CPT-11 の下痢に対する対症療法

CPT-11 の下痢に対する対症療法
CPT-11 の下痢は、発現機序から“早期性”と“遅発性”の2つのタイプが考えられる。投与後は便の性
状、排便回数の増加. 腹痛の有無などに十分に注意するとともに、下痢が発現した場合は症状により適切
な処置を行う必要がある。(以下参照)
[下痢に対する一般的な処置法]
下痢の症状
早期性
軟便、排便回数
の増加
副作用の程度
軟便、軽度の腹痛、
排便回数の増加:2∼3 回/日 抗コリン剤の投与
(Grade 1)
軟便、水様便、 水様便、夜間便、腹痛、
遅発性
腹痛、排便回数 排便回数の増加:4∼9 回/日
の増加
血便、排便回数
の増加
処置法
(Grade 2.3)
血性下痢、脱水、電解質異常、
排便回数の増加:10 回/日以上
(Grade 4)
① 経過観察
② 塩酸ロペラミドの投与
① 直ちに本剤の中止または延期
② 十分な補液管理
[その他の下痢対策]
1. 半夏瀉心湯による予防投与 [坂田 優:Progress in Medicine, 18(4), 774, 1998]
[方
法]
CPT-11 投与 3 日前から、半夏瀉心湯 1 日 7.5g(分 3)を経口投与
2. 高用量ロペラミド療法[Dany Abigerges et al: J Natl. Cancer Inst., 86(6), 446, 1994]
[方
法]
CPT-11 投与後 12 時間以降に発現した下痢に対して、塩基ロペラミドを最初 4 ㎎を経口
投与し、その後 2 ㎎を 2 時間毎(夜間は 4 ㎎を 4 時間毎)に 12 時間後まで経口投与
3. 経口アルカリ化による副作用対策[Kobayashi Kunihiko: Proc. ASCO 18: 492a #1900,1999]
[対
象]
1. CPT-11 および副作用対策レジメンの各薬剤の適応で禁忌でない患者
2. 副作用対策レジメンの Na および水分負荷に耐えられる患者(心不全, 腎機能障害剤は除外)
3. 疼痛で麻薬を使用している患者では、疼痛コントロールが可能(麻薬の増量を必要としない)か
つ便通コントロール(1 日 1 回以上)がなされている患者
4.間質性肺炎のない患者
[処
方]
投与方法: CPT-11 投与日より 4 日間連日投与
経口 5-HT3 受容体拮抗剤
1T
1x (朝)
[吐気を抑え食事摂取を可能にする]
メトクロプラミド
3T
3x
[腸管運動を促進する]
炭酸水素ナトリウム(重曹)
1.8g
3x(食管)
[腸管内のアルカリ化]
酸化マグネシウム(カマグ)
2.0g
3x
[重曹による便秘対策]
ウルソデスオキシコール(UDCA)
300 ㎎
3x
[胆汁中アルカリ化と SN-38Glu の維持]
アルカリ飲料水(pH 7 以上)の飲用
1000∼1500ml/日(200∼250ml を1日6回
※アルカリ飲料水は市販の 1.5Lペットボトル(Evian, Volvic あるいは pH 7 以上のアルカリ水)
副作用に対する注意事項
(1) 予防
・禁 忌 の 他 、 投 与 当 日 に 食 欲 不 振 や 腹 痛 が あ る 場 合 は 投 与 を せ ず 様 子 を み る 。
・PS≧ 2、 腹 部 に 放 射 線 を 照 射 し て い る 患 者 で は 、 下 痢 発 現 の 頻 度 、 程 度 が 高 く な る
ので投与後一層の注意を必要とする。
・カ ン プ ト 注 は 、 胆 汁 を 介 し て の 糞 中 排 泄 型 の 薬 剤 で あ る こ と か ら 排 泄 遅 滞 に 注 意
する。
◎ 悪 心 ・嘔 吐 や 食 欲 不 振 で 、 投 与 当 日 ∼ 3 日 間 食 事 が と れ な い 状 況 に な ら な い よ う
に 注 意 す る 。 摂 食 の な い 場 合 は 経 口 か ら の 水 分 補 給 ( 目 安 と し て 500 ∼
1000ml/日 )に 努 め る 。
◎ カ ン プ ト 注 投 与 後 、 特 に 2∼ 3 日 目 に 排 便 が あ る こ と を 確 認 し 、 無 い 場 合 は 、 カ
マ( 1 日 1.5∼ 3.0g を 食 前 or 食 後 3 回 に 分 服 、ま た は 就 寝 前 に 1 回 服 用 : 塩 類 下
剤)などを用いて投与後 3 日間までは強制的に排便を促す。
(2)治療
◎ 早 期 性 の 下 痢( 投 与 後 24 時 間 以 内 に 発 現 し た 下 痢 /コ リ ナ ー ジ ッ ク 様 症 状 を 伴 う 下 痢 )
・副 交 感 神 経 遮 断 薬 ( ブ ス コ パ ン 1A ) な ど に よ り 対 処 す る 。
◎ 遅 発 性 の 下 痢 ( 投 与 後 24 時 間 以 降 に 発 現 し た 下 痢 : 水 様 便 )
※ 通常量ロペラミド療法
・予 防 と し て こ の 療 法 は 絶 対 に 用 い な い 。
・最 初 の 下 痢 ( 水 様 便 ) が 認 め ら れ た 時 点 で ロ ペ ラ ミ ド 1cap を 経 口 投 与 し 、 様 子 を
みる。
・経 口 か ら ミ ネ ラ ル ウ ォ ー タ ー な ど を 多 量 に 摂 取 す る よ う に 努 め る 。
・継 続 す る と 思 わ れ る 2 回 目 の 下 痢 ( 水 様 便 ) が 認 め ら れ た 時 点 で 、
■ ロ ペ ラ ミ ド 2cap 分 2( 朝 ・就 寝 前 )
・加 え て 以 下 の 場 合 に は 広 域 ス ペ ク ト ラ ム の 抗 菌 剤 を 予 防 の た め 服 用 す る 。
Ⅰ )Grade 4 の 下 痢 に 発 展 し た 場 合
Ⅱ )発 熱 ま た は grade3-4 の 好 中 球 減 少 を 伴 う 下 痢 の 場 合
Ⅲ )48 時 間 以 上 下 痢 が 継 続 す る 場 合
※ 通 常 量 ロ ペ ラ ミ ド 療 法 中 止 ・終 了
・ 最 後 に 確 認 さ れ た 下 痢 か ら 12 時 間 下 痢 の 症 状 が な い 期 間 が 確 認 し た 段 階 で こ の 処
方を終了する。
・ ま た ロ ペ ラ ミ ド に よ る イ レ ウ ス 様 症 状 ( 著 し い 便 秘 ) な ど を 考 慮 し 、 48 時 間 ( ロ
ペ ラ ミ ド と し て 5cap ま で ) 下 痢 が 継 続 す る 場 合 は 中 止 す る 。
・悪 心 / 嘔 吐 を 伴 う 下 痢 の 場 合 は 中 止 す る 。 (経 口 か ら の 水 分 補 給 が で き な い / ロ ペ ラ ミ
ドなどが飲めない)
その後の下痢に対しては、乳酸菌製剤、収斂剤、吸着剤などを適宜使用し症状の
重篤化を防止する。
上 記 に よ る 対 処 療 法 に 加 え て 、 十 分 な 輸 液 お よ び 絶 食 ・ IVH 管 理 な ど は 必 要 に 応 じ て
早期に判断し行う。