CHEMOTHERAPY RU 28965に 関す る基礎 的 - 日本化学療法学会

VOL.36
S-4
285
CHEMOTHERAPY
RU
柴
28965に
関 す る 基 礎 的 ・臨 床 的 研 究
孝 也 ・斎 藤 篤 ・嶋 田甚 五 郎 ・加 地 正 伸
奥 田新 一 郎 ・堀 誠 治 ・宮 原 正
東京慈恵会医科大学第二 内科学教室
松 本 文 夫 ・桜 井 磐 ・
北 條敏 夫
神奈川県衛生看護専門学校 附属病院内科
上田 泰
東京慈恵会医科大学
新 しく開発 さ れマ ク ロ ラ イ ド系 抗 生 剤RU
28965に つ い て 吸 収 ・排 泄 お よ び臨 床 効 果 を検 討 し,以
下の 成績 を得 た。
1. 吸 収 ・排泄
健 康 成 人男 子 志 願 者 に,RU
28965
150mgお
よ びMOM
600mgをCross
与 し.血 中濃 度 な らび に 尿 中排 泄 を比 較 した。 最 高 血 中 濃 度 は,RU
MOMが1.34μg/ml(30分
over法 に よ り1回 経 口投
28965が5.15μg/ml(2時
間 後),
後)に 達 し,以 後 経 時 的 に 漸 減 し,そ の血 中 半 減 期 は そ れ ぞ れ6.83時 間,
0.69時 間で あ った。 投 与 後8時 間 まで の 尿 中 回 収率 は,RU
28965で5.1%,MOMで2.1%で
あ っ た。
2. 臨床 成績
急性 咽 頭 炎,急 性 扁 桃 炎,細 菌 性 肺 炎 各1例,急
域 にお け る諸 感 染 症 の11例 にRU
性 気 管 支 炎5例,慢
28965を 使 用 し,有 効9例,や
性 気管 支 炎3例 な どの 内科 領
や有 効1例,無
効1例 の成 績 を得 た。
全 例 に 自 ・他覚 的 な副 作 用 は認 め られ ず,ま た 本剤 使 用 に よると 思 われ る臨床 検 査 値 の 異 常 変動 も認
め られ なか った。
RU
28965は フ ラ ンス,ル セ ル ・ユ ク ラ フ社 で 創 製 さ
れたエ リス ロマ イ シ ンAの9位
の ケ トン を2-メ トキ シー
エ トキ シ-メチ ル オキ シム で 置換 した半 合 成 マ ク ロ ラ イ
ド系 の 経 口剤 で あ る。RU
28965はErythromycin(EM)
I. 血 中 濃 度 ・尿 中 排 泄
1. 対 象 な ら び に 測 定 方 法
健 康 成 人 男 子 志 願 者6名(Table
腹 時RU
28965
に比べ,胃 酸抵 抗 性 に優 れ てい る と と もに 良好 な吸 収性,
(MOM)600mg1回
長 い半減期 な どの特 徴 を有 して い る1)。
Cross
今 回,RU
28965の 吸 収 ・排 泄 につ い て 若 干 の 検 討 を
行 う とともに,内 科 系諸 感 染 症 に対 す る 臨床 評 価 を試 み
たの で,以 下 そ れ らの成 績 を報 告 す る。
Table
over法
与 前,投
150mgお
朝空
acetate
投 与 後 の 血 中 濃 度 ・尿 中 濃 度 を
に よ っ て 検 討 し た 。 採 血 時 間 は 両 剤 と も投
与 後0.25,0.5,1,2,3,4,6,8時
間
である。
血 中 濃 度 測 定 と 同 時 にRU
1
1)を 対 象 に,早
よ びMidecamycin
Summary of healthy male volunteers
28965,MOM投
与 後0∼2,
CHEMOTHERAPY
286
Table
N. D.:
2
Plasma levels of RU 28965 and MOM in healthy volunteers, cross-over (n=6)
Not detected
Fig. 1 Plasma levels of RU 28965 and MOM in healthy volunteers (n=6)
SEPT,1988
2∼4,4∼6,6∼8,8∼10時
間の各尿について尿中濃度
を測 定 し,こ
れ に各 時 間 帯 で の尿 量 を乗 じて尿 中排 泄 量
を算 出 し,使
用 量 と の 比 か ら10時 間 累 積 尿 中 回 収 率 を 求
は そ れ ぞ れ0.69時
2)尿
RU
RU
28965お
eus ATCC
よ びMOMの
濃 度 測 定 は,Micrococcus lut.
