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2次元写像におけるヘテロクリニック接触の存在に対する
定理とその応用(カオスとその周辺,研究会報告)
山口, 喜博; 谷川, 清隆
物性研究 (1990), 53(5): 686-689
1990-02-20
http://hdl.handle.net/2433/93939
Right
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Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
研究会報告
2次元写像におけるヘテロクリニ ック接触の存在に対する定理とその応用
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帝京技術科学大学 ・一般教育 山口喜博、国立天文台 ・水沢 谷川清隆
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§ 1.
は じめに
一般的な 2次元写像の うちヤコピアン Jの存在する写像 (可微分写像 )T :R2
-R2を考える。
ここではヤコピアンの値に対 して次のように制限する。
1
・
J>1
3
.0<J<1.
-1<J<0.
これはヤコピアンが領域によって正 (負)から負 (
正 )に変化 した り、J>1(
J<-1)か ら
・
J
<-1・
2
・
J-1.
-1
.
0<J< 1 (
-1<Jく 0)に変化するような写像はここでは扱わか 1
事を意味する。
J>0の写像は方向保存性を、J<0の写像は方向逆転性を有する。これ らの概念についての
詳 しい事は参考文献 日日こある。ここで用いる証明の方法は幾何学的であ り、写像の方向保
Or
d
a
n
曲線定理が重要な役割を損ずる。J
or
d
a
B
曲線定理については参考文
存 (
逆転 )性ならびにJ
2)に詳 しく議論されている。
献(
サ ドルは、その近傍で線形解析より決まる固有値 Au
,人S
より次のように分類される。
J>0の場合 :Opt:
Au
)l
〉As
〉
0. O
P
2:
人u
〈
-1
く人S
く0
.
J<0の場合 :偶数周期は J>0の場合 と同 じ。
Rl:
人u
〉1
,
-1
く入S
く
0
,O
R2:
人u
く
-1
,
0
く入S
く1
.
奇数周期 :O
最後に接触に関する定義を述べる。
定義 1
:
F i
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H e t eroc lini c )
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安定多様体 と不安定多様体が直接的に接 し、交差はない接触。
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定義 2 :Fi
不安定 (
安定 )多様体が安定 (
不安定 )多様体に漸近的に接 し、交差はない接触。または不安
定多様体と安定多様体がともに漸近 して接 し、交差はない接触。
不安定多様体 と安定多様体の交差が生 じた後は 2次的な接触が生 じるが、ここでは 2次的接触
は扱わない。本稿に関する詳 しい内容は文献 桝 を見 られたい。
§ 2.
ホモクリニック接触に関する定理
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a
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g
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n
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y
の接点において不安定多様体と安定
定理 1:Fi
多様体の方向は一致する。◆
証明 :Fi
g
.1
のように Pで接 したとして矛盾を導 く。方向保存でサ ドルがO
Pl
の場合についてのみ
は 1周期のサ ドルとする。J
o
r
d
a
n
曲線r
証明するが、その他の場合 も同じように証明できる。0
をOPi
nWu(不安定多様体 )とP
Oi
nWs(
安定多様体 )で構成する。Pは写像Tで図のように
TPに写され る。Wu
は連続である事よりPとTPを結ぶ曲線は「のWs
の部分 と交わる。これは
wuとWs
が交差する事を意味し矛盾である。一般の n周期の場合についてもこの方法を拡張 して
-6
8
6-
「カオス とその周辺」
1
1
1
ヽ
ヽ
ヽ
ヽ
′
_
_
_
_
J
I
F
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g
.
1
F
i
g
.
2
定理 2:F
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tn
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l
i
n
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a
n
g
e
n
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y
は、J≦-1、 J≧1の系では生 じない。◆
証明 :写像による面積保存、または面積の増大により自明。◆
R
l(Au〉1,-1く入Sく0)の性質をもつ場合、
定理 3 :方向逆転の写像において、奇数周期のサ ドルでO
F
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r
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)
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皿
O
C
l
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n
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a
n
g
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B
C
y
は生 じない。◆
i
g
.
2
で0
ほ 1周期のサ ドルで、Wu
とWs
が Pで接 しているとする。PはTによってJ
o
r
d
a
n
証明 :F
曲線 (
O
Pi
nWu
十P
Oi
nWs
)の外に写される。PとTPを結ぶ曲線は「と交差する。よって矛
盾である。一般の奇数周期についてもこの方法を拡張 して証明できる。◆
§ 3.
