人体生理学講義 血液の生理学 止血機構 担当:鈴木 2015.11.12 Ⅱ.血液の生理学 血液は各種物質の輸送担体である。生体組織の細胞にとって必要な酸素は赤血球によって運ばれる。赤血球の量が多けれ ば好都合のように思えるが、血液全体の40%強に維持されている。 赤血球の量が増えると、血液はねばくなって流れ難くなるためである。血液はあらゆる生体細胞の内部環境になってい る。内部環境の乱れは細胞の生死に関わる。したがって、様々な生理機能は血液の性状を一定に維持するために働いてい る。血液は血管外にでると(出血すると)凝固するが、血管内では固まらないで流れている。この様な血液の様々な機能 について学ぶ。 7.止血hemostasis 資料集p65(27) 血管の損傷-出血に始まり、 局所血管の収縮と一次止血(白色血栓の形成)、 二次止血(赤色血栓の形成)凝固、 血管の修復と線維素溶解現象、 血流再開までの過程 1)血小板による一次止血 血小板blood platelet の生成と寿命、形態、数 巨核球 3−7日、2−4μm楕円形粒子、 20-30万/μℓ トロンボポエチン(TPO) 血小板の構造と機能: 資料集p66(28) 血小板膜、微小管microtubule、微小糸microfilament、 開放小管系open canalicular system、暗調小管系dense tubular system 顆粒(濃染顆粒dense granule、α-顆粒、リソソームlysosome) 血小板による一次止血(白色血栓の形成) 血小板の粘着反応: 血管内皮下組織(collagen、microfibril) 血小板膜糖タンパク質(GpⅠb, GpⅡb/Ⅲa) von Willebrand factor (vWF) とvon Willebrand 病 血管内皮、巨核球で産生、250kDa。 コラーゲンと結合 血小板GpIbと結合(血小板粘着) Bernard-Soulier syndrome とGlanzmann's thrombasthenia 血小板無力症 血小板の可逆的凝集(一次凝集): 血小板凝集の測定(aggregometer)と凝集惹起物質 血小板内の構造変化と血小板の形態変化 アラキドン酸カスケードとトロンボキサンA2 の生成 シクロオキシゲナーゼ(COX)←アスピリンによる抑制 (血管内皮COXも大量投与で抑制PGI2低下:アスピリンジレンマ) 濃染顆粒からの放出反応: ADP(ADP 受容体),Ca フィブリノーゲンによる血小板膜糖タンパク質(GpⅡb/Ⅲa)間の架橋 血小板の不可逆的凝集(二次凝集): α-顆粒からの放出反応:fibrinogen、vWF、thrombospondin 2)血液の凝固blood coagulation (二次止血) 凝固因子: ローマ数字 資料集p67-8図(29)(30) serine protease、補助因子、ゲル形成因子、フィブリン安定化因子 前駆酵素(Zymogen) 凝固因子の活性化activation (a) 凝固因子の構造上の特徴:kringle 構造、ビタミンK依存性など 内因性凝固系:試験管内での凝固系 (1) 固相活性化反応:異種表面での凝固因子の活性化(コラーゲンなど) 高分子量キニノーゲンhigh molecular weight kininogen (HMWK) プレカリクレインとカリクレインprekallikrein & kallikrein ⅩⅡ因子、ⅩⅠ因子 (2) リン脂質相反応:血小板膜上での凝固因子の活性化 Prothrombin 一族(prothrombin、Ⅹ因子、Ⅸ因子、Ⅶ因子)の特徴: ビタミンK依存性因子 γ-carboxyglutamic acid(Gla)、Ca2+、リン脂質間の相互作用 クマリン系薬物(ワーファリン)による凝固因子生成阻害 Ⅷ因子と血友病A、Ⅸ因子と血友病B Prothrombin activator 形成 リン脂質上 Va因子+Xa因子複合体 Prothrombin→Thrombin (3) 液相反応:フィブリン形成 フィブリノーゲンfibrinogen の構造 トロンビンによるfibrin polymer の形成とfibrinopeptide A & B の生成 可溶→不溶 dimer ⅩⅢ因子によるフィブリンの安定化 血餅退縮 架橋 外因性凝固系:血管損傷時の凝固系 