KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title 尿路感染症に対する経口用セフェム剤Cefiximeの使用経 験 Author(s) 藤沢, 真; 佐々木, 正人; 藤井, 敬三; 岡村, 廉晴; 宮田, 昌伸; 橋本, 博; 八竹, 直; 山内, 薫; 山口, 聡; 稲垣, 尚人; 西原, 正 幸; 小山内, 裕昭 Citation Issue Date URL 泌尿器科紀要 (1989), 35(11): 1989-1992 1989-11 http://hdl.handle.net/2433/116727 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 1989 泌 尿 糸己要35:!989-1992,1989 尿 路 感 染 症 に対 す る経 口用 セ フェ ム剤 Cefixime 旭 川 医科 大 学 泌尿 器 科 学 教 室(主 任:八 竹 藤沢 真,佐 宮 田 々 木 正 人,藤 昌 伸,橋 井 本 村 竹 直 芦 別市 立 病 院 泌 尿 器 科(医 長:山 山 内 内 廉 晴 薫) 薫* 富 良 野 協 会病 院 泌 尿 器 科(医 長:山 山 直 教 授) 敬 三,岡 博,八 の使用経験 口 聡,稲 垣 口 聡) 尚 人** 深 川市 立 病 院 泌 尿 器 科(医 長 ・小 山 内裕 昭) 西 TREATMENT 原 正 OF 幸,小 URINARY WITH Makoto Kiyoharu 山 内 TRACT 昭 INFECTION CEFIXIME FUJISAWA; Masato OKAMURA, Masanobu and 裕 Sunao SASAKI, Hiromitsu MIYATA, Hiroshi Fujss, HASHIMOTO YACHIKU From the Department of Urology, Asahikawa Medical College Kaoru YAMAUCHI From the Department of Urology, Ashibetsu City Hospital Satoshi YAMAGUCHI and Naoto INAGAKI From the Department of Urology, Furano Kyokai Hospital Masayuki NISHIHARA and Hiroaki OSANAI From the Department of Urology, Fukagawa City Hospital Cefixime (CFIX) was administered orally in the treatment of 59 cases of urinary tract infection (UTI). According to the response criteria defined by the Japanese UTI committee, the rate of clinical efficacy for 26 cases of uncomplicated cystitis was 96.2%. The rate of clinical effectiveness of five patients with complicated UTI and five with uncomplicated pyelonephritis was 80.0 %. In the other 23 cases which did not meet the response criteria, the efficacy rate was also high. The results indicated that CFIX was an effective drug for the treatment of UTI. (Acta Urol. Jpn. 35: 1989-1992, 1989) Key words: Urinary tract infection, Cefixime 口用 セ フェ ム剤 が いず れ も β一ラ クタ マ ーゼ に不 安 定 緒 Cefixime(CFIX)は,藤 言 沢 薬 品工 業 株 式 会 社 に よ り開 発 され た 新 しい経 ロセ ブ ニム剤 であ る,従 来 の 経 *現;北 **現:遠 見 小 林 病 院 泌 尿器 科 軽 厚 生 病 院 泌 尿器 科 で あ った のに 対 して,CFIXは 注 射用 第3世 代 セ フ ェ ム剤 に匹 敵 す る経 口剤 と して 注 目され て い る.CFIX は グ ラ ム陽 性 お よび グ ラ ム陰 性菌 に対 し幅 広 い 抗 菌 ス ペ ク トルを 有 す る.そ の 抗 菌 作用 は殺 菌 的 で,各 種細 菌 の産 生す る β一ラ クタ マ ー ゼに も安 定 と 言 わ れ て い 1990 泌 尿 紀 要35巻11号tg89年 る.今 回,旭 川 医科 大学 泌 尿 器 科 お よび そ の関 連 施 設 に お い て,尿 路 感 染 症59例 に対 しCFIXを 急性単純性膀胱炎(UTI基 る細 菌学的効果 Table1. 投与 し た の で,こ れ らを 集 計 し臨 床 的 検 討 を 加 え報 告 す る. 