/日295例、110mg×2回/日160例)、 リバーロキサバン群50例(15mg/日41例、10mg/日9例)、ワルファリン[PT-INR(プロトロンビン時間の国際標準化比)1.6∼3.0]群231例であった。 3群の年齢、性別、病型、CHADS 2スコア等の患者背景に差は認められなかった。 アブレーション周術期の抗凝固療法として、経口抗凝固薬投与をアブレーション当日朝のみ中止し、術中はヘパリンを投与し活性化凝固時間(ACT) 300∼400秒にコントロールした。術後は、出血がないことを確認した上で、当日夕方(術後2時間程度)より経口抗凝固薬の投与を再開した。その際の 投与量は、ワルファリンとリバーロキサバンは1日分の用量、ダビガトランは1回分の用量とした。 術中、ACT 300秒を超えるまでにボーラス投与した初回のヘパリン量は、ワルファリン群80 IU/kg、ダビガトラン群110 IU/kg、リバーロキサバン群 140 IU/kgであり、各群間で有意差が認められた(P<0.0001、図)。また、手術終了までに要した総ヘパリン量についてもワルファリン群140 IU/kg、 ダビガトラン群200 IU/kg、リバーロキサバン群250 IU/kgと各群間で有意差が認められた(P<0.0001)。遠山氏はこの結果について「経口抗凝固薬 ごとに、必要となるヘパリン量が異なることが明らかになった。1日2回投与のダビガトランと1日1回投与のリバーロキサバンでは、血漿中濃度の推移が 異なるためではないかと推察される。アブレーション施行時は薬剤ごとの違いを念頭に置いて、ヘパリン量を調節することで、周術期合併症の発現を より抑制できる可能性がある」と指摘した。 また、周術期合併症の発現率として、心嚢穿刺を必要とした心タンポナーデはワルファリン群とダビガトラン群でともに0.4%、小出血である鼠径部の 血腫はワルファリン群3.0%、ダビガトラン群2.0%、リバーロキサバン群4.0%、 ドレナージを必要としない軽度の心嚢液貯留はワルファリン群1.3%、 ダビガトラン群0.9%、リバーロキサバン群2.0%といずれも同程度であった(表)。出血性合併症全体の発現率はワルファリン群4.8%、ダビガトラン群 3.3%、リバーロキサバン群6.0%で、3群間で有意差は認められなかった。 遠山氏は「ダビガトラン群で血栓塞栓症が認められた1例は、低用量が用いられており、適切な用量選択が重要と考えられた。ワルファリンとNOACでは、 周術期合併症の発現率に有意差は認められず、アブレーション施行患者の抗凝固療法として、NOACはワルファリンの代替薬として有用と考えられた」と結んだ。
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