日本化学療法学会雑誌

日本化学療法学会雑誌
426
OCT.
実 験 的 マ ウ ス 上 行 性 尿 路 感 染 に 対 す るritipenem
acoxilの
1995
治 療 効 果
芝 田 和 夫 ・遠 藤 俊 夫 ・大 橋 元 明 ・山 口 東 太 郎
田辺製 薬株 式会 社 薬理 研究 所*
新 しい経 口 ペ ネ ム剤ritipenem
acoxil(RIPM-AC)
の 大 腸 菌 を 用 い た 実 験 的 マ ウス 上 行 性 尿 路 感
染 に 対 す る 治 療 効 果 をfropenem(FRPM),cefotiam
(CFDN)
を 対 照 薬 と して 比 較 検 討 した 。RIPM-ACは
よ びCFDNと
words:
Ritipenem
acoxil
ritipenem
タ リア の フ ァ
フ ァル マ シ ア社)で
合成
経 口投 与
に 腸 管 壁 の エ ス テ ラ ー ゼ に よ り加 水 分 解 さ れ
変 換 され る1)。
今 回,わ
経 ロ セ フ ァ ロ ス ポ リン剤 で あ るCTM-HEお
同
acoxil, マ ウス 上 行 性 尿 路 感 染,大 腸 菌
さ れ た 新 経 口 ペ ネ ム 剤 で あ る 。RIPM-ACは
RIPMに
お よ びcefdinir
は投 与 量 に応 じた 明 確 な 生 菌 数 減 少 作 用 は認 め られ なか った 。
(RIPM-AC)は,イ
ル ミタ リア カ ル ロ エ ル バ 社(現
後,主
(CTM-HE)
同 様 にそ の 投 与 量 に応 じて 大 腸 菌 の マ ウ ス 腎 内 生 菌 数 を減 少 させ た 。 一 方,RIPMと
系 の 経 口ペ ネ ム剤 のFRPMで
Key
hexetil
の 腎 内 生 菌 数 の 平 均Log
±SDは,
12.5お
cfu/ml
5.30±0.77で
よ び1.56mg/kg投
れ2.25±1.52,
kidney
与 群 の 腎 内 生 菌 数 は,そ
3.88±1.01お
よ び4.93±1.27で
与 量 に 応 じた 腎 内 生 菌 数 減 少 作 用(治
れ わ れ はRIPM-ACの
実 験 的局 所感 染 に対
homogenate
あ っ た 。RIPM-ACの100,
れ た 。 対 照 薬 のCTM-HEお
れぞ
あ り,投
療 効 果)が
認めら
よ びCFDNはRIPM-AC
す る有 用 性 を 検 討 す る た め,大 腸 菌 を 用 い た 実 験 的 マ ウ
と 同 様 に 投 与 量 に 応 じ て 治 療 効 果 を 示 し た 。 し か し,
ス上 行 性 尿 路 感 染 に 対 す る治 療 効 果 につ い て,経
FRPMで
ム 剤 で あ るfropenem(FRPM:
エ ル バ 社 よ り 入 手),経
cefotiam
は 投 与 量 に 応 じ た 明 確 な 治 療 効 果 は 認 め られ
フ ァル ミ タ リア カ ル ロ
口 セ フ ァ ロ ス ポ リ ン剤 で あ る
hexetil (CTM-HE:
cefdinir (CFDN:
口ペ ネ
武 田 薬 品 工 業)お
藤 沢 薬 品 工 業)を
よび
対 照 薬 と して 比 較
検 討 した 。
実 験 的 マ ウ ス 上 行 性 尿 路 感 染 は,一
SLCddY雄
夜 給水 制 限 した
性 マ ウ ス の 腹 部 を 麻 酔 下 に て 切 開 し,残 尿
を 強 制 排 尿 させ,外
尿 道 口 を 閉 塞 し,膀 胱 内 に 滅 菌 生 理
食 塩 水 で 調 製 したEschεrichiacoli2004の
接 種 し(接 種 菌 量:1.3×106cfu/
菌液 を直接
mouse),縫
合鋲にて
切 開 部 を 閉 塞 して 作 製 した 。 な お,外 尿 道 口 の 閉 塞 は,
菌 液 接 種3時
間 後 に 解 除 した 。 薬 剤 治 療 は,感
染24時
間 後 に 経 口 的 に 単 回 投 与 し,投 与 量 は い ず れ の 薬 剤 も
100,12.5お
よ び1.56mg/kgと
剤 投 与24時
間 後 に 両 腎 を 無 菌 的 に 摘 出 し,摘 出 腎 重 量
の10倍
kidney
た りの 腎 内 生 菌 数 の10g換
homogenate)
を 求 め,各
算 出 して 比 較 検 討 した 。 な お,実
算 値(Log
RIPM-ACお
Therapeutic
effects of a single administration of RIPM-AC,
FRPM,
CTM-HE
and
CFDN on urinary
tract infection caused by
Escherichia
coli 2004 in mice
治療 群の 平均 値を
験 は1群10匹
で行
Infection
by
よ び 対 照 薬 の 治 療 効 果 をFig.1に
た 。RIPM-ACの
活 性 体 で あ るRIPM,
活 性 体 のCTMお
よ びCFDNのE.
