卵巣癌の特徴と診断/産婦人科主任部長 高橋晃 - 倉敷中央病院

第1回地域がん診療拠点病院
医療従事者研修会
卵巣癌の特徴と診断
倉敷中央病院 産婦人科
高橋 晃
骨盤腔
子宮・卵巣・卵管
卵巣の模式図
卵巣癌の特徴
• あらゆる年代に発症する
• 種類が多様である
発生母体が多様である
悪性度が多様である
• 早期発見が困難である
癌検診の実施が不可能である
進行するまで症状の発現が少ない
卵巣腫瘍の年齢別発症頻度
30
25
20
例 15
10
5
0
20∼ 25∼ 30∼ 35∼ 40∼ 45∼ 50∼ 55∼ 60∼ 65∼ 70∼ 75∼
年齢
卵巣癌の年齢分布
25
20
15
中間悪性
悪性
10
5
0
20歳以下
21∼30歳
31∼40歳
41∼50歳
51∼60歳
61∼70歳
71歳以上
1998∼2003年
90例
1.卵巣癌はあらゆる年代に発症する
• 卵巣癌は若年にも発症する
術式の選択
使用する抗癌剤の卵に対する影響
→ 卵巣機能の欠落が生じる
QOLに対する配慮
→ 妊孕力の温存が必要な症例がある
卵巣の構造
卵巣腫瘍の臨床病理学的分類
表層上皮性
間質性腫瘍
性索間質性
腫瘍
胚細胞腫瘍
その他
良性
漿液性嚢胞腺腫
粘液性嚢胞腺腫
・
・
莢膜細胞腫
線維腫
・
皮様嚢胞腫
成熟充実奇形腫
・
・
腺腫様腫瘍
・
境界悪性腫瘍
漿液性嚢胞性腫瘍
粘液性嚢胞性腫瘍
・
・
顆粒膜細胞腫
・
・
未熟奇形腫
(G1/G2)
カルチノイド
・
線維芽腫
・
悪性腫瘍
漿液性腺癌
粘液性腺癌
・
・
線維肉腫
・
・
未熟奇形腫
(G3)
未分化胚細胞腫
・
癌腫
・
(日本産科婦人科学会)
2.卵巣癌は種類が多様である
• 卵巣腫瘍の発生母地が多様である
→ 卵巣癌の種類が多様となる
悪性度が異なる
抗癌剤の感受性が異なる
卵巣癌の国際進行期分類
(FIGO1988)
Ⅰ期 卵巣内限局発育
Ⅰa期 一側の卵巣に限局するもの
Ⅰb期 両側の卵巣に限局するもの
Ⅰc期 卵巣に限局するが、皮膜破綻がある/腹水細胞診で悪性細胞が認められるもの
Ⅱ期 骨盤内への進展
Ⅱa期 子宮・卵管に進展/転移を認めるもの
Ⅱb期 他の骨盤内臓器に進展するもの
Ⅱc期 腫瘍発育がⅡa期・Ⅱb期で、皮膜破綻がある/腹水細胞診で悪性細胞が認められるもの
Ⅲ期 腹腔内への進展
Ⅲa期 腫瘍は骨盤腔内に限局しているが腹膜表面に顕微鏡学的転移を認めるもの
Ⅲb期 直径2cm以下の腹腔内播種を認めるもの
Ⅲc期 直径2cmを超える腹腔内播種認める/後腹膜または鼠径リンパ節に転移を認めるもの
Ⅳ期 遠隔転移を伴うもの
胸水が存在する場合は、胸水中に悪性細胞を見とめること
肝実質への転移はⅣ期とする
卵巣癌のTNM分類
T:原発腫瘍の進展度
T1 卵巣内限局発育
T1a 一側の卵巣に限局
T1b 両側の卵巣に限局
T1c 卵巣に限局するが、皮膜破綻/腹水細胞診で悪性細胞を認める
T2 骨盤内への進展
T2a 子宮・卵管に進展・転移
T2b 他の骨盤内臓器に進展
T2c T2で皮膜破綻/腹水細胞診で悪性細胞を認める
T3 骨盤外への進展
T3a 小骨盤内に限局し、腹膜表面に顕微鏡的播種を認める
T3b 直系2cm以下の腹腔内播種を認める
T3c 直径2cmを超える腹腔内播種を認める
N:所属リンパ節転移の有無
N0 所属リンパ節に転移を認めない
N1 所属リンパ節に転移を認める
M:遠隔転移の有無
M0 遠隔転移を認めない
M1 遠隔転移を認める
卵巣癌
進行期分類
卵巣癌の進行期内訳
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
中間悪性
悪性
I期
II期
III期
IV期
1998∼2003年
90例
3.卵巣癌は早期発見が困難である
• 癌検診の実施が不可能である
→ 開腹するまで良性・悪性の診断が付かない
手術時の迅速病理検査が必須
卵巣腫瘍では常に悪性に対する準備が必要
進行するまで症状の発現が少ない
→ 初期で発見されるのは他の検診時が多い
→ 症状が発現したときには進行癌となっている症
例が多い
卵巣癌模式図
卵巣癌の診断法
• 内診・外診
• 画像診断
超音波断層法
CT
MRI
その他:Gaシンチ、胸部単純XP
• 腫瘍マーカー
表層上皮性卵巣癌関連した腫瘍マーカー:CA125・CA19-9・CA72-4・STN
胚細胞腫瘍に関連した腫瘍マーカー:AFP・hCG・LDH・ALP
ホルモン産生腫瘍に関連した物質:hCG・estrogen・androgen
組織診・細胞診
(内視鏡)
卵巣癌の治療法
¶ 卵巣癌の治療には、様々な治療法を組み合わせた集約的
治療が必要である
1.手術療法
2.化学療法
3.放射線療法
4.免疫療法
卵巣癌の手術療法
