「難治性冠攣縮性狭心症の一例」 富山労災病院 内科 志田拓也 難治性冠攣縮性狭心症の診断は 2 種類の冠拡張薬を投与しても狭心 発作をコントロールできないものと循環器ガイドラインで定義され ており、冠攣縮狭心症の 13.7%が難治性であるという報告がある。 今回、一過性であると思われるが、治療に難渋し、軽度の心筋梗塞 にまで至った症例を経験したため報告させて頂いた。 症例は 43 歳女性、2008 年(39 歳)の時に冠攣縮性狭心症による 急性心筋梗塞を発症し当科外来管理となっていた。冠血管拡張薬はペニジピン 8mg のみ内 服していた。2012 年 2 月 13 日はいつもどおりの仕事を行い、仕事中に断続的に同様の胸 部不快感を自覚した。夕方仕事から帰宅後、強い胸痛となり当院受診した。心電図所見か ら急性心筋梗塞と考えられたが、心電図での変化は前回発作時と同様であり、病歴から冠 攣縮性狭心症の発作と診断した。硝酸薬の経口投与、静脈注射で初期対応を行うも、症状 のコントロールが困難であり、心電図所見も改善を認めないことから緊急冠動脈造影を行 い、左前下行枝末梢の閉塞を認めた(図 1) 。硝酸薬等の薬剤(ニトログリセリン、ニコラ ンジル)を冠注するも閉塞は解除できず、最終的に再灌流を得られず終了した(図 2) 。入 院翌日には胸部症状は消失したが CPK 825 まで上昇を認め、心エコー上も冠動脈閉塞部位 に一致した部位での壁運動低下を認めた。退院前での確認冠動脈造影では異常所見は認め なかった(図 3) 。 冠攣縮性狭心症の病因として、特に重要なものは喫煙があげられ、他に飲酒、高血圧、脂 質異常、糖尿病、肥満、過労、ストレスがある。この症例では過労、ストレスが発症に関 与していた可能性があった。治療薬剤はもともとのペニジピンに循環器ガイドラインでク ラスⅡa に分類されるニトログリセリン、シグマートを加え、さらにクラスⅡb に分類され るビタミン E を追加投与した。その後発作なく経過している。 (図1) (図 2) (図 3)
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