駐禁除外標章に関する要望書 - So-net

平成 18 年 9 月 26 日
警察庁長官
漆間 巌 殿
財団法人
いしずえ
理事長
中川久嗣
先天性四肢障害児父母の会
代表
行川信二
要望書(案)
平成 18 年 6 月 1 日施行の改正道路交通法による、放置駐車違反車両の取り締まり強化を契機に、
財団法人いしずえ及び先天性四肢障害児父母の会は、上肢障害者にとって重要な移動と交通の手
段である自動車の運転環境向上を求め、次の通り要望いたします。
要望事項
1.上肢機能障害を有し、身体障害等級 1 級、2 級または 3 級の身体障害者手帳を保有するもの
が運転する自動車については駐車違反除外とし、駐車禁止等除外標章を交付すること。
2.駐車禁止等除外標章交付の判断基準及び目的を明確にし、制度の地域格差を是正すること。
3.手を使わない料金収受機能を備えた駐車設備の開発及び普及を促進すること。
要望理由
財団法人いしずえ(サリドマイド福祉センター)は 1974 年 12 月に薬害サリドマイド裁判和解
確認書に基づき設立された、サリドマイド被害者のための福祉センターです。わが国のサリドマ
イド被害認定者数は 309 名でこの内 80%が上肢に障害を持っております。
先天性四肢障害児父母の会は 1975 年 8 月に発足し、現在会員数は 1200 家族です。手や足、耳
などに障害を持って生まれた子どもたちが、どのような差別をも受けることなく、のびのびと生
きてゆける社会を創ることを目指して活動しております。
上肢障害者には荷物を持つことが困難な人や雨天時に雨具が使えない人が少なくなく、そのよ
うな障害者にとって、自動車は単に便利であるというにとどまらず今や生活に欠かせない移動と
交通の手段です。しかしながら、上肢障害者の運転環境については、これまで制度的にも設備的
にもほとんど配慮がなされてきませんでした。上肢障害者は、自動車の運転において多くの面で
困難や負担を強いられ苦労をしてきました。
そこで、財団法人いしずえと先天性四肢障害児父母の会は「福祉車両の普及促進と運転環境改
善のための集い」として自操型福祉車両のイベント「みんなのくるま 2001」~「みんなのくるま
2006」を厚生労働省、国土交通省、経済産業省他の後援を受け毎年開催し、障害者ドライバーの
運転環境向上に取り組んできました。
わが国には、障害者に対して駐車禁止等の規則を免除する制度があり、法改正以前より、下肢
障害、体幹または平衡機能障害、内臓または免疫機能障害がある歩行困難な者及び視覚障害者、
知的障害者を介助、同乗させる者に対しては、申請に基づき、公安委員会より駐車禁止等除外標
章が交付されております。しかしながら、上肢障害者に対しては「歩行困難でない」という理由
だけで、一部の地域を除き、駐車禁止等除外標章は交付されませんでした。単に「歩けること」
だけに注目せず、上肢障害者の困難な状況をご理解いただき、障害者支援の観点から必要な対策
を講じていただくことが重要と考えます。現在、駐車禁止等除外標章は、広島市、廿日市市、北
海道、九州の一部などでは上肢障害者にも交付されていますが、他の自治体ではほとんど交付さ
れず地域格差が生じている状況です。
駐車禁止等除外標章が交付されない上肢障害者は、これまでも公共施設、商業施設等において
十分な駐車スペースがなかったり、不便な駐車場設備のため、結果として生活に必要な用務に自
動車が利用できない経験をしばしばしてきました。そのうえ、今回の道路交通法改正により、運
転者が短時間、自動車をはなれただけで、理由の如何を問わず放置駐車違反として取り締まられ
ることになり、上肢障害者にとって、これまで以上に自動車の利用が制限される厳しい状況にな
っています。取り締まりにより自動車の使用を制限しなければならないケースが増えれば、日常
生活にこれまで以上に重大な支障が生じ得ることは明白です。
実例としては
○
駐車場施設を利用したくても、上肢の機能が低いためパーキングメーターやコインパーキ
ング、無人のパーキング施設などで駐車券が取れない、料金精算機器の操作ができない、
硬貨を投入できないなど、物理的に使用できません。
○
緊急のトイレ使用の場合、上肢障害者は衣服の脱着や排便処理に健常者の数倍の時間がか
かるため 5 分や 10 分では到底戻ってくることができません。
○
駐車場所が目的地から離れた場所にしかない場合、荷物を持てなかったり、持つことがで
きても長い距離を運ばなければならず、徒歩での荷物の運搬が不可能または困難となりま
す。
○
雨天時の雨具の使用が困難であるため(傘をさすことができないため)
、徒歩での移動が非
常に負担になります。
○
小さな子どもを伴っての徒歩移動は、手をつなぐことができない上肢障害者にとって大変
危険です。
私どもは、違法駐車が大きな社会問題となっている現状から、悪質な放置駐車違反などを取り
締まることは当然であると認識し、必要最小限の標章使用に努めるとともに、良好な駐車秩序の
確立に協力を惜しまない立場であります。
以上、私どもの要望の主旨をご理解いただき、早急に対策を講じていただくようお願い致します。
以上