JULY CHEMOTHERAPY 1462 産 婦 人 科 領 域 に お け るT-1220の 1977 基 礎 的 ・臨 床 的 研 究 高瀬善次郎 ・白藤 博子 ・内田昌宏 川崎医科大学産婦人科学教室 T-1220はAlnpicillin (ABPC)のAmino基 -2 ,3-dioxopiperazinylcarbonyl基 に4- を 導 入 した 新 半 合 成 ペ ニ シ リ ン で あ る 。 本 剤 はFig.1に 有 し,グ Serratiaな しい 示す構造式 を ラ ム 陽 性 菌 な ら び に グ ラ ム 陰 性 菌 に 対 し抗 菌 性 を 示 し,と く にKlebsiella,Proteus, Chemical structure 実 験 方 法:当 Aeudomonas, 抗 菌 力 教 室 保 存 の 臨 床 分 離 菌 で あ るStaph. aureus50株,Ecoli50株,Klebsieaaa Pseudomonas aeruginosa Proteus vulgaris17椥 ど に 強 い 抗 菌 力 を 示 す こ と が 知 ら れ て い る1)。 Fig. 1 1. Ethyl pneumoniae50株, 50株,Proteus mimbili350株, こ対 す るT-1220の 抗 菌 力(MIC) の 測 定 を 日 本 化 学 療 法 学 会 標 準 法 に よ り寒 天 平 板 希 釈 法 で 行 な っ た 。 ま た 同 時 に 対 照 薬 剤 と し てSulbeni of T-1220 (SBPC),Carbenicillin (CBPC)のMICを cillin 測 定 し,感 受性 の 分 布 に つ い て 比 較 検 討 を行 な った 。 な お 接 種 菌 量 は Staph..aureusが108/ml,他 実 験 成 績:臨 は106/mlで あ った 。 床 分 離 菌 に 対 す る 感 受 性 分 布 をTable 1 に 示 した 。 Staph..aureus50株 今 回,本 剤 に つ い て 産 婦 人 科 領 域 で の基 礎 的,臨 床的 検 討 を行 な う機 会 を 得 た の で,そ の 成 績 を報 告 す る 。 Table 1 Sensitivity of T-1220, に 対 し てT-1220は 1,56μg/ mlで 発 育 阻 止 の 認 め られ る も の か ら>100μg/mlの す も の ま で か な り幅 広 SBPC and CBPC against clinical く 分 布 し て お り,全 isolated organisms 耐性を示 体 と して VOL. 25 NO. 5 CHEMOTHERAPY 1463 1464 JULY CHEMOTHERAPY Fig. 2 Laboratory findings before administration of T-1220 1977 療 効 果 ・副 作 用 な ど臨 床 的 検 討 を行 な った 。 and after 投 与 方 法 は1日2∼4gを1∼2回 た 。投 与 期 間 は6∼10日 に分け て静注 し 間 で あ った.ま た 本 剤 の 投 与 前 お よび 投与 後 に 菌 の 分 離 ・同 定 を 行 ない,検 出菌 につ い て も検 討 を 行 な った 。 臨 床 効 果 の 判 定 は 次 の 基 準 に よ り行 な った 。 著 効(廾):主 要 自他 覚 症 状 が3日 以 内 に著 し く改 善 し, 治 癒 に 至 った 場 合 有 効(+):主 要 自他 覚 症 状 が3日 以 内 に改 善 の傾 向を 示 し,そ の 後 治 癒 した 場 合 無 効(一):主 要 自他 覚 症 状 が3日 経 過 して も改 善 され な い 場 合 。 な お,手 術,切 開 な ど外 科 的 療 法 を 併 用 して 有 効 で あ った も のは 著 効 とせ ず,有 SBPC,CBPCに 効 とみ な した 。 比 べ 劣 っ て い る 傾 向 が 認 め ら れ た. ま た 副 作 用 に つ い て は 自覚 症 状 のほ か,臨 床 検 査 所 見 E.coli50株 に 対 し て は,T-1220のpeakは mlで,SBPC,CBPCよ μg/mlの り低 いMICを 耐 性 株 はT-1220の10%に で は 約50%存 3.13μg/ 示 し,ま た,> 対 し,SBPC, 在 し,T-1220はSBPC, CBPC CBPCよ と して 投与 前 後 にお い て血 液 検 査(赤 血 球 数,Hb,Ht, 100 りす ぐれ 白血 球 数 白血 球 像),腎 機 能 検 査(BUN,ク レア チ ニ ン), 肝 機 能 検 査(黄 ビ リル ビ ン, ALP, GOT, 疸 指 数,総 GPT)を 蛋 白,A/G,総 行 な った 。 ていた。 Klebsiella50株 臨 床 成 績 は一 括 してTable に 対 し て はT-1220のpeakは3.13μg 症 例1,2は /mlを 示 し た の に 対 し,SBPC, /mlに CBPCは 分 布 し て お り,T-1220は い ず れ も ≧50μg 対 照 薬 剤 に 比 べ,非 常 に す ぐれ た 感 受 性 を 示 した 。 Pseudomonas aemginosaに 対 し て はT-1220の peak 2に 示 した 。 産 褥 乳 腺 膿 瘍 で い ず れ も投 与 開 始 日に切 開 排 膿 を実 施 した 症 例 で,有 効 で あ った 。 