序 この度,『CKD(慢性腎臓病)患者と感染コントロール』を,透析に従事する医師・看護師・ 臨床工学技士・栄養士の皆様のお手元に届けることが叶いました。 私が感染症に関わるようになったのは,現 日本腎臓財団理事長の浅野 泰先生(当時 自治医 科大学教授)から総務委員会感染対策小委員に任命されたのがきっかけです。平成6(1994)年 9月上旬から 10 月上旬にかけて,東京都新宿区の一通院透析施設で5名にB型肝炎が発症し, このうち4名が激症化して死亡するという院内感染事故が発生し,感染対策小委員会が調査に 入りました(浅野 泰 ほか:1 透析施設における劇症肝炎発生調査報告.透析会誌 28:843845,1995)。その後,院内感染防止の現況調査を行いました。さらに,厚生労働科学研究費補 助金を得て『透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル』の策定に 関わり,現在三回の改訂を繰り返し,透析室の院内感染マニュアルの底本として活用していた だいています。最近では,日本透析医会と日本透析医学会の合同で HIV 感染患者透析医療ガイ ドライン策定グループを組織して, 『HIV 感染患者透析医療ガイドライン』を作成・配布し, HIV 感染透析患者の透析医療の確保に向けて尽力しています。 このように,主として透析患者の院内感染症に関わってきましたが,今回,医薬ジャーナル 社の南 晃氏から, “CKD 患者の感染症の予防・診断・治療に関わる成書を作っては”との提案 をいただきました。近年,感染症の世界でも,医療・介護関連肺炎(NHCAP) (日本呼吸器学 会)などの医療機関での感染が話題になり,透析患者など感染弱者に対する感染の診断・治療 と予防についての知識をまとめてお届けする意義があるのではと考えました。 本書が,透析医療に従事する医師・看護師・臨床工学技士などのお役に立ち,透析患者への 感染症治療と予防の質を確保できるとすれば,編者として望外の喜びです。 2012 年 11 月 米国腎臓学会(サンディエゴ)にて 東京女子医科大学腎臓病総合医療センター 血液浄化療法科教授 秋葉 隆
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