ヘテロクリニ ック接触に関する定理
nと、m
周期のサ ドルの一つから
定義 3:n周期のサ ドルの一つから出ている不安定多様体をWu
mとする。
出ている安定多様体をWs
定理4:
方向保存の写像において、不安定多様体Wu
n
と安定多様体Ws
n
の間のF
i
r
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tD
i
r
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c
tt
l
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は下記の 3つの場合以外に生 じない。
e
r
o
c
l
i
n
i
cT
a
n
g
e
n
c
y
P
l
。
川 n-mで、 2つのサ ドルはともにO
(
2
)
孤-2nで、n周期のサ ドルはO
P
2
、m周期のサ ドルはO
P
l
。
(
3
3n-2mで、 n周期のサ ドルはO
P
l
、m周期のサ ドルはO
P
2
。 ◆
証明 :サ ドルの性質による分類 とnとmの大小比較によって 12の場合に分かれる。ここ では 2
つのケースについて紹介する。これ ら以外のケースについても同様に証明できる。
Wu
n(
O
p
t
)とWs
m(
O
p
t
) (n<m、または n-m)
ケース 1:
F
i
g
.
3
において ul
は n周期のサ ドルの一つで、 sl
はm周期のサ ドルの一つである。k-LC
班 (n、m )である。Pでヘテロクリニ ック接触が生 じたとすると、Tk
Pで同じブランチ間で
で PはTn
Pに写されるが、そこでもヘテロクリニ ック
ヘテロクリニ ック接触が生 じる。写像Tn
接触が生 じる。・
ただ し不安定多様体に接する安定多様体は S∩
.
1
から出ている事に注意する。ユ
o
r
曲線 rは P
T
k
Pi
nWu
nとT
k
P
Pi
nWs
nとで構成される。
矢印 a、bほrの左右に分かれてい
d
a
n
る事より、Tk
PとTk
=Pをむすぶ曲線はrと交わる。よって矛盾である。a-mの場合は knとな り、F
i
g
.
3
より矛盾を導 くことができない。すなわち (
I
)
の場合にはF
i
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t
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r
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c
-6
87-
研究会報告
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皿
g
e
n
C
y
が可能である。F
i
g
・
3
で nを2nと読みかえて (
2
1
の場合がわか り、Wu
とWs
の役
割を入れ換えて t
3
)
の場合がわかる。
ケース 2:Wu
n(
O
P
2
)とWs
n(
O
P
2) (n-m )
この場合にF
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n
g
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y
が生 じない事を示す。状況はF
i
g
.
4
に示され
o
r
d
a
n
曲線はrはP
u
T
n
Pi
nWu
nとT
n
P
S
I
Pi
nWs
nで構成され、有限の面積 A (
r)を
ている。J
有する。斜線を付けた領域は 0< J<1の場合、逆写像により面積が増大 しいずれ A (ド)を越
す。点を打った領域は J>1の場合には、写像によって面積が増大 しA (
ド)を超す。保測の場
合は斜線を付けた領域の逆写像による全ての領域を加えるとA (「 )を越す。よって J>0の場
合に必ず交差が生 じる事が分か り矛盾が導けた。◆
F
i
g
.
3
F
i
g
.
4
方向逆転の写像については、40のケースに分かれる。しかし多くのケースが方向保存の場合
に帰着できる。2、3のケースで未解決の部分があるのでここでは報告 しない。
§ 4.
漸近的な接触
既に述べてきたように直接的な接触が起きない場合にはどのような接触が可能であろうか。筆
i
g
.
5
は漸近
者 としては、漸近的な接触が生 じると考えている。ここでは例を示すにとどめる。F
的なホモクリニ ック接触である。この場合O
R
lとO
R
2(●印)の 2つのサ ドルがある。図ではO
R
l
からでた不安定多様体が直接的に安定多様体に接 しているように見えるが、実際はO
R
2
のサ ドル
から出た不安定多様体に集積 しているのである。すなわちこの接触は直接的なヘテロクリニック
接触でかつ漸近的なホモクリニック接触である。
Fi
g
.
6
ほ原点から出たフラクタル化 した不安定多様体Wu
l
が、フラクタル化 したぺイスン境界
2) に互いに漸近接触 しているシーンである。ここで安定多様体は黒または白で
(
安定多様体Ws
表されたベイスンの境界として見て欲 しい。
漸近的な接触についてはまだ未解決の問題もあり今後の発展が望まれる。
-6
8
8-
「カオスとその周辺」
一
二
巨
弓
F
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5 Xn・1-Yn、a
2
1
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J
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2
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3
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∫
0
.
4
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+1-aYn-Y。
2-JX。
Y。.I-aY。
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3JXn
参考文献
(
1
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S
p
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n
g
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).
(
2
)
小平邦彦 、複素解析 (
岩波講座 基礎数学、岩波書店 ).
(
3
)
Y
.
Y
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m
a
g
u
c
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n
dK
.
T
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ni
k
a
w
a(投稿中、投稿準備中 ).
ー6
8
9-