大学院高度化推進特別経費 - 立教大学

※ ホームページ等で公表します。
(様式1)
立教SFR-在外-報告
立教大学学術推進特別重点資金(立教SFR)
在外研究
2013年度研究成果報告書
所属・職名
研究代表者
氏 名
文学部・教授
久保田
浩
印
研究課題
日欧における民族主義宗教運動とスピリチュアリズムとの連関に関する宗
教史的研究
研修期間
2013 年
4 月
年度経費
経
費
主な滞在国
及び
研究機関名
1 日
~
2013 年
SFR 助 成 額
9 月
1 8 日(
所属学部からの
補助額
171 日 間 )
合
計
2012 年 度
1,023,670 円
1,000,000 円
2,023,670 円
2013 年 度
479,294 円
1,000,000 円
1,479,294 円
国
名
研究機関名
ドイツ連邦共和
ヨ ハ ン ・ ヴ ォ ル フ ガ ン ク ・ ゲ ー テ( フ ラ ン ク フ ル ト )大 学
国
研究成果の概要 (図・グラフは使用しないこと)
本 研 究 の 前 提 と し て 、1 9 世 紀 中 葉 か ら 第 二 次 世 界 大 戦 終 結 に 至 る ま で の ヨ ー ロ ッ パ 特 に ド イ ツ の 民
族 ( 至 上 ) 主 義 宗 教 ( völkische Religion) 運 動 と 、 同 時 期 に ヨ ー ロ ッ パ 全 土 を 席 巻 し た 所 謂 近 代
ス ピ リ チ ュ ア リ ズ ム 運 動 と い う 、二 つ の「 近 代 的 」宗 教 運 動 の 同 時 代 性 へ の 着 眼 が あ っ た 。そ こ で 、
「西洋近代」に誕生したこれらの「宗教」形態と、それが近代化を図る日本において如何に受容さ
れ て い っ た か を 分 析 す る こ と を 通 じ て 、「 宗 教 」 = 「 前 近 代 」、 と い う 図 式 を 検 討 し 、「 近 代 」 の 多
様 な 姿 の 一 端 に 光 を 当 て る こ と を 目 指 し た 。 換 言 す れ ば 、 伝 統 的 (「 前 近 代 的 」) 宗 教 性 を 代 替 あ る
い は 刷 新 (「 近 代 化 」) す る こ と を 目 的 と し た 「 近 代 的 」 諸 宗 教 的 ・ 文 化 的 運 動 に 見 ら れ る 「 近 代 」
の ね じ れ を 描 き 出 す こ と が 試 み ら れ た 。 こ う し た 「 近 代 」 の ね じ れ に つ い て は 20 世 紀 末 、 特 に 今
世 紀 に 入 っ て か ら 文 学 研 究 の 枠 内 で 徐 々 に 事 例 研 究 が 進 め ら れ( 例 え ば 、ニ ュ ー・ヒ ス ト リ シ ズ ム )、
また歴史社会学的にも、一枚岩ではない「近代」のモデル(例えば、S・N・アイゼンシュタット
の “ multiple modernities“ ) 等 に よ っ て 示 唆 さ れ て き た も の で あ る が 、 こ れ ま で 着 目 さ れ て こ な
かった民族主義宗教運動とスピリチュアリズム運動との連関を軸に、こうしたねじれの具体的様相
を 改 め て 描 き 出 す こ と を 目 指 し た の が 本 研 究 で あ っ た 。 2013 年 度 は 、 2012 年 度 内 の 研 究 を 継 続 し
た も の で あ る の で 、 以 下 で は 2012 年 度 の 研 究 成 果 と 関 連 さ せ な が ら 2013 年 度 に つ い て 記 述 す る 。
本研究の主要な研究対象は第一に、ヨーロッパ近代スピリチュアリズムの日本での受容(特に、浅
野 和 三 郎 )、 更 に は 日 本 の ス ピ リ チ ュ ア リ ズ ム 的 宗 教 ( 特 に 、 浅 野 和 三 郎 と 出 口 王 仁 三 郎 を 中 心 と
した大本=人類愛善会)のヨーロッパにおける活動(ヨーロッパのスピリチュアリズム諸団体との
交 流 と 協 力 関 係 )を 資 料 に 基 づ い て 明 ら か に す る こ と で あ っ た 。そ こ で 、2012 年 度 中 に 浅 野 和 三 郎
と 元 東 京 帝 国 大 学 心 理 学 助 教 授 の 福 来 友 吉 ( 所 謂 「 念 写 」 の 発 見 者 ) の 遺 し た 資 料 ( 二 人 は 1920
