Topics 「第10 回医薬品品質フォーラムシンポジウム」 を開催 トピックス 2010年12月15日、九段会館(東京)にて「第10回医薬品品質フォーラムシンポジウム」 が開催されました。同シンポジウムには、産官学の各方面より約 400 名が参加し、 「生 物学的同等性試験※1ガイドラインの改訂に向けて」と題して、医薬品品質フォーラム溶出 試験ワーキンググループ(溶出試験WG)における議論の内容が紹介されるとともに、溶 出試験※2の諸問題について活発な議論が展開されました。また、医薬品品質フォーラム代 表世話人である川西徹氏(国立医薬品食品衛生研究所〈以下、国立衛研〉)による開会の 挨拶に引き続き、産官学の演者による講演、パネルディスカッションを行いました。 フォーラム開催の経緯と概要 四方田千佳子氏(国立衛研)は、溶出試験にかか わる諸問題をサイエンス・リスクベースで考える産 官学のディスカッションの場として、2008年12 月、医薬品品質フォーラムの下、溶出試験WGが設 置されたことを説明しました。また、溶出試験WG では、当初の経口固形製剤の生物学的同等性試験ガ イドライン(BEGL)における溶出試験に関する諸課題 に加え、規格試験および配合剤の溶出試験にかかわ る課題が議論されたことを紹介しました。 ●BEGLにおける溶出試験利用の考え方 会場外観 緒方宏泰氏(明治薬科大学名誉教授)は、BEGL における溶出試験は、規格試験と異なり、複数製 ● BEGL 溶出試験における個々の課題 剤を対象とし、溶出挙動が類似した製剤を抽出する 濱浦健司氏(第一三共)と大河内一宏氏(武田薬品) ための試験として位置づけていることを説明しまし は、①現行ガイドラインの記述内容の確認、②一定 た。また、製剤間の差異の検出力を高め(回転数を の条件下での試験削除、③試験条件の代替、④ガイ 下げる、水を含めた複数液性の条件を設ける、溶出 ドライン運用変更、に分類された BEGL にかかわる 曲線パターンの重なりを見る)、非同等なものを同等 課題 22 項目について、現状の課題点、産業からの と判断するリスクを下げたうえで、当該溶出試験の 要望・提案、議論の経緯、合意内容を発表しました。 結果を、生物学的同等性試験での被験者追加試験の また、配合剤の処方変更・含量追加 BE 試験に関して、 免除の可否判断、処方の一部変更や含量違い製剤で 溶出試験 WG で取りまとめた処方変更水準の考え方 のヒト試験の免除の可否判断に利用していることを についてモック(模型)を用いて説明しました。議 解説しました。 論の成果として、多くの項目で一定の方向性が定ま り、実際の運用に即した柔軟な対応が可能となる方 ※1)生物学的同等性試験(BE)…試験製剤の生物学的利用能が標準製剤と同等であるか否かについて調べる試験のこと。 ※2)溶出試験…錠剤やカプセル剤等の内用固形製剤から決められた時間内に溶け出す量をin vitro(試験管内)で測定する方法で、くすりの 効き目をある程度正しく簡単に評価できる。 JPMA News Letter No.142(2011/03) 24 「第10回医薬品品質フォーラムシンポジウム」 を開催 向に向かっていることが紹介されました。 ●規格試験としての溶出試験にかかわる課題 高橋豊氏(アステラス製薬)は、規格設定の考え 方、データの取り方に関する4項目について、現状 の課題点、産業からの要望・提案、議論の経緯、合 意内容を発表しました。議論の成果として、規格試 験としての溶出試験は、有効成分や製剤の特性等に 応じて、各社が設定可能であることが再確認されま した。 ●今後の生物学的同等性ガイドライン改訂の流れ 美上憲一氏(厚生労働省)は、品質フォーラムに 会場の様子 おける合意内容は、基本ガイドライン(GL)の本文 改訂に反映させる方向で、「後発医薬品等の同等性試 活発な討議が交わされました。その中で、「改訂後 験ガイドライン検討委員会」にて議論すること、配 の BEGL は新薬開発段階に適用できるか。また、発 合剤については Q&A で対応することを説明しまし 出前に適用できないか」との質問に対しては、新薬 た。また、パブリックコメント後、必要に応じて関 申請では BEGL 適用を一律に求めていないため、合 係業界と改正案を協議したうえで、できる限り早く 意に至った項目を利用したい場合は事前相談してほ 基本 GL に反映させたいと説明しました。 しい旨が説明されました。なお、開発段階の BA ※ 3 ●製法変更の生物学的同等性試験指針(案) /BE 試験のつなぎ方については、溶出試験 WG で 四方田千佳子氏(国立衛研)は、厚生労働科学研 今 後 議 論 す る 予 定 で あ る こ と が 報 告 さ れ ま し た。 究(青柳班)にて示された製法変更の生物学的同等 Biopharmaceutics Classification System に つ 性試験 GL(案)および Q&A(案)について、改正 いて、製剤評価を重視する日本に当該基準を一律に 薬事法施行や ICH Q トリオ通知等の医薬品製法にか 取り込むことはできないが、同情報の活用は可能と かわるレギュレーション(規制)の状況変化を踏ま の見解が示されました。また、in vitro / in vivo 相 えて、改訂作業を進めたことを解説しました。 関(IVIVC)について、IVIVC が取得できた試験法 パネルディスカッション < 登壇者 > を用いて判定を行うことは理論上可能であるが、平 均値の判定に信頼区間を入れた評価を採用すべきで あり、現実的には実施困難との見方が示されました。 溶出試験 WG の代表者 この他、溶出試験 WG での議論に関連して、含量違 司会:緒方宏泰氏(明治薬科大学名誉教授) い製剤の溶出試験方法(含量合わせと 1 錠ごとにつ サブ司会:濱浦健司氏(第一三共) いての議論)、非機能コーティングフィルムの 7% 上 パネリスト:美上憲一氏(厚生労働省) 、 青柳伸男氏、 限の根拠等について、活発な討議が交わされました。 河野陽一氏、佐藤玲子氏(以上、PMDA〈医薬品 最後に、青柳伸男氏(PMDA)が、今回の本 品質 医療機器総合機構〉 ) 、大河内一宏氏(武田薬品)、 フォーラムを総括するとともに、溶出試験WGで行わ 高橋嘉輝氏(沢井製薬) 、四方田千佳子氏(国立衛研) れたサイエンス・リスクベースに基づく産官学のディ 上記の方々によるパネルディスカッションが行わ スカッションの重要性を強調され、閉会しました。 れました。事前受付にて入手した主たる質問に対す ( 品質委員会・製剤研究部会・溶出試験 WG る回答が示され、フロアを含めて発表内容に関して 高塚 信也、前田 裕之 ) ※3)BA…生物学的利用能、またはバイオアベイラビリティ(Bioavailability)のことで、投与された医薬品の有効成分が全身循環に到達 した割合(生物学的利用率)とその速度(生物学的利用速度)で表される。 「第10回医薬品品質フォーラムシンポジウム」 を開催 JPMA News Letter No.142(2011/03) 25
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