小型ニッケル水素電池の急速充放電時の発熱挙動 (豊橋技科大)○中山 正人、大島 孝昌、福田 健一、伊藤 衡平、恩田 和夫 Thermal Behavior of Small Nickel/Metal Hydride Battery during Rapid Charge and Discharge Cycles Masato Nakayama, Takamasa Ohshima, Kenichi Hukuda, Kohei Ito, Kazuo Onda Toyohashi University of Technology Hibarigaoka1-1, Tenpaku, Toyohashi, 441-8580, Japan In this report the thermal behavior of small Ni/MH battery during rapid charge and discharge cycles has been studied numerically and experimentally by considering the entropy changes by electrochemical reactions, the endothermic reaction by hydrogen occlusion to MH, the heat generation both by an exothermic side-reaction and by overpotentials, and the heat transfer to the ambient air. The calculated cell temperature agrees well with the measured under both the charge and discharge cycles below the rated current, but the calculated is larger than the measured above the rated current. 1.緒言 環境汚染と資源枯渇への懸念からクリーンな自動車が期待されており、電源として 二次電池の大型化が必須である(1)。また電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)に用 いられる二次電池は発進やエネルギー回生時に良好な急速充放電特性が望まれる。二 次電池の大型化において、発熱は重要な問題となり、電池の熱挙動を把握する必要が ある(2)。我々は小型ニッケル水素電池の 0.5C までの定電流充電時の温度上昇を解析 し、実測値と比較的良く一致することを得た(3)。その後、急速充放電時の実験にも着 手し、電池の発熱挙動の把握に努めてきた。発熱項として過電圧発熱、エントロピ発 熱、水素吸蔵熱、副反応熱を考慮し、電池発熱挙動の計算モデルも構築した。 2.充放電反応と発熱挙動 2−1 ニッケル水素電池の充放電反応は次の(1)、(2)式で表わされる。 NiOOH + H 2 O + e − ↔ Ni(OH )2 + OH − (1) MH X + OH − ↔ MH X −1 + H 2O + e − (2) 順に正極反応、負極反応を表わす(左から右に放電反応)。また、負極反応は水素吸蔵 反応(2-a)式と再結合反応(2-b)式に分けて考えられる。 MH X ↔ MH X −1 + 1 2 H2 (2-a) 1 2 H 2 + OH − ↔ H 2O + e − (2-b) またニッケル水素電池は充電末期に(3)、(4)式で示される副反応が起きる。 OH − → 1 4 O2 + 1 2 H 2O + e − (3) − − 1 4 O2 + 1 2 H 2O + e → OH (4) 順に正極副反応、負極副反応を表わす。また、負極副反応は再結合反応(4-a)式と後続 反応(4-b)式に分けて考えられる。 1 2 H 2 + 1 4 O2 → 1 2 H 2O (4-a) H 2O + e − → 1 2 H 2 + OH − (4-b) 2−2 ニッケル水素電池の発熱は主に、電気化学的平衡からずれることによる過電 圧発熱、電気化学反応のエントロピ変化による発熱、水素吸蔵熱や再結合反応のエン タルピ変化による発熱からなる。これをまとめると(5)式になる。 ∆H j ∆S Qcell = I ch arg e 2 R p + ∑ Tcell i I i + ∑ Ij (5) i nF j n F i j ここで I ch arg e は充電電流、 R p は過電圧抵抗、 Tcell は電池温度、 ∆S i はエントロピ変化、 ∆ H j はエンタルピ変化、 I i と I j は反応 i 、 j に関わる反応電流、添え字 i は電気化学反 応の式番号(1)、(2-b)(充電時は副反応(3)、(4-b)も含む)に対応し、添え字 j は化学反応 の式番号(2-a)(充電時は副反応(4-a)も含む)に対応する。今回の実験では Rp は実測し、 I i と I j は実測した電流効率より推定し、 ∆S i と ∆ H j は文献値(4)を参照した。 2−3 今回の研究対象とした電池は小型で放熱が良いため、内部の電池温度は一様 とした。室温下における充電時の電池温度の上昇は(6)式で表わされる。 dT Ccell cell = Qcell − ( As htrans + At hcond )(Tcell − Tamb ) (6) dt ここで、Ccell は電池の熱容量、 As は電池の円筒部面積、 At はリード線が接続される端 面の面積、htrans は電池円筒面からの熱伝達率、hcond は銅線接続部の等価熱伝達率、Tamb Measured Calculated Cell Temperature / ℃ 80 1C 0.5C 3C 70 60 50 2C 40 30 20 Cell Temperature / ℃ は周囲温度である。 3.計算と実測による発熱挙動の比較 室温空間で 0.5C、1C、2C、3C の定電流充放電時に熱電対(0.1mmφ)で測定した 電池(Panasonic HHR-3GPS、1600mAh)の表面温度と、それらに対応する計算結果を Fig.1 に示す。充電時には 2C 以下の充電電流に対してほぼ良い一致を得たが、2C を 超える充電電流に対しては、計算が実測より過剰な見積もりとなった。放電時には 1C 以下の放電電流に対しては両者は良く一致したが、1C を超える放電電流に対しては、 計算が実測より過剰な見積もりとなった。現在、電池内の充放電分布を考慮した解析 を進めている。 本研究の一部は文科省 21 世紀 OCE プログラム「インテリジェントヒューマンセン シング]の援助により行われたことを付記する。 参考文献 1.日本化学会監修:電気自動車、 p.75 (2000) 2.山田修司 他:第 43 回電池討論会、 p.222-223 (2002) 3.藤岡陽一 他:電学論 B-122 巻 12 号、 p.1417-1423 (2002) 4.S. G. Bratsch, J. Phys. Chem. Ref. Data, 18-1, p.1-21 (1989) ほか Measured Calculated 50 2C 40 1C 0.5C 30 3C 20 0 20 40 60 80 Charge Input / % 100 120 0 20 40 60 80 DOD / % (a) Charge cycle (b) Discharge cycle Fig.1 Comparison between measured and calculated cell temperature 100 120
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