年 代 に 渡 欧 し 、 心 霊 研 究 者 と 交 流 し て い る )、 ま た 2 0 1 3 年 度 に は 、 大 本 が 積 極 的 に 交 流 を 図 っ た ス
ピリチュアリズム団体(ドイツ、スイスの白旗団
Weiße Fahne 、 ブ ル ガ リ ア の 白 色 同 盟 White
Fraternity) に 関 連 す る 資 料 の 蒐 集 と 分 析 を 行 っ た 。 本 研 究 の 第 二 の ト ピ ッ ク で あ る 、 ド イ ツ に お
け る 民 族 主 義 的 宗 教 運 動 と ス ピ リ チ ュ ア リ ズ ム と の 歴 史 的 連 関 に つ い て は 、 2 0 1 2 年 度 は 、「 心 霊 キ
リ ス ト 教 Geistchristentum」 を 説 く 反 ユ ダ ヤ 主 義 的 な 民 族 主 義 宗 教 者 Artur Dinter の 小 説 を そ の
政 治 史 的 ・ 宗 教 史 的 文 脈 に お い て 考 察 し 、 彼 の 反 ユ ダ ヤ 主 義 思 想 を 、「 近 代 的 宗 教 」 即 ち 「 近 代 学
問 化 し た 宗 教 」 と し て 特 徴 づ け 、 そ の 「( ス ピ リ チ ュ ア リ ス ト 的 ) 宗 教 」 と 「( 政 治 的 ) 民 族 ( 至 上 )
※ ホームページ等で公表します。
(様式2)
立教SFR-在外-報告
研究成果の概要 (つづき)
主 義 」 と 「( 通 俗 化 し た ) 学 問 」 と の 錯 綜 し た 関 係 を 解 明 し た 。 そ し て 2 0 1 3 年 度 は 、 D i n t e r と ス ピ リ
チ ュ ア リ ズ ム ・ 民 族 主 義 と い う 点 で 類 似 の 思 想 を 展 開 し て い た ウ ィ ー ン 大 学 の 新 約 聖 書 学 者 Richard
A d o l f H o f f m a n n の 学 問 的 著 作 の 中 に 見 ら れ る ス ピ リ チ ュ ア リ ズ ム の 位 置 づ け と 民 族 主 義 的 宗 教 性(「 ド
イツ民族のための宗教」の確立の試み)を分析した。以上の研究内容が示唆しているように、民族主
義宗教運動とスピリチュアリズム双方の「近代」との連関の解明、つまり上述の「近代」のねじれを
明らかにするには、これらの宗教運動が自任する「近代的学問」性を分析することが不可欠であり、
「 近 代 」 と 「 宗 教 」 と 「 学 問 」、 と い う 三 項 の 相 互 連 関 の 解 明 が 本 研 究 の 枠 組 み で あ っ た 。 具 体 的 な 成
果 は 以 下 の と お り で あ る 。「 宗 教 」 と 「 学 問 」 と の 関 係 に つ い て は 、 一 方 で 「( ス ピ リ チ ュ ア リ ス ト 的 )
宗 教 」( = 「 学 問 」 を 自 任 す る 「 宗 教 」) と 「 近 代 的 学 問 」 と の 決 裂 が も た ら さ れ る 場 合 ( 後 期 福 来 の
「 念 写 」 実 験 に 見 ら れ る 、「 宗 教 」 化 し て い く 「 学 問 」 性 と 、 W u n d t に 代 表 さ れ る よ う な 、「 近 代 」 社
会 に 即 応 し て 体 制 化 し て い く 「 学 問 ( 心 理 学 )」 性 と の 分 離 。 後 者 が 前 者 を 体 制 内 か ら 駆 逐 す る こ と に
よ っ て 、 い わ ゆ る 「 近 代 的 学 問 」 の 輪 郭 が 明 瞭 と な っ て い く )、 他 方 で 両 者 の 融 合 が も た ら さ れ る 場 合
( 浅 野 、後 期 福 来 の 、「 西 洋 近 代 的 学 問 」と い う 自 己 理 解 を 有 す る ス ピ リ チ ュ ア リ ズ ム = 体 制 化 し た「 学
問 」 の 外 部 の 「 学 問 」)、 と い う 、 少 な く と も 二 つ の 方 向 性 が 、「 近 代 的 学 問 」 の 揺 籃 期 に あ っ た 西 洋 に
お い て も 確 認 さ れ る こ と と な っ た 。 こ う し て 、 日 本 の み な ら ず ヨ ー ロ ッ パ 自 体 に お い て も 、「 学 問 」 と
「宗教」双方の関係の揺れが如実に認められ、こうした揺れこそが「近代」を特徴づけていることが
事例的に明らかとなった。以上のように、西洋における「近代的学問」の成立と確立を歴史的に再検