2004に 対 す る 最 小 発 育 阻 止 濃 度(MIC)は,そ
0.39, 0.1, 0.05お
*
1.
cfu/
な った 。
CTM-HEの
Fig.
量 の滅 菌 生 理 食 塩 水 で ホ モ ジネ ー ト液 を 作 製 し,
そ の1mlあ
ml
した 。 治 療 効 果 は,薬
よ び0.2μg/mlで
埼 玉 県 戸 田市 川 岸2-2-50
示し
bladder.
after
FRPM,
coli
れぞれ
あ っ た 。Control
was
(*;
with
Drugs
were
infection.
counted
MICs
induced
inoculation
at
48
were
MIC
male
ddY
106cfu
of
administered
Viable
cells
after
infection
h
determined
of
in
1.3 •~
parent
in
by
compound).
mice(19-21g)
E.
coli
2004
orally
pairs
of
kidneys
(mean•}SD,
agar
dilution
at
into
24
were
N=10).
method
h
VOL.43
Ritipenem
S-3
acoxilの
なか った。 各 薬 剤 の 治 療 効 果 につ い て,二
427
マ ウ ス尿 路 感 染 に 対 す る 治 療 効 果
FRPMの
元配 置分散 分
健 康 成 人 で の 累 積 尿 中 排 泄 率(150mg単
析法で統 計 学 的 に検 討 した結 果 い ず れ の 薬 剤 間 に お い て
投 与,0∼6h)は,そ
も有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た も の のRIPM-ACと
告1)2)さ れ て い る。 以 上 よ り,RIPM-ACの
FRPMの100mg/kg投
路 感 染 症 に 対 す る治 療 効 果 は 期 待 で き る と思 わ れ る 。
RIPM-ACの
与 群 の 生 菌 数 を 比 較 す る と,
方 が 平 均 値 で 約2log(102cfu)
数 を 減 少 さ せ て い た 。RIPM-ACの
RIPMのMICは,FRPMよ
らず,こ
FRPMよ
文
り も4倍 劣 るの に もか か わ
1)
熊 澤 浮 一:
2)
国 井 乙 彦,
で あ る こ と が 考 え ら れ る 。 ま た,RIPM-ACお
Therapeutic
effect
urinary
第42回
報
臨床の尿
献
日 本 化 学 療 法 学 会 総 会,
シ ン ポ ジ ウ ム 。FC/TA-891,
り も優 れ た 治 療 効 果 を 示 した 。 そ の 要 因 と し
マ ウ ス 尿 中 排 泄 がFRPMよ
よ び3%と
腎 内生 菌
活性体であ る
の よ うに マ ウ ス 上 行 性 尿 路 感 染 に 対 して
て,RIPM-ACの
れ ぞ れ 約10お
回
総 会,
り も良 好
斎 藤
篤:
福 岡,
第41回
新 薬
1994
日本 化 学 療 法 学 会
新 薬 シ ン ポ ジ ウ ム 。SY5555,
東 京,
1993
よび
of ritipenem
tract
acoxil
infection
on
experimental
in mice
Kazuo Shibata, Toshio Endo, Motoaki Ohashi and Totaro Yamaguchi
Pharmacological Research Laboratory, Tanabe Seiyaku Co., Ltd.,
2-2-50 Kawagishi, Toda, Saitama 335, Japan
The therapeutic
effect of ritipenem
acoxil
urinary tract infection caused by Escherichia
(RIPM-AC),
a new oral penem, on experimental
coli in mice was compared with those of fropenem
(FRPM), cefotiam hexetil (CTM—HE) and cefdinir (CFDN).
RIPM-AC as well as CTM—HE and CFDN decreased dose—dependently the number of viable cells
in the kidneys. In contrast, FRPM, an oral penem, showed no clear dose—dependent decrease in the
number of viable cells.