分 離 菌 対 象 お よび 方 法 株数(分離頻度)消 E.coli 旭 川 医科 大 学 泌 尿 器科 あ る いは そ の 関 連 施設 泌 尿 器 準群)に おけ 失(消 失率)存 続 25株(89.2%)23株(92.0%)2株 E.ctoacae1株(3.6%)0株 1株 C.freundii1株(3.6%)0株 1株 科 を 受診 した59例 を 対 象 と した. 対象 患 者 の 尿 路 感 染 症 の疾 患 別 内 訳 は,急 性 単 純 性 膀 胱炎44例,急 性 単 純 性 腎孟 腎 炎5例,複 雑性尿路感 S.faecalis1株(3.6%)1株(roo%)0株 染 症10例 で あ った. CFIXの 投 与 方 法 は,各 計 疾 患 と も1回100mgで 1日2回(200mg/day)と した が,400mg/dayの Table2.急 消 膿 尿 4株 24株 症 性 単 純 性膀 胱 炎(UTI基 排尿痛 28株 失 準 群)に お け る総 合 臨 床 効 果 軽 快 不 変 正常化 改 着 不 変 正常化 改 著 不 変 正常化 改 着 不 変 1例3例 陰性化17例 1例1例 細 減 少1例 菌 菌交代 尿 不 変 1例 著効17例 1例 有効8例 無効1例 Table3. 例 も10例 あ った 。 効 果 判 定 はUTI薬 効 評 価基 準 第3版Dに こな った.し か し,UTI薬 複雑性尿路感染症(UTI基 る細 菌学的効果 準 じて お 効 評 価 基 準 に準 じて 効 果 分 離 菌 株数 準群)に おけ 消失 存続 判 定 が 可 能 で あ った 症 例 は36例 で あ り,こ れ 以外 の23 E.coli 症 例 に つ い て は主 治 医 判 定 を行 った. 結 1.急 果 で あ っ た.自 覚 症 状 で は,UTI基 に は,分 善1例,不 離 株28株 に消 は 不 変 で あ っ た.膿 変1例 で あ っ た.細 中24株(85.7%)で 尿 菌学的 消 失 し た.存 続 あ っ た(Table1).総 床 効 果 で は 著 効17例(65.4%),有 無 効1例(3.8%)で 合臨 効8例(30.8%), 有 効 率 は96.2%で あ っ た(Ta・ 効 果 を認 め その 有 効 率 は94.4%で 2.複 あ った, 雑性尿路感染症 10例 の 内訳 は 陵雑 性 膀胱 炎6例,複 UTI薬 雑 性 腎 孟 腎 炎4 胱 炎2例,腎 効 評 価 基 準 を 満た す 症 例 は10例 中5例(膀 孟 腎 炎3例)で 効 評 価 基 準 を 満 た さ な い 残 り18例 につ い て あ った.こ の5例 の細 菌 学 的 効果,総 合 臨 床 効 果 に つ い て は,UTI薬 基 準 に 準 じた.Table3,4に b!e2). UTI薬 主 治 医判 定 に よ り効 果 判 定 を行 った が,18例 中17例 に 例 で あ った. 株 はE.coli2株,E.cloacae1株,C,freundii 1株 の 計4株(14.3%)で 3株3株 準 に あ る よ うに 全 尿 痛 は 投 与 後21例 に 改 善 を み た が,2例 は 消 失24例,改 計 効 評 緬 基 準 を 満 た す 症 例 は26例 例 が 排 尿 痛 を 有 し て い た.排 失,3例 Enterococcussp.1株1株 性 単純 性膀 胱 炎 44症 例 中,UTI薬 2株2株 総 合 臨 床 効果 では 有 効4例,無 効評価 お の お の の 結 果 を 示 す. 効1例 で有 効率80.0% 藤 沢,ほ Table4・ 複 雑 性 尿 路 感 染 症(UTI基 か:Cefixime・ 準群)に おけ TabIe5.複 雑 性 尿路 感 染 症(UTI非 る総 合 臨床 効果 膿尿 基 準 群)に お け る細 菌 学 的 効 果 正常化 改 善 不 変 分 離 菌 細菌尿 陰 性 化 減 1991 尿路感染症 1例3例 株数 Rpenneri 消失 存続 1株1株 少 不 1株 S.epidermidis1株 菌 交 代 変 1例 2株1株1株 計 無効1例 有 効4例 Table6.急 性 単純 性腎 孟 腎 炎(UTI基 発 熱 平 熱 膿 尿 正常化 改善 化 準 群)に 軽 お け る総 合 臨 床 効 果 不 快 不変 正常化 改善 変 不変 正常化 改着 不変 1例 陰 性 化3例 減少菌交代 不 1例 変 著効3例 有効1例 で あ った. UTI薬 無効1例 て い る.以 上 の 点 よ り,CFIXの 効評 価 基 準 を 満 た さな い 残 り5例 の細 菌 学 的 効果 はTable5の ごと くで あ った.主 治 医判 定 に よる 効 果 で は5例 中4例 に効 果 を 認 め 有 効 率80.0%で 尿 路 感 染 症 に対 す る臨 床 効果 は大 い に 期 待 され る. そ こで 今 回わ れ わ れ は,UTI薬 効 評価 基 準1)に 可 能 な か ぎ りの っ と り,尿 路 感 染 症 へ の本 剤 の投 与 効 果 あ った. を検 討 した.急 性 単純 性 膀 胱 炎 では,UTI基 3.急 総 合 臨 床 効果 は96.2%が 性単純性腎孟腎炎 5例 全 例 と もUTI薬 効 評価 基 準 を満 た して い た. 総 合 臨 床 効 果 は,著 効3例,有 効 率80.0%で 4.