複雑性尿 路 感染 症 に対 す るCeftizoxime(FK749 - 日本化学療法学会

VOL.28
CHEMOT
S-5
HERAPY
767
複 雑 性 尿 路 感 染 症 に 対 す るCeftizoxime(FK749)の
臨再床 的 検 討
藤 村 宣 夫 ・福 川 徳 三 ・淡 河 洋 一 ・黒 川 一 男
徳島大学医学部泌尿器利
(主任:黒 川一 男教授)
泌 尿 器 科 領 域 の 複 雑 性 尿 路 感 染 症24例(上
ximeを1日1,000mg(朝
夕2同,経
1)著
効3例(12.5%),有
2)細
菌 学 的 効 果 は31株
効16例(66.7%),無
11株 中,7株(63.6%)消
失 し,5株(22.2%)が
3)副
部 尿 路 感 染 症10例,下
静 脈 投 与)5口
中,消
続11株
性(3濃
で,な
有 効 率 を得 た。
か で もSerratia
度disc)の18株
marcescensは
中,11株(61.1%)が
消
減少 した 。
作 用 は1例
もみ られ な か っ た。
Ceftizoximeは 藤 沢薬 品 工 業 株 式会 社 に お いて 研 究 開 発 され
た新規セファ ロスポ リン系 抗 生 物 質 で あ る 。
液 また は生 食20mlに
静 注(5%糖
本剤は既存 の セ ファ ロ スポ リン 系 抗 生 物 質 と同 様 に 広 い 抗 菌
スペ クトル を有 す るが,特 に 注 目 され る点 は グ ラ ム陰 性 菌 に強
力な抗菌力 を も ち,と
効5例(20.8%)で,79.2%の
失20株(64.51%),存
失 し た 。 ま た,CEZ耐
部 尿 路 感 染 症14例)にCeftizo-
間 没 与 し,
溶解)ま た は1.5∼2時
液 ま たは 電 解質 液500mlに
問 の 点滴
溶解)し,日
数 は 全例5日 間 と した 。 全例 と も他 の抗 菌 剤 お よび 消 炎
剤 は併 用 しな か っ た。
りわ け 尿 路 感 染 症 の 主 要 菌 種 で あ る
E.eoli,Pretexs sp.,Enterobactr
sp., Serratia
marcescens
臨 床 効果 判 定 基準
に対しては 今 まで に な い優 れ た 抗 菌 活性 を 示 す こ とで あ ろ う
n 。このた び,わ れ われ は 泌尿 器 科領 域 の 複 雑 性 尿 路感 染症 に
本剤を使用 し,臨 床的 検 討 を 行 な う機 会 を得 た の で そ の成 績 を
報告す る。Ceftizoximeの
効果 判定 はUTI薬
効評 価 基 準2)に 従 っ て,著 効,有
効,無 効 の3段 階 で 行 な った 。
化 学構 造 式 は つ ぎの とお りで あ る。
臨
Fig. 1
Structure
of Ceftizoxime
1)慢
床
成
績
性 複 雑 性腎 盂 腎 炎(Table1)
10例 の うち,著 効1例,有
効7例,無
効2例 で 有効 率
は80%で あ った 。
無 効の2例 は 基礎 疾 患 に サ ン ゴ状腎 結 石 と両 側尿 管 結
石 を有 す る症例 であ った。
2)慢
性複 雑 性 下 部尿 路 感 染 症(Table2)
14例 の うち,著 効2例,有
投与 対 象 と 方法
は78.6%で
投与対 象は1979年2月 か ら1979年10月 ま での 間 に,徳
効9例,無
効3例 で 有 効 率
あ った 。
無 効 の3例 は 多数 の膀 胱 結 石 を合 併 した神 経 因 性膀 胱
島大学泌尿 器科 な らび に 当科 関連 病 院泌 尿 器 科 に入 院 し
を基 礎 疾患 に もつ膀 胱 炎 と前 立腺 摘 出 術後 の 前 立 腺床 炎
ていた複雑性 尿路 感 染症 を有 す る24例 で,疾 患 の 内訳 は
2例 で あ った 。
上部尿路感染 症10例(腎
14例〔膀胱炎8例(症
盂腎 炎10例),下
例11∼18),前
部 尿 路感 染 症
立 腺 床 炎6例(症
例19∼24)〕であ る。 な お,基 礎 疾 患 は前 立 腺 肥大 症11
例,腎 結石4例,神
経 因 性膀 胱3例,尿
管 結 石2例,腎
以 上,臨
例,有
床 成 績 を ま とめ る と,24例
効16例,無
の うち,著
効5例 で 有 効 率 は79.2%で
効3
あ った
(Table3)。
ま た,UTI薬
効評 価 基 準 に従 って 疾 患 病 態 群 別 に効
盂腫瘍,膀 胱腫 瘍,膀 胱尿 管 逆 流,膀 胱 腟 瘻 各1例 であ
果 判 定 を行 な うと 有 効 率 はsimple
infectionで は83.3
った。
%,mixed
あ り,カ テ ー テル留
年令は26才か ら80才(平 均59才)ま
法は1回,500mgを
で であ り,投 与 方
朝 夕2回,oneshot静
注(20%糖
infectionで は66.7%で
置 群 の2例 は と もに有 効 例 で あ った(Table4)。
SEPT.
