時 代を 切 り拓 く Leader’s Voice Epoch Maker 【vol.005】 川崎重工航空宇宙カンパニー 生産本部副本部長 (理事) 油圧ポンプ 白石明裕 世界の建設現場を席巻する日本メーカーの油圧ショベル。 その心臓部である油圧ポンプで国産初号機の開発以来、圧倒的な性能で 建設機械産業を支えてきたのが川崎重工だった。 Akihiro Shiraishi Working Togetherに賛同し、 確固たる生産体制を整える 「 787 」は、世界 中のメーカーが 協 力して生 産する き、内部を報道関係者にも公開しました。 動油を送り出すピストンが斜 板の上を摺動することで往復 運動す 東工場は延床面積が約 6 万 m 3 で、2013 年 12 月か しかし意外に歴史は浅く、日本初の純国産油圧ショベルが誕生し るタイプのことだ。81 年に登場した NV シリーズからは、斜 板の角 ら建設を開始していました。竣工式にはボーイング社 たのは1965 年のこと。この純国産初号機向けの油圧ポンプを開発 度を深くして高圧・高速運動を可能にし、各種部品もミクロン単位 したのが川崎重工だった。油圧ポンプはモーターやシリンダなどに で 精度を磨き上げることでさらなる高出力密度化を実現した。最 作動油を供給する、いわば油圧ショベルの“心臓部”。川崎重工は純 新の K7V シリーズは、K V シリーズに比べて約 10 倍の高出力密度 国産初号機で採用された「 KVシリーズ」を1968 年に開発し、油圧 化を達成。川崎重工は、油圧分野の立役者となっている。 Kawasaki News 178 右 対 称 だ が 、使 わ れ る 定した斜 板ポンプの開発」をめざした機種で、斜 板ポンプとは、作 されている。 部品は微妙に異なっ さ、多機能性、低 騒 音性、そして高い信 頼性によって世界から支 持 Q S K Y て い る た め 、取 付 け 部 名古屋第一工場内に新設された東工場の竣工式を開 ﹁ ﹂が 育てる 世 界で最も効 率の良い工 場 る。KVシリーズは「 50メガパスカル( MPa )の超高圧化の時代を想 品を間違わないよう 型機から大型機まで、優れた油圧技術による操作性や機動性の良 東工場の竣工で、川崎重工の生産体制 川崎重工は、2015 年 3 月 13 日に愛知県弥富市の 14 に 治 具 を 改 善 。ま た 、 動 油を高 圧 で 高 速に 送り出し、一方 で は 本体 の 小 型 化を 追 求 す News 10 機に増える見込 占めており、 “ Made In Japan ”を象徴する工業製品の一つだ。小 建 いが、日本メーカーの 油 圧ショベルは世界シェアの5 割を ポンプ事業を軌道にのせた。 機から 油圧ポンプの進化は「高出力密度化」に尽きる。より大容量の作 竣工式で、東工場の全容を 関係者に公開 設現 場の花形と言えば油圧ショベル。あまり知られていな は従来の月間 安全な航空機を造るために投入されているのです。 各工程での作業員の ションもなされています。 “ALL KAWASAKI”の力が、 K3VさらにK5Vへと受け継がれた省エネ化などへの 。使用圧 対応をさらに進化させたのが 「K7Vシリーズ」 力は最大40MPaで、出力はK3Vと同じ重量で20%以 上向上している。効率も従来比+3ポイントの高効率化 を実現した。 みだ。 そもそも ﹁787﹂ の生産は、 大型機 ジュールなど、3工場体制の最適な生産管理シミュレー 動きをビデオで撮影 発され、東 工場 の 建 設に際しては仕 掛 品や搬 送 スケ 高出力密度で環境性能も 高度化した「K7Vシリーズ」 し て 動 線 を 分 析 し 、ム 用刃具や超音波非破壊検査装置の分析手法などが開 2014 の量産という経験のないものづくりへの 連企業の協力も得ています。これまでも複合材の切削 挑 戦 で あ っ た 。航 空 宇 宙 カ ン パ ニ ー で そのノウハウを確立するために、技術開発本部や関 ダのないスムーズな されます。 は、ボーイング社の量産手法や川崎重工 た 点にも航 空 機づくりの 知られざるノウハウが 発 揮 動 き を 探 る こ と で 、工 ンの同期をスムーズに実現しなければ ならず、こうし 程時間の短縮を実現 げることも重 要な 課 題 でした。