9341を 検 定 菌 と す る 薄 層 カ ッ プ 法 に よ り行 っ
compartment
よ びMOMの
open
modelに
血 中 濃 度 に つ い て は,one
従 って 薬 動 力学 的 定 数 を算 出
した 。
28965
600mgを
150mg,MOM600mg投
間 に お い て 最 高 と な り,前
あ っ た 。10時
率 は,RU
150mgの5.1%に
28965
内 服 した と
4に 示 す と お りで あ る 。
与 群 と
者 で22.8μg/ml,後
間 ま で の 累 積 尿 中 回収
対 し てMOM600mg
あ っ た。
績
1)血
中濃 度
28965
II. 臨 床 成 績
150mg,MOM
600mg(200mg×3錠)を
服 し た際 の 血 中 濃 度 推 移 はTable
あ る 。RU
28965は
mlに 達 し,以
投 与2時
っ た 。 一 方,MOMは0.5時
な お,MOM投
2,Fig.1の
あ
間 後 の 最 高 値 で も1.34μg/
中 半 減 期(T1/2),血
3例 の 計11例
28965の6.83時
み られ た。
間,58.80μg/ml・hrに
Pharmacokinetic
parameters
対 し,MOM
にRU
菌 性 肺 炎1例,慢
28965を
別 は 男 性4例,女
性7例
で あ った 。
績
本 剤 を 臨 床 使 用 し た 成 績 はTable
る 。 臨 床 効 果(Table
for RU 28965 and MOM calculated
plasma levels following a single oral administration
食前
使 用 量 は1000∼2400
あ った
2.成
も,
性気管支炎
で,1日2∼3回
に 投 与 した 。 使 用 期 間 は4∼8日,総
mgで
性 扁 桃 炎1
使 用 し た 。 年 齢 分 布 は21∼
本 剤 の 使 用 量 は200∼300mg/日
3に 示 す と お りで あ
中 濃 度 曲 線 下 面 積(AUC)と
性 気 管 支 炎5例,細
83歳 で,性
べ て の採 血 時 間 に お
薬 動 力 学 的 パ ラ メ ー タ ー はTable
象 お よ び方 法
内 科 系 諸 感 染 症 の う ち急 性 咽 頭 炎1例,急
例,急
間 以 降 は全 例 測 定 限 界 値 以 下 で あ った。
与 群 に お い て は,す
3
1.対
ご と くで
間 後 に は2.77μg/mmで
い て血 中 薬 剤 濃 度 が 測 定 限 界 以 下 の 例 が1例
Table
内
間 後 に 最 高 値 平 均5.15μg/
後 漸 減 し て8時
mlで あ り,6時
り,血
よ びMOM
者 で94.1μg/mlで
で は2.1%で
2.成
RU
150mgお
尿 中 濃 度 はRU
も0∼2時
28965お
大 きな 差 が み ら
中排 泄
28965
き の 尿 中 排 泄 はFig.2,Table
た。
RU
閥,2.45μg/ml・hrと
れた 。
め た。
RU
287
CHEMOTHERAPY
VOL.36 S-4
6)は,有
5に 示 す と お りで あ
効9例,や
by one- compartment
や 有 効1例,
open model from
in fasting healthy male volunteers
288
CHEMOTHERAPY
Fig. 2
Table
4
SEP了,1988
Urinary excretion of RU 28965 and MOM in healthy volunteers (Cross-over)
Urinary
excretion of RU 28965 and MOM in healthy volunteers,
cross-over
(n=6)
VOL.36
S-4
CHEMOTHERAPY
289
290
CHEMOTHERAPY
無効1例 で あ り,有 効 率 は81.8%で
果(Table
1例,不
7)を 判 定 し得 た5例
あ った。 細 菌 学 的 効
で は,菌 消 失3例,不
明1例 で あ り,菌 消 失率 は75.0%で
変
あ っ た。
副作 用 は全 例 にお い て 認 め られず,臨 床 検 査値 の特 に
記 すべ き異 常 変 動 は認 め られ な か った(Table
SEPT. 1988
内 服 で は,最 高 値 は30分 後 に あ り1.34μg/ml,T1/2 0.69
時 間 で あ り,10時
RU
間 まで の 累 積 尿 中 回 収 率 は2.1%と
28965に 比 べ 低 か った。 こ の よ う にRU
28965の 血中
濃 度 は 同系 剤 に比 べ2∼4倍 高 く,尿 中 移行 も優 れてお り,
こ の特 徴 を理 解 した うえ で 適正 な症 例 に使 用 したな らば
8)。
臨 床 効 果 は期 待 され る。
今 回 検 討 したRU
III. 考
案
2.臨
28965は,エ
リス ロマ イ シ ンの9位
内 科 領 域 に お け る呼 吸 器 感 染 症11例 に本 剤 を臨床 使用
床
の ケ トン を2-メ トキ シ ー
エ トキ シーメチ ル オ キ シ ムで 置 換
し,有 効9例,や
さ れ た 半 合 成 の マ ク ロ ラ イ ド系 抗 生 剤 で あ る。RU
は81.8%で
28965の 吸 収 ・排 泄 な ら び に呼 吸 器感 染症 に対 す る 臨 床
菌 消 失3例,不
検討 を試 み た 。
75.0%で
1.吸
収 ・排 泄
28965はEMに
効1例 で あ り,有 効率
変,不
あ った.本
明 各 々1例
で あ り,消 失率 は
剤 のT1/2は 約6時
間 と知 られ てい