CHEMOTHERAPY
768
Table
bacter
細 菌 学 的 効果
投与 前 に 分離 され 起 炎菌 と推 定 され た31株 中,消 失 し
た もの は20株(64。5%),存
続 した もの は11株 で あ り,
投与後に新たに 出現 した ものは Pseudomonas fluorescens
1株 で あ っ た 。
菌種別にみ ると Serratia
失7株,存
続4株,E.
marcescens
coli 4株
は11株 中,消
は す べ て 消 失,
Enteroー
1
sp.は3株
coccus faecalis
domonas
Clinical
中,消
の2株
aeruginosa2株
rettgeri,
bacterの
各1株
また,31株
of complicated
失1株,存
Proteus
mirabilis,
Klebsiella
Strepto-
続1株, Pseumorganii
Proteus
pneumoniae,
は いず れ も消失 した
中,CEZに
続2株,
で は 消 失1株,存
と
す べ て存 続 し, Proteus
Proteus
summary
1980
(Table5)
対 す る 感受 性(3濃
2株 は
vulgaris,
Acineto。
度dlsc)
VOL.28
CHEMOTHERAPY
Sー5
769
upper UTI (Pyelonephritis)
のわかった27株 につ い て,そ の 推 移 をみ る とCEZ(卅)
の4株 とCEZ(廾)の3株
は すべ て 消 失 し,CEZ
の2株 では消失1株,不
変1株,CE名(ー)の18株
消失11株,減 少5株,不
変2株 で あ った(Table6)。
例 もな く,臨 床 検査 値 に お い て も血 液像,肝 ,腎 機 能 検
(+)
査 で 本剤 の 影 響 と考 え る異常 値 は 全 く認め られ な か った
では
(Table7)。
か
副
作
用
副作用につい て は 自 ・他 覚 的症 状 の 出 現 した もの は1
近年,β-1actamaseに
lactam系
ん
が
え
対 す る 安定 性 を特 徴 と す る β抗 生物 質 の 研 究開 発 が 盛 況 を呈 して い るが
,
CHEMOTHERAPY
770
SEPT.
Table
C. C. C. ; Chronic
I. A. P. ; Infection
complicated
after
cystitis
prostatectomy
2
Clinical
1980
summary
of
VOL.28
S-5
complicated lower UTI
CHEMOT
HERAPY
771
772
SEPT. 19180
CHEMOTHERAPY
Table
Table
4
Overall
Table
3
efficacy
5
Clinical
classified
Bacteriological
results
by type of infection
response
VOL.28
CHEMOT
S-5
Table
6
Correlation
HERAPY
between
disc sensitivity
to CEZ and bacteriolouical
Ceftizoximeも
ペ ニ シ リナ ー ゼ 型,セ
ゼ型 β-lactamaseに
安 定 で あ り,し
773
of organisms
resnonse
ファ ロ ス ポ リ ナ ー
(66.700)が
か も今 ま で の セ フ
ファ ロ ス ポ リ ン 系 抗 生 物 質 の 有 用 性 が 低 下 して い る 昨
耐 性 を 示 し,複
ァロスポ リ ン系 抗 生 物 質 と 比 べ て は る か に 強 力 な 抗 菌 力
今,こ
を有す るた め1),本
よ る 消 長 は 消 失 が11株(61.1%:Serratia
剤 の臨 床 的 効果 が 大 い に期 待 され て
いた。
れ ら のCEZ耐
雑 性尿 路 感 染 症 に お け る セ
7株,Enterobacter
以 上の よ うな 理 由 か ら,わ
れ われ は 本 剤 の特 徴 を 確認
するため に 対 象 を 複 雑 性 尿 路 感 染 症 患 者 と し,臨
床 効果
投与 量 は す べ て1日1,000mgを
oneshot静
朝 夕2回
注 ま た は 点 滴 静 注 し,投
に 分 けて
与 量別 の 効果 の 検
まず,臨
床 効 果 に つ い て み る と 上 部 尿 路 感 染 症(慢
複雑性腎 盂 腎 炎)は80%,下
部 尿 路 感 染 症(慢
膀胱炎,前 立 腺 床 炎)は78.6%の
性
性複 雑 性
有 効 率 が 得 ら れ,複
雑
aeruginosa
88.9%に
1株,Proteus
て 急 増 し たSerratia尿
75%(有
効3例,無
効1例)の
効2例)と
有 効率 を得 た こ とは 特記
細 菌尿 に 対 す る 効 果 に お い て も,本
抗菌 活 性 を 示 すSerratia
sp.5株,E.coli4株
1株 の24株
消失,4株(16,7%)が
し か し,Pseudomonas
1株,不
aeruginesa(2株)で
は減 少
変1株,Enterobactersp.(3株)で