討するには、この二つの宗教運動に見られる「学問的」自己意識が格好の素材を提供していること、
並びに、反ユダヤ主義的な民族(至上)主義的言説は、政治運動としてのナチズムに収斂していくよ
うな政治言説としてのみならず、当時の社会の文化言説(とりわけ、宗教的かつ学問的言説)として
も 、「 近 代 」 の 揺 れ ・ 多 面 体 的 性 格 を 示 し て い る こ と 、 こ れ ら が 明 ら か に な っ た と 言 え る 。
キーワード(研究内容を適確に表しているものを5項目で記入)
〔スピリチュアリズム〕
〔近代ヨーロッパ宗教史〕
〔民族主義〕
〔学問史〕
〔反ユダヤ主義〕
研究発表(研究によって得られた研究経過・成果を発表した①~④について、該当するものを記入してください。該当するものが多い
場合は主要なものを抜粋してください。
)
①雑誌論文(著者名、論文標題、雑誌名、巻号、発行年、ページ)
②図書(著者名、出版社、書名、発行年、総ページ数)
③シンポジウム・公開講演会等の開催(会名、開催日、開催場所)
④その他(学会発表、研究報告書の印刷等)
①久保田浩(単著論文)「境域への眼差しとしての近代ドイツ宗教史-「キリスト教」「ユダヤ教」
「ドイツ宗教」の隙間」、『ユダヤ教とキリスト教
日本基督教学会北海道支部公開シンポジウム記
録 』 第 2 号 、 2013 年 、 38-66 頁 。
久保田浩(単著論文)「ドイツ連邦共和国における「宗教学」の制度化を巡る諸問題」、『宗教学年
報 』 、 Ⅹ Ⅹ Ⅹ ( 特 別 号 ) 、 2013 年 、 139- 158 頁 。
② 久 保 田 浩 ( 編 著 書 ) 、 リ ト ン 、 『 文 化 接 触 の 創 造 力 』 、 2013 年 、 272 頁 。
( 久 保 田 浩 「 <文 化 間 >へ の 視 座 」 、 1- 14 頁 。 久 保 田 浩 「 「 反 ユ ダ ヤ 主 義 」 の 誕 生 ― ア ル ト ゥ ー ア ・
デ ィ ン タ ー の 小 説 に お け る 知 の 生 産 」 、 175-203 頁 。
久 保 田 浩 ( 編 著 書 )、 丸 善 、『 世 界 宗 教 百 科 事 典 』、 2 0 1 2 年 、 9 1 2 頁 。
③ Hiroshi Kubota ( 招 待 講 演 ) „ Der Spiritismus als Gegenstand religionswissenschaft licher
F o r s c h u n g “ , U n i v e r s i t ä t F r a n k f u r t a m M a i n , 0 6 . D e z e m b e r 2 0 1 2 . (「 宗 教 学 的 研 究 の 対 象 と し て
の ス ピ リ テ ィ ズ ム 」、 2 0 1 2 年 1 2 月 6 日 、 フ ラ ン ク フ ル ト 大 学 )
H i r o s h i K u b o t a( 招 待 講 演 、テ ュ ー ビ ン ゲ ン 大 学 研 究 プ ロ ジ ェ ク ト H e i l i g e T e x t e . S a k r a l i s i e r u n g d e r
L i t e r a t u r u n d L i t e r a l i s i e r u n g d e r R e l i g i o n( 聖 典 ― 文 書 の 聖 化 と 宗 教 の 文 書 化 ) 主 催 公 開 講 演 会 ) :
„ Der
„ moderne“
Spiritismus
Europas
und
die
„ Moderne“
Japans
–
Eine
w i s s e n s c h a f t s g e s c h i c h t l i c h e B e t r a c h t u n g – “ , U n i v e r s i t ä t T ü b i n g e n , 2 7 . J u n i 2 0 1 3 . (「 ヨ ー ロ
ッ パ の 「 近 代 的 」 ス ピ リ テ ィ ズ ム と 日 本 の 「 近 代 」、 2 0 1 3 年 6 月 2 7 日 、 テ ュ ー ビ ン ゲ ン 大 学 」)
※この(様式2)に記入の、成果の公表を見合わせる必要がある場合は、その理由及び差し控え期間等
を記入した調書(A4縦型横書き1枚・自由様式)を添付すること。