特殊相対論 テンソル演習問題(阪上)

特殊相対論 テンソル演習問題(阪上)
2016 年 11 月 30 日
[1]Lorentz 変換
Lorentz 変換
x′
µ
= aµν xν
(1)
ηµν = aαµ aβν ηαβ
は、
   
x0
ct
x1   x 
   
x =  2 =   ,
x   y 
x3
z

a00
a1

A =  20
a 0
a30
a01
a11
a21
a31
a02
a12
a22
a32
(2)

a03
a13 

,
2 
a 3
a33

−1
0

Y =
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
という行列表示を用いると、
x′
= Ax
(3)
Y
= AT Y A
(4)
と表せる。ただし、 AT は A の転置行列である。以下の設問に答えな
さい。
(a) x 方向への boost に対して変換行列 A を具体的に書き下し、さら
に (4) 式が成り立つことを示しなさい。
(b) z 軸回りの角度 θ の回転は


1
0
0
0
0 cos θ sin θ 0


A=

0 − sin θ cos θ 0
0
0
0
1
(5)
で与えられる。これが Lorentz 変換の条件 (4) をみたすことを示し
なさい。
(c) Lorentz 変換が群の性質をみたすことを示しなさい。

0
0


0
1
[2] Lorentz 逆変換
(a) Lorentz 変換 (1) の逆変換を xµ = (a−1 )µν x′ ν とすると
(a−1 )µν = ηνα aαβ η βµ
(6)
であることを確かめなさい。
(b) (a−1 )αµ (a−1 )βν ηαβ を計算し、計量テンソルが Lorentz 変換に対し
て不変であることを示しなさい。
(c) x方向の boost に対して (6) 式を具体的に計算し、逆変換になって
いることを確かめなさい。
[3] テンソル積と縮約
(a) 反変ベクトル B µ 、共変ベクトル Cµ は Lorentz 変換 x′ µ = aµν xν
に対して
µ
B ′ = aµν B ν , C ′ µ = (a−1 )νµ Cν
と変換する。テンソル積 B µ Cν が (1,1) テンソルとして変換するこ
とを示しなさい。
(b) 上のテンソルの縮約をとった B µ Cµ がスカラーとして変換すること
を示しなさい。
(c) 反変ベクトル B µ と計量テンソルから作られる Bµ = ηµν B ν が、共
変ベクトルであることを示しなさい。
(d) 座標ベクトル xµ = (ct, x, y, z) に対して上の(c)の操作で得られ
る共変ベクトル xµ = (− ct, x, y, z) が共変ベクトルの変換をするこ
とをx方向の boost について具体的に確かめなさい。
[4] 一般の方向への boost
3次元速度 v の方向への boost は

  
 
vx /c
βx
vx

  
 
v = vy  , β = βy  = vy /c ,
βz
vz /c
vz
β=
√
βx2 + βy2 + βz2 ,
T
(
)
β = βx βy βz
γ=√
1
1 − β2
をもちいて

A(β) = 
γ
−γβ

−γβ T

γ−1
T
1+
β
⊗
β
β2
(7)
という 4 × 4 行列表示で与えられる。ここで 1 は 3 × 3 単位行列、β ⊗ β T
は
 

βx
βx βx βx βy
(
)
 

T
β ⊗ β =  βy  ⊗ βx , β y , β z =  βy βx βy βy
βz
βz βx βz βy

βx βz

βy βz 
βz βz
で定義される 3 × 3 行列である。
 
β
 
(a) A(β) で β =  0  と置いたものが x 方向の boost になることを示
0
しなさい。
 
βx
 
(b) A(β) で β = βy  とした x-y 面内での boost を x 方向の boost
0
と z 軸まわりの回転 (5) から導きなさい。
(c) A(β) が Lorentz 変換の条件 (4) をみたすことを示しなさい。
(d) A(β) の逆変換を求めなさい。
[5] 電磁場テンソル

f µν

0
Ex /c Ey /c Ez /c
−E /c
0
Bz −By 


x
=

−Ey /c −Bz
0
Bx 
−Ez /c By −Bx
0
は (2,0) テンソルであることが知られている。ここで Ex , Ey , Ez 、Bx , By , Bz
は電場と磁場の各成分、c は光速度である。
(a) x方向の boost に対する電場と磁場の変換を具体的に求めなさい。
(b) 電荷を帯びた物体が私たちに対して x 方向に速度 v で等速運動し
ている。私たちの座標系を S 、物体の静止系を S’ 系と呼ぶことに
する。さて、電荷密度
ρ と電流密度の各成分 jx , jy , jz からなる4
 
cρ
j 
 x
元電流 j µ =   は反変ベクトルとして変換する。今の場合、
 jy 
jz
物体の静止系では電荷密度は ρ′ で与えられ、また電流密度はゼロ
であるが、S 系では電荷密度 ρ とともに 電流密度 jx も存在し
cρ′ = cγρ − βγjx
という関係にある。S’ 系でのガウスの法則
div′ E ′ =
ρ′
ϵo
を Lorentz 変換し S 系ではガウスの法則とともにアンペールの法則
rotB −
1 ∂E
= µ0 j
c2 ∂t
が成り立つことを示しなさい。
(注)アンペールの法則の x 成分だけで良い。また S 系でもガウ
スの法則が成立することは用いて良い。