変2株
は 消 失1
で,1日1,000mg投
副 作 用 は24例
に お い て1例
投 与 前 にS-GOTが
異 常 高 値 を 呈 し た8例
与 では 満 足 す べ き結
も発 現 し な か っ た 。
異 常 値 を 示 し た1例
とBUNが
に つ い て み て も投 与 後 に さ ら に 上
昇 し た もの は な く,1日1,000mg,5日
間 投 与に お け る
sp.3株,Kle-
で90.9%に
中 ,消
失7株,減
2)
河 田幸 道, 西 浦 常 雄: 尿 路 感 染 症 に お け る化 学療 法 剤 の
効果
少3
抗 菌 作 用が み ら れ たこ とは既 存
3)
複 雑 性 尿 路 感 染症 に お け
藤 村 宣 夫, 米 田 文男, 平 石 政 治,
斉木
喬, 米 沢正 隆:
∼3649,
中 の う ち18株
京)
る薬 効 評 価 基 準 。 日泌 尿会 誌70(50):534∼545,
られ る3)。
受 性 は27株
1979(東
薬 効評 価 法 に つ い て 。 第2報,
りわ け,
イ シ ン(点 滴静 注)の
炎 菌 のCEZ感
献
第26回 日本 化 学 療 法 学会 東 日本 支 部 総 会 新 薬 シ ン ポ ジ ウ
ムFK749(Ceftizoxime),
中 ,16株(66.7%)が
成 績 と よ く一 致 し たD.と
は11株
文
1)
の ア ミ ノ配 糖 体 系 抗 生 物 質 に 勝 る 成 績 で は な い か と 考 え
また,起
1株)で
感染 症 の 治療 に 明 る い展 望 を 与 え る もの であ ろ う。
11株,Proteus
減 少 し,20株(83.3%)に
vitroの
marcescensで
株,不 変1株
merganii
剤 が と くに 強 力 な
marcescens
,Enterobacter
bsiella Pneumoniae
Serratia
少
本 剤 の 安全 性 も確認 され た。
すべ きで あ る。
がみ られin
,減
路 感染 症 も含 め たい わ ゆ る既 存
果 は 得 られ なか っ た。
て も,症 例 数 は 少 な い が そ れ ぞ れ100%(有
1株,
抗 生 物質 に 強 い 抵 抗 を 示 す 難 治性 尿 路
と言 え る。
カテー テル 留 置 群 や 前 立 腺 摘 出 術後 の 前 立 腺 床 炎 に お い
1株)
細 菌学 的 効 果 がみ られ た こ とは 院 内感 染 に よ っ
株,不
学 療 法 が 比 較 的 に 奏 効 し に くい
rettgeri
1株,Acinetobacter
性尿 路感 染 症 に 対 す る 本 剤 の 有 効 性 は 充 分 に 実 証 さ れ た
病態 群 別 に み て も,化
与に
marcescens
が5株(22.2%:Serratiamarcescens3株,Pseudo-
の β-lactam系
討は行 な わ な か っ た 。
のCeftizoxime投
sp.1株,Proteus
Pseudomonas putido
mones
ならびに 副 作 用 の 検 討 を 行 な っ た 。
性 菌18株
1978
香川
1979
征, 前林 浩 次 ,
複 雑 性尿 路感 染症 に お け るパ ニ マ
臨 床 的 検 討 。基 礎 と臨 床12:
3645
774
CHEMOTHERAPY
SEPT.
Table
7
1cuin
Laboratory
VOL 28 S-5
findings
CHEMOTHERAPY
775
CHEMOTHERAPY
776
SEPT.
1980
All
patients
CLINICAL STUDIES OF CEFTIZOXIME
IN COMPLICATED URINAkY TRACT INFECTIONS
NOBUO FUJIMURA, TOKUZOH FUKUKAWA,
and
Department
Ceftizoxime
received
1)
ting
2)
out
Clinical
results
in
totally
In
bacteriological
of
3)
was
intravenous
No
31
79.2%
administrated
injection
were
of
of Urology, School o Medicine, Tokushima
to
of
24
response,
cases
1, 000
excellent
overall
in
mg
3
diagnosed
(twice
(12.5%),
effectiveness
eradication
was
observed
in
this
as
a
complicated
day)
good
for
in
16
5
University
urinary
tract
infections.
days.
(66.
7•“)
and
poor
in
5
patients
(20.8%)
resul-
rate.
of
strains.
side-effect
YOHICHI AGA
KAZUO KUROKAWA
series.
organisms
resulted
in
20
(64.
5%),
and
persistence
in
11
(35.5%)