部 品 調 達や 生 産ライ 「NVシリーズ」 は、 ピストンの加工形状 状 81年に登場した の変更や摺動面の素材開発、 2つのポンプを直列に結 合するアイデアの採用などにより高圧・高速・小型化を 実現。使用圧力は最終的に32MPaにまで向上、それで いて高い信頼性を実現した。 している。 機 数を見 越し、増 産に 対応 で きる工 場として立ち上 社から﹁世界で最も効率の良い工場﹂と 型」 「 10 型」を 生 産しますが、階 段 状に増 加する生 産 さらなるイノベーションの の 黎明「NVシリーズ」 独 自 の 生 産 改 革 手 法﹁ 新 工 場 の東 工 場で は、 「 787 」の 派 生 機 である「 9 1981 09 4 K︵ PS Kawasaki ゼンスを高めています。 ︶ ﹂ の源流である二輪車 Production System 事業などからもそのノウハウを学んだ。 ロ」などの輝かしい成果につながり、川崎重工のプレ こ う し た 地 道 な 活 動 が 、ボ ー イ ン グ び 改善する活動は、安定 品質や「納期遅れ / 欠品率ゼ それは﹁愚直な実行﹂を基本とし、さら 源流で、両者は高い親和性を備えています。互いに学 賞賛される成果を生み出した。﹁サプラ BPS はトヨタ自動車の改善運 動に学んだものです が、川崎重 工の改善 運 動である「 KPS 」もまた同社が に ﹁ QSKY ︵ Quality ・ Safety ・危険予知︶ ﹂ と いう標語に集約された﹁品質安全と安全 NVシリーズの革新を踏襲しながらも、さらに信頼性や 「K3V 標準化、生産性を向上させ誕生したのが88年の シリーズ」 。部品点数を30%削減して価格競争力を強化。 日本製油圧ショベルが世界を席巻していく原動力に なった。使用圧力は最終的に38MPaにまでなった。 創造するための新たな取り組みでした。 イヤー・オブ・ザ・イヤー﹂などのさまざ 部品点数を大幅に削減した 「K3Vシリーズ」 を 生み 出そうとしたのです。これは安 全な 航 空 機を 作業は同じもの﹂ という考え方だ。 このポ 1988 の 演 奏 の 如く協 和し、スムーズ なものづくりの 流 れ ま な 表 彰 に つ な が る だ け で な く 、川 崎 建設機械などに組み込まれ、 小さい力を大きい力に変える。 生 産 パートナーメーカ ーが 、あた か も オー ケストラ リシーによって作業の改善内容は広く Sys tem( BP S )」へ の 同 調 を求めました。世 界 中 の 重工のものづくりは大空の安全に貢献 純国産油圧ショベル初号機用に開発・採用されたのが 「 KVシリーズ」。使用圧力は21MPa 。当時の開発者は 「使い物になるまで1年かかり、アメリカのライバル品と 山梨県の河原で連続500時間の比較運転を行い、川崎 重工の油圧ポンプが採用された」 と振り返る。 は 生 産 現 場 に お け る「 B o e i n g P r o d u c t i o n 共 有 さ れ 、良 い 事 例 は ど ん ど ん 真 似 す ング 社は「 Working Together 」を掲げ、具体 的に 油圧機械産業の基礎と なった「KVシリーズ」 しているのである。 1968 る こ と が 奨 励 さ れ た。 例えば航空機は左 初代 モデル 東工場空撮 パートナー比 率 の 高 い 航 空 機です。このためボーイ 静 か に 稼 働 を 待 つ オ ートクレ ー ブ 。胴 体 の 長 い 「 7 8 7 - 1 0 型 」にも 対 応して いる の関係者や愛知県の大村知事が出席、中部地区の航 空宇宙産業の新たな一歩を祝いました。 ボーイング 787 の生産能力を増強するとともに、高 品質の製品提供を通じて本プロジェクトに貢献し、さ らには民間航空機事業の拡大を目指していきます。 Kawasaki News 178 08
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