る 同 系 剤 の 中 で は 最 も長 く,200mg分2あ
本 系 剤 は 胃酸 に対 す る安 定性 に 大 きな問 題 を残 して い
るが,RU
や有 効1例,無
あ っ た。 細 菌 学 的 効 果 を判 定 し得 た5例 では,
比 べ て 酸 に 対 して安 定 で あ り,
mg分2に
る いは300
て 十 分 な臨 床 効 果 が 期 待 され る。 使 用量,使
用 回 数 な ど詳 細 な 検 討 が必 要 であ ろ う。
良好 な 吸収 性 と血 中 半 減 期 の 長 さ を特 徴 と して い る1)。
3.安
我 々 の健 康 成 人男 子 志 願 者6名
本 剤 を健 康 成 人 男子 志 願 者6名 な らび に臨床 例11例 に
150mg1回
を対 象 と したRU
内服 時 の 血 中 濃 度 は,2時
μg/mlに 達 し,以 後T1/2は6.83時
ま で の 累 積 尿 中 回 収 率 は5.1%で
28965
間 後 に 最 高値5.15
間 で 漸 減 し,10時 間
あ った。EMを
始めと
全性
使 用 した 結 果,自
・他 覚 的 副 作 用 は な く,臨 床 検査値の
異 常 変 動 も認 め られ な か った 。 従 来 のマ クロ ライ ド系抗
生 剤 に 時 に み られ る 胃部 不快 感,食 欲 不 振 な どの副作用
す る 同系 剤300∼500mgを
経 口 使 用 した場 合,お お よそ
の 最 高 血 中 濃 度 は1μg/mlま
た は そ れ 以 下 で あ る2)。
もみ られ な か っ た。
我 々の 検 討 したMidecamycin
28965の 吸 収 ・排 泄,臨 床効 果 につ いて検 討 した。
acetate(MOM)
600mg
Table
Table
7
6
1回
以 上,新
し く開 発 さ れ た マ ク ロ ラ イ ド系 抗 生 剤RU
Clinical effect of RU 28965
Bacteriological
effect of RU 28965
VOL.36 S-4
CHEMOTHERAPY
291
292
CHEMOTHERAPY
文
1)
2)
イシ ン系 抗 生 物 質,化 学 療 法 ハ ン ドブ ック
献
第35回 日本 化 学 療 法学 会総 会, 新 藥 シ ンポ ジ ウ ム
第3版(上
IV。RU28965,
井 書 店, 1986
盛 岡, 1987
田
改訂
泰, 清 水 喜 八郎 編), 156∼165, 永
清 水喜 八郎: マ クロ ラ イ ド系抗 生 物 質 と リ ンコ マ
BASIC
KOHYA
AND
SHIBA,
CLINICAL
ATSUSHI
SNINICHIRO
Second
Department
of Internal
STUDIES
SAITO,
OKUDA,
H0RI
Medicine,
MATSUMOTO,
Medicine,
JINGORO
SEUI
of Internal
FUMiO
Dept.
IWAO
Kanagawa
We
performed
1.
basic
Absorption
RU
cretion
28965
in
28965
and
6.83h
for
28965
and
(150
after
MOM
was
28965
2.1%
2.
Clinical
RU
28965
3 of chronic
No noteworthy
for
clinical
studies
on
28965,
mg)
were
RU
MASANOBU
TADASHI
SAKURAI
28965
of Medicine.
Jikei
and
HOJO
School
KAJI
MIYAHARA
TOSHIO
of Nursing
and
University
Hygiene
Hospital
UEDA
Jikei
a new
University
macrolide
antibiotic,
and
obtained
thefollowing
results.
excretion
mg)
urine
RU
and
and
of Medicine,
RU
SHIMADA,
and
Prefectural
School
ON
School
YASUSHI
and
SEPT.1988
and
MOM
single
(600
p.o.
5.15 ƒÊg/ml(2h
and
0.69h
compared
administration
)and
for
MOM.
to
1.34 ƒÊg/ml
The
by
healthy
(30
urinary
cross-over
adult
min),
recovery
method
volunteers.
respectively,
rate
for
The
which
up
to
8h
after
their
concentrations
maximum
decreased
p.o.
in
blood
with
blood
and
concentration
time.
administration
The
was
ex-
of
RU
half-life
5.1%
was
for
RU
MOM.
results
was
given
to
bronchitis,
side-effects
1 case
a total
or
each
of
laryngopharyngitis,
of 11 cases
abnormal
acute
of respiratory
laboratory
findings
tonsillitis
infection.
attributable
and
Results
to
were
RU
pneumonia,
9 good
28965
were
5 cases
cases,
1 fair
observed.
of acute
and
bronchitis
1 poor
case.