検 出菌 と して 1例 にStaph.aureus,1例 にE.coliが 認 め られ た が,い ず れ も投 与 後 陰 性 とな った 。 腎 盂 腎 炎 の2例 は子 宮 筋 腫 術 後 お よび外 陰 癌 術 後 の もの で,い ず れ も有 効 症 例 で あ は6.25μg/mlで あ る の に 対 し て,SBPC, い ず れ も50μg/mlを CBPCの それは 示 した 。 ま た>100μg/mlの る。 そ の うち症 例3はKlebsiellaが 後 陰 性 と な り,症 例4に はT-1220に4%,SBPCに10%, T-1220は CBPCに28%存 対 照 薬 剤 に 比 べ,非 在 し, 常 に す ぐれ た 感 受 性 を 示 した 。 mimbilis50株 0.39μg/mlで に 対 し て は,T-1220のpeakは あ る の に 対 し,SBPC, CBPCの つ い て は 検 出 菌 のE.coliは 失 した が,同 時 に菌 交代(Pseudomonas)が 消 失 した が,同 示 し た 。 ま た>100μg/mlの に0%,SBPC, T-122oは CBPCと た 。 臨 床 効 果 は有 効 で あ った 。 な お,こ れ らの 菌 交 代 現 耐 性 株 はT-1220 も に10%存 在 し,全 Proteus vulgaris17株 に 対 し て,感 体 と して 3.13μg/mlを 示 し た 。 ま た>100μg/mlの 1220に6%,SBPC, と し てT-1220は CBPCに 対 照 薬 剤 に 比 べ,す お い て,投 与 開 目に 軽 度 の顔 面 紅 潮 が み られ た が,一 過 性 の も て は 全 例 に 異 常 が認 め られ な か った 。 な お 投 与 前 後 の GOT,GPTお 在 し,全 体 ぐれ た 成 績 で あ っ た。 よびBUNの 値 をFig.2に III. 考 示 した 。 按 β-ラク タ ム系 抗 生 物 質 の 中 で,SBPCやCBPCは グラ ム陰 性 菌 に対 して強 い抗 菌 力 を有 す る こ とが 知 られ,臨 II. 昭 和51年5月 よ り8月 臨 床 成 績 床 的 に用 い られ て い る 。 しか しな が ら,Pseudomonasに まで 当 科 を受 診 した婦 人 科 領 域 に お け る 感 染 症 の 乳 腺 膿 瘍2例,お 炎2例,子 下 で, の で 投 与 を 中 止 す る必 要 は なか った。 臨 床 検 査 値 につ い 1.56∼ 耐 性 株 はT- は と も に30%存 副 作 用 と して は腎 盂 腎 炎(症 例3)に 始 後3日 受 性 のpeakはTよ びCBPCは 共 に菌 数103/ml以 自然 に 消 失 して い る 。 対 照 薬 剤 に 比 べ す ぐ れ た 成 績 を 示 した. 1220が0.78∼1.56μg/ml,SBPCお じ く菌 交 代 が み られ そ れ は1.56 象 で 出 現 したPseudomonasは μg/m1を 消 み られ た 。 症 例5は 子 宮 ・卵 巣癌 術 後 に 肺 水 腫 を 起 こ した 症 例 で,検 出 菌 のKlebsiellaは Proteus 検 出 され た が,投 与 耐性株 よび 手 術後 の 腎 盂 腎 富 ・卵 巣 癌 手 術 後 の 肺 水 腫1例 に つ い て,治 対 す る抗 菌 力 は ま だ満 足 す べ き もの で は な い 。 新 し く開 発 され たT-1220は 同 系 統 の 薬 剤 で グ ラ ム陽 性 菌 な らび に グ ラ ム陰 性 菌 に対 して抗 菌 性 を示 し,特 に VOL. 25 NO. Klebsiella pneumoniae, aeruginosa, Serratia Proteus group, Pseudomonas などに強 い抗菌 力が示 さ marcescens わ れ わ れ は 今 回,T-1220の し,そ 菌 株,と 抗 菌 力 を 当教 室 で 臨 床 分 CBPCと 比 較 検 討 した 。 つ い て はT-1220はSBPC, CBPCに 比較 coli,Klebsiella,Pseudomonas,Proteusに T-1220はSBPC,CBPCに がSBPC,CBPCで 4%, 対 して いず れ も 比 較 し て す ぐれ た 成 績 を 示 し た 。 と くにKlebsiellaに つ い て は ≧100μg/mlの い ず れ も90%以 は14%と Pseuのmonasに の うち菌 交 代 と思 わ 少 な く,大 上 存 在 した の に 対 し て CBPC50%で peakがT-1220で6.25μg/mlで CBPCは50μg/mlで 耐性株 き な 差 異 が 認 め られ た 。 つ い て は ≧100μg/mlの SBPC32%, した が,特 記 す べ き も の は認 め られ な か った 。 ま 耐 性 株 はT-1220 あ り,ま と め 新 し く開 発 され た 半 合 成 ペ ニ シ リ ンT-1220に 基 礎 的 検 討 お よび 臨 床 的 検 討 を 行 な い,次 ついて の結果 を得 た。 し劣 る 成 績 で あ っ た 。 