5 相対性原理と物理の基本法則 - SPring-8 Accelerator

相対性原理と物理の基本法則
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5.1
Lorentz テンソル
相対論の要請を満たす物理法則は、Lorentz 変換に関する変換性が明確に
定義された Lorentz スカラーや Lorentz ベクトル、より一般に Lorentz テン
ソルを用いて書かれた共変な方程式(左辺と右辺が同じ変換性をもった方程
式)で表されなければならない。講義ではこの部分は省いたが、共変な微分
方程式に登場し得る座標微分の反変ベクトルと共変ベクトルを紹介した。さ
らに進むには、始めに参考書として紹介した風間氏の本を読んで欲しい。
5.2
電磁気学
講義ではこの部分は省いた。電磁場の Lorentz 変換と電磁気学の相対論的
な記述形式については、例えば、
Jackson, ”Classical Electrodynamics,” John Wiley, 1998
の相対論の部分に詳しく書かれてある。この本は大学院生向けの電磁気学の
教科書としてスタンダードとなっており、将来物理学に関わろうとする人に
は必読の書でもある。和訳もあるが、出来れば原著の方を読むべきである。
電磁場が一つの Lorentz テンソルにまとまってしまい、4つあった Maxwell
方程式がたった一つの方程式と電磁ポテンシャルの定義の中にまとまってし
まうことを学ぶのは、感動的な体験となるだろう。
5.3
量子力学の相対論化ー Dirac 方程式
エネルギーと運動量の非相対論的な関係 E = p2 /2m に基づく Schr¨
odinger
方程式では、電子等の(取り扱うエネルギーに比べて)軽くてすぐに運動が
相対論的になってしまう粒子の波動関数の記述が上手く出来ない。これを相
√
対論的な関係 E = p2 + m2 に対応するように拡張し、しかも線形な方程
式を得たのは、Dirac の天才のなせる業と言う他ない。講義では、Dirac 方程
式の導出のあらすじを紹介した。詳しくは、名著
J. D. Bjorken and S. D. Drell, ”Relativistic Quantum Mechanics,” McGrawHill, 1998
を読んで欲しい。Dirac 方程式は量子論的な解釈の上で不十分な点があるが、
相対論的量子場理論の中で新しい解釈が与えられ、現在でも基礎方程式の一
つとして使われている。
5.4
一般相対論について
特殊相対論が慣性系の間の変換だけを扱うのに対して、法則の一般座標変
換に対する共変性が要請される。これによって加速度系も同時に扱うことに
なるが、その際に、重力加速度と座標変換に伴ってあらわれる加速度の等価
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性が主張され、原理として採用することによって重力に関する Einstein 方程
式が導かれる。この講義では触れることが出来なかったが、多くの良書が出
版されており、自ら必要に応じてそれらを使って学習されることを希望する。
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