• 根治手術
• 保存手術 :子宮、対側卵巣を温存する(妊孕力の保持のため)
• 試験開腹術
• 第2次腫瘍縮小手術(secondary debulking)
:
初回手術が試験開腹術に終わった症例で化学療法の効果が見られた場
合に再手術を行う
• (SLO) second look operation
試験開腹術
化学療法
腹腔内投与
全身投与
腫瘍塊を取り除き
化学療法
SLO
腫瘍塊を残したまま
化学療法
(放射線療法)
再開腹術
試験開腹術
Second debulking
surgery
卵巣癌の化学療法
• 術前化学療法
:進行癌症例で手術前に行うもの
• 寛解導入化学療法
:手術が不可能/不十分だった症例で
行うもの
• 補助化学療法
:手術の後に行うもの
• 維持化学療法
:再発予防のためにcyclicに行うもの
卵巣癌に用いる抗癌剤
•
•
•
•
•
•
•
CAP (CDDP+ADM系+CPM)
IAP (IFO+ADM系+CDDP)
EP (CDDP+VP-16)
TJ (Paclitaxel+CBDCA)
DJ (Docetaxel+CBDCA)
CPT-11+MMC
BVP (Bleo+Vinblastine+CDDP)
抗癌剤の投与法
• 全身投与法
緩解導入・補助化学療法
周期的投与法
補助化学療法として数カ月ごとに反復する
QOLに注意して行う
大量化学療法
末梢血幹細胞移植を併用する
• 腹腔内投与法
腹腔内局所濃度が高い
腹膜より吸収された薬剤は体循環に入る
副作用が少ない
卵巣癌研究 JGOG3014
• 卵巣明細胞腺癌に対する
初回化学療法としての
TJ(Paclitaxel+Carboplatin)療法と
CPT-11/CDDP併用療法の
無作為比較試験
(婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構)
卵巣癌研究 JGOG3015
• Paclitaxel/Carboplatin併用化学療法(TJ療法)/
Paclitaxel/Cisplatin併用化学療法(TP療法)に
耐性卵巣癌を対象とした
CPT-11/Docetaxel併用化学療法の
有効性および安全性に関する検討
(婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構)
卵巣癌研究 JGOG3016
• StageⅡ~IV Mullelian Carcinoma(上皮性卵巣
癌、卵管癌、腹膜癌)に対する
Conventional TJ(Paclitaxel+Carboplatin)と
Dose-Dense TJ(weekly Paclitaxel+Carboplatin)
のRandamized Phase III Trial
(婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構)
子宮体癌研究 JGOG2041
• 進行・再発子宮体癌における
DP(Docetaxel+Cisplatin)、
DJ(Docetaxel+Carboplatin)、
TJ(Paclitaxel+Carboplatin)の
Randamized Phase Ⅱ Trial
(婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構)
卵巣癌の治療成績
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
100 100
81.3 80
3年生存率
5年生存率
47.5
37.5
13.313.3
I期
II期
III期
IV期
1989~1999
133例
卵巣癌 5年生存率の変遷
100
100
80
92.6
80
60
40
68.8
20
0
37.5
54.5
26.3
33.3
I期
13.3
II期
0
III期
0
0
IV期
1989∼
1982∼
1972∼
1972∼
1982∼
1989∼
卵巣癌治療の問題点
• 早期発見をいかに行うか
有効な卵巣癌検診が困難(細胞採取が不可能)
症状と病態が一致しない
ほとんどの症例で無症状(出血、疼痛がない)
卵巣腫大が悪性度、進行度と一致しない
normalsized ovary syndrome など
• 長期生存率をいかに確保するか
新しい抗癌剤は5年生存率は改善したが、10年生存率の改善度は
低い
卵巣癌の治療成績
100 100 100100
90
81.3 80
80
70
55.6
60
50
40
30
20
10
0
I期
II期
3年生存率
5年生存率
10年生存率
47.5
37.5
15.6 13.3 13.3
0
III期
IV期
1989~1999
133例