しか し グ ラ ム 陰 性 菌 で あ るE T-1220で べ た 結 果,消 失 した も のが5例,そ くに グ ラ ム陰 性 菌 に つ い て 測 定 の 感 受 性 分 布 をSBPC, Staph.aureusに 必 要 が あ る と思 わ れ る。 検 出 菌 の推 移 を 全 例 に つ い て調 れ る もの が2例 あ った 。 副 作 用 は 臨 床 検 査 値 を 含 め 検 討 れ て い る1)。 離 さ れ た267の 1465 CHEMOTHERAPY 5 抗 菌 力 は 感 受 性 分 布 でStaph.aureusに CBPCに る E. coli, Klebsiella nosa, 対 して SBPC, 比 較 して 劣 って い た 。 しか し グ ラム陰 性 菌 で あ Proteus pneumoniae, mirabilis, Proteus れ もT-1220はSBPC, CBPCに Pseudomonas vulgaris 比 較 してす ぐれ て お り, そ の差 は と くにE.coli,Klebsiella,Pseudomonasに た感受性 の おい て 大 きか った。 臨 床 に つ い て は 乳腺 膿 瘍2例,術 あ る の に 対 し,SBPC, あ る こ とは注 目 され る。 従 って グ aerugi- に対 して は い ず よび 肺 水 腫1例,計5例 後 の腎 盂 腎 炎2例 に 対 して1日2∼4g静 お 注 して ラム陰 性 菌 全 般 にわ た る感 染 症 に対 す る効 果 に 期 待 す る 検 討 を 行 な い,全 例 有 効 で あ った 。 な お 副 作 用 は1例 に こ とが 大 き い 。 軽 度 の顔 面 紅 潮 が み られ た が,そ の 他 は 検 査 所 見 を含 め 臨 床 的 検 討 に つ い て は 乳 腺 膿 瘍2例,手 炎2例 お よ び 肺 水 腫1例,計5例 れ も 臨 床 効 果 は 有 効 で あ った 。1日 に 対 し て3g,術 shot静 注 した が,例 術後の腎盂腎 に と ど ま っ た が,い の投 与 量 は 乳腺 膿 瘍 後 感 染 症 に は2gお 数 が 少 な い の で,今 て 異 常 は 認 め られ なか った 。 文 ず よ び4gをone 後 更 に検 討 す る 1) 献 第23回 日本 化 学 療 法 学 会東 日本 支 部 総 会,新 薬 シ ンポ ジ ウ ム1, T-1220抄 録 集, 1976 JULY CHEMOTHERAPY 1466 FUNDAMENTAL THE FIELD AND CLINICAL OF OBSTETRICS STUDIES OF T-1220 AND GYNECOLOGY 1977 IN ZEN JIRO TAKASE, HIROKO SHIRAFUJI and MASAHIRO UCHIDA Department of Obstetrics and Gynecology, Kawasaki Medical College Fundamental and clinical investigation on T-1220, a new semisynthetic penicillin, in the field of obstetrics and gynecology were carried out. The results are summarized as follows. 1) The antibacterial activity of T-1220 against clinically isolated strains was comparatively investigated, employing Sulbenicillin and Carbenicillin as the control drug. The antibacterial activity of T-1220 against gram negative microorganisms such as E. coli, Klebsiella pneumoniae, Pseudomonas aeruginosa, Proteus mirabilis and Proteus vulgaris was superior to that of Sulbenicillin or Carbenicillin. However, the antibacterial activity of this drug against Staphylococcus aureus was rather inferior to that of them. 2) As the clinical studies T-1220 was used for the treatment of total 5 cases con sisting of 2 cases of tumor in mammary gland, 2 cases of post-operative pyelonephritis and one case of pulmonary .oedema and it was effective to all cases. As the side effect slight grade of facial flushing was observed in one case, but it was only transient and not necessary to discontinue the administration.
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