組織因子tissue factor (TF) と組織因子経路阻害因子(TFPI) の役割 (繊維芽細胞) (肝細胞、血管内皮、単球) Xa,VIIを阻害 Ⅶa-TF複合体によるⅩ因子とⅨ因子の活性化 ⅩⅠ因子の自己活性化 Tissue factor pathway inhibitor (TFPI) による活性化凝固因子の不活性化 凝固時間と出血時間coagulation time & bleeding time 3)線維素溶解現象(線溶) フィブリノーゲンの溶解(一次線溶)fibrinogenolysis と フィブリンの溶解(二次線溶)fibrinolysis 線溶の生理的意義、凝固の亢進(血栓形成)と凝固の低下(出血傾向) プラスミノーゲンplasminogen の活性化とプラスミンplasmin の生成 資料集p70図(31) Kringle構造 fibrinやα2anti-plasminのリジンと結合 Cf.トロンビン plasminogen activator: *endogeneous (intrinsic, extrinsic) t-PA(組織plasminogen activator) 内皮細胞で産生 plasminogenと共にfibrin血栓に付着し、効率よく、plasminを生成 Urokinase(UK, u-PA): 腎臓でも産生、54kDa。plasmin及び血漿kallikreinにて活性化 fibrinとの結合能なし、血漿中でplasminogenをplasminに活性化 *exogeneous streptokinase(SK) staphylokinase(SAK) フィブリン分解産物fibrin degradation products (FDP) 線溶の抑制: plasmin inhibitor (α2-antiplasmin,α2-plasmin inhibitor) 肝臓で産生され、分子量は約67kDa plasminと特異的に結合 plasminogen activator inhibitor plasminogen activator inhibitor type-1 (PAI-1) 血管内皮、血小板から放出 t-PAおよびUKを特異的に阻害(生理的セリンプロテアーゼインヒビター) 血中の PAI-1量は内臓脂肪や BMIと相関(インスリンで増加) 活性化ProteinCにより抑制 4)抗凝固剤anticoagulants 資料集p70図(32) 生体内における血液凝固阻止機構: negative feedback: 播種性血管内凝固 disseminated intravascular coagulation (DIC) 凝固因子の失活: anti-thrombin Ⅲ (AT-Ⅲ)(生理的セリンプロテアーゼインヒビター) Xaやトロンビンなどのセリンプロテアーゼと1対1の複合体を形成する。 ヘパリンは単独では抗凝固活性はないが、anti-thrombinと結合することで、 そのセリンプロテアーゼ活性阻害を増強する(1000倍)。 thrombomodulin-protein C-protein S 系 protein C:肝臓で産生 62KDa。セリンプロテアーゼ前駆体。 thrombomodulinと結合したthrombinにより活性化(APC) protein S:肝臓で産生 84KDa。APCの補酵素 APCと共役してVa、VIIIaを失活させる(凝固抑制)。 また、APCはPAI-1と反応し、局所PAI-1濃度を下げる(線溶亢進) 試験管内における血液凝固の阻止(抗凝固剤) Ca2+ のキレート剤:クエン酸塩、EDTA、蓚酸塩 thrombin の不活性化促進:ヘパリンheparin 血栓症thrombosis とその治療、副作用 naphthoquinone 誘導体(dicumarol, warfarin) 血管内皮と凝固抑制 ・ヘパリン様物質(ヘパラン硫酸) ・thrombomodulin thrombinと結合(thrombinを中和):複合体形成→Protein Cを活性化(凝固抑制・線溶亢進) 血管内皮とずり応力、NO 酸化LDL ヒルジン (Hirudin) :抗トロンビン作用 Lepirudin
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