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論文内容要旨(乙)
論文題名
高齢者小細胞肺癌に対する carboplatin、irrinotecan 併用第 II 相試験
掲載雑誌名
EUROPEAN JOURNAL OF CANCER(Vol.47 No.9 P1336-1342 2011 年)
内科学講座
呼吸器・アレルギー内科部門
村田泰規
内容要旨
【背景と目的】小細胞肺癌の約 30%が 70 歳以上の高齢者であり、現在の
ところ高齢者小細胞肺癌に対する標準治療はない。Irinotecan 単剤で再
発小細胞肺癌に対して 47%の奏功率を示し 70 歳以下の未治療 ED 小細胞癌
で cisplatin+irinotecan は標準治療の一つとなっている。Carboplatin
は cisplatin より毒性が軽減されているため、高齢者に投与しやすく
Carboplatin と irinotecan は相乗効果を示すとされている。そこで高齢
者小細胞肺癌症例に対する carboplatin と irinotecan 併用療法の有効性
と安全性を検討することとした。
【対象と方法】2005 年 10 月から 2009 年 11 月までに当院において
carboplatin と irinotecan を投与した前治療歴のない 70 歳以上の小細胞
肺癌患者 30 例を対象とした。carboplatin は day1 に AUC=5 で irinotecan
は day1 と day8 に 50mg/m2 で投与し、21 日を1サイクルとして 3〜4コー
ス投与した。年齢中央値は 76 才(70-86)。臨床病期は ED が 21 例、LD が 9
例。PS(performance status)は 0 が 2 例、1 が 25 例、2 が 3 例であった。
全体の 86%が何らかの合併症を有しており、慢性閉塞性肺疾患、高血圧、
糖尿病が多かった。
【結果】効果は CR が 6 例、PR が 19 例、SD が 0 例、PD が 3 例であった。
全体の奏功率は 83%で生存期間中央値は 16.3 ヶ月、無増悪期間中央値 8.3
ヶ月であった。ED の奏功率は 81%で生存期間中央値は 14.6 ヶ月、無増悪
期間中央値 7.1 ヶ月であった。LD の奏功率は 89%で生存期間中央値は 19.8
ヶ月、無増悪期間中央値 11.8 ヶ月であった。Grade 3 以上の血液毒性は
白血球減少が 43%、好中球減少が 83%、血小板減少が 46%、貧血が 60%だ
った。Grade 3 以上の非血液毒性は感染が 23%、下痢が 20%、低 K 血症、
全身倦怠感が 7%、嘔気、Cr 上昇、Bill 上昇、低 Na 血症が 3%認められた。
薬剤性肺炎及び治療関連死は認めなかった。高齢者に対して認容性は十分
であり、かつ効果も高齢者を対象とした他の臨床試験と比べても遜色ない
結果であった。
【結語】高齢者小細胞肺癌に対して irinotecan,carboplatin 併用療法は
有効であり、かつ安全に投与することができた。