副 効1例,無 効1例 で有 あ った(Table6). 全 例 中1例 に 胃部 不 快 感,腹 部膨 満感 が み られ 投 与 種 の β一lactamaseに 炎 の5例 は 全 例UTI基 で有 効 以上 が4例80%で あ った.急 性 単 純 性 腎孟 腎 準 群 で あ るが,総 合 臨 床 効果 あ った.こ れ らの成 績 を 全 成 績 で あ った.以 上 の 成 績 はCFIXの 従 来 の経 ロセ フ ェム剤 と比 較 ス ペ ク トラ ム も 広 く,特 準 群5例 の 国 集 計2)の そ れ と比 較 して も同等 あ るい は そ れ 以 上 の 察 Cefixime(CFIX)を きわ め て 良 好 な結 果 で あ った.複 雑 性 尿路 感染 症 では,UTI基 主 治 医 判 定 も有 効 率80%で を中 止 した が,投 与 中 止 に よ り症 状 は 改善 した. す る と,各 主 治 医 判 定 で も有 効 率94.4%で 総 合 臨 床 効 果 で は有 効 率80%で あ り,非 基 準 群5例 の 作用 考 対 し安 定 で あ り抗 菌 に 尿 路 感 染症 の主 な起 因 菌 で 細 菌 学的 効 果 に 注 目 した場 合 に は,急 性 単 純 性 膀 胱 炎 で の 消失 率 はE.coliで23/25(g2.0%),E.cloacae で0/1(O%),C.freundiiで0/1(0%),S.faecalis な ど に 強 い 抗 菌 力 を 発 揮 し,Serratia,Citrobacter, で1/1(100%)で Enterobacterに 検 討 で もE.cloacae,C.freundiiで も 有 効 で あ る2).一 る と も 言 わ れ る が,岸 分2投 方,体 内動 態 の 中 と も他 の 経 ロセ フ ェ ム剤 に比 して劣 ら3》の 検 討 で は1日200mgの 与 で十 分 な尿 中 抗 菌 力 を 有 す る こ とが証 明 され 尿路感染症に 対 す る高 い有 用 性 を 示 す もの と考 え られ た. あ るE.coli,Proteus,Klebsie!1a,N.gonorrhoeae 面 で は 血 中,尿 準 群 での 有 効 以 上 で あ り,非 基 準 群 の あ った.全 国 集 計2)の抗 菌 力(MIC) は や や 劣 って お り,わ れ われ の成 績 も ほぼ 一 致 した もの とな って い る. 副 作 用 は1/59(1.7%)に み られ た(全 国 集 計2)で 1992 泌 尿 紀 要35巻11号1989年 は2.8%)が 軽 度 で投 与 中 止 に よ り直 ちに 回 復 した. 以 上,CFIXは 臨 床 的 に 満 足 で きる成 績 で あ り, 安 全 性 も高 く非 常 に 有 用 な 薬 剤 で あ る と考 え られ た. 結 雑 性 尿 路 感 染 症 で は,UTI基 あ った. 性 単 純 性 腎 孟 腎炎 で は,5例 基準群 あ った. 全 例 ともUTI 基 準 を満 た して い た が,こ れ らの 総 合 臨床 効 果 に お け coli25株 上 の 諸 点 よ りCFIXは 尿 路 感 染 症 に 対 し, 1)UTI研 究 会:UTI薬 効 評 価 基 準(第3版). Chemotherapy,34:408--430,1986 2)第31回 日本 化 学 療 法 学 会 東 日 本 支 部 総 会 新 薬 シ ン ポ ジ ウ ムFKO27,ig84(横 3)岸 洋 一,北 洋 司,斎 藤 原 浜) 研,富 功,石 永 登 志,新 井 泰 憲,河 島 端 夫,西 村 毅:尿 症 に 対 す るCe丘xame(CFIX)の 村 路感染 基 礎 的 な らび に 臨 床 的 研 究.Chemotherapy33:S-6,541-558,1985 あ った. 菌 学 的 効果 で は,急 性 単 純 性 膀 胱 炎 のE. 中23株 が消 失 し(消 失 率92.o%),他 献 文 準 群5例 の 総 5例 の主 治医 判 定 に よる有 効 率 は80.0%で 4)細 6)以 基準群 合 臨床 効果 に お け る 有 効 率は80.0%,UTI非 る有 効 率 は80.O%で 胃部 不 快 感,腹 準 群26例 の 総 18例 の主 治医 判 定 に よる有 効 率は94.4%で 3)急 作 用 は59例 中1例(1.7%)に 非 常 に有 用 な 薬 剤 で あ る と思 われ た. 性単 純 性 膀 胱 炎 で はUTI基 合 臨 床 効果 に お け る有 効 率 は96.2%,UTI非 2)複 5)副 ち に 回復 した. 投 与 し,臨 床 的 に 効果 を 検討 した. 1)急 つ い て は株 数 が 少 な く十 分 な 検 討 は で きな か った, 部膨 満 感 がみ られ た が 軽度 で あ り,投 与 中止 に よ り直 語 尿 路 感 染 症59例 に対 してCF互Xを 成 績 と よ く一 致 した 良 好 な 結 果 で あ った.他 の 菌 種 に 施設 の (1989年6月28日 迅 速 掲 載 受 付)
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