1 インテグリンα5β1 の機能糖鎖モジュールの同定 - Glycoforum

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インテグリンα
β1 の機能糖鎖モジュール
インテグリンα5β
機能糖鎖モジュールの
モジュールの同定
○伊左治 知弥, 川村 千尋, 佐藤 裕也, 福田 友彦, 顧 建国
東北薬大・分子生体膜研 細胞制御学
細胞表面に発現するインテグリンは、N-結合型糖鎖の主なキャリアータンパク質である。N-結合型糖
鎖の付加は、細胞の伸展やインテグリン α と β サブユニットのアセンブリに不可欠であることが知られる。
実際、精製したインテグリン α5β1 を N-glycosidase F で処理すると、α と β サブユニットが解離され、この特
異基質であるフィブロネクチン(FN)への接着が阻害される。また、N-結合型糖鎖の構造はインテグリンの
活 性 化 を 制 御 す る 一 因 で あ る こ と が 知 ら れ る 。 即 ち 、 線 維 芽 細 胞 を 1-deoxymannojirimycin で
α-mannosidase II を阻害すると、ハイマンノース型インテグリン α5β1 が細胞表面に多く発現し、細胞の FN
への接着が著しく阻害される。実際、我々は、HeLaS3 細胞に、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラ
ーゼ III (GnT-III)を過剰発現することで、インテグリンの糖鎖構造を改変すると、リガンドとの親和性が低
下し、インテグリンを介する細胞接着・移動、また、細胞内シグナル伝達が抑制されることを以前に明らか
にした。インテグリン α5β1 は α と β サブユニットに、それぞれ 14 カ所と 12 カ所の推定 N-結合型糖鎖付
加部位をもつ。個々の糖鎖付加部位に対し N-結合型糖鎖が修飾されるのか、また、それぞれの付加部
位がインテグリンの細胞表面の発現や細胞の伸展活性といった本質的機能に関わるのか不明であった。
しかし、最近、我々は、α5 鎖の β-propeller ドメインに位置する site3,4,5 の糖鎖がインテグリンの細胞接着
や細胞移動といった機能発現に必須であり、site5 が細胞表面の発現に重要である事を報告した。そこで
本研究では、インテグリン β1 サブユニットの機能糖鎖部位に注目して検討を行った。部位特異的変異導
入法により、インテグリン β1 サブユニットの糖鎖付加部位の Asn を Gln に置換した変異体を作成し、レト
ロウィルスを用いインテグリン β1 欠損 GE11 細胞に遺伝子導入を行い、変異インテグリンの安定発現株を
得た。SDS-PAGE から I-like ドメインの三カ所の糖鎖は β1 鎖の発現、α5 鎖との二量体形成およびサブユ
ニットの成熟化に重要であることが免疫沈降およびメタボリックラベル実験から分かった。種々の糖鎖欠
損変異体の FN 上における細胞の伸展活性を比較したところ、I-like ドメインの 3 か所の糖鎖付加部位に
変異を導入することで(∆4-6)、細胞の伸展活性は著しく低下したが、逆に I-like ドメインに 3 カ所糖鎖を
もつ変異体(S4-6)では細胞の伸展活性を認めた。一方、I-like ドメイン以外部位に糖鎖付加部位をもつ
変異体では細胞の伸展活性は認められなかった。さらに、S4-6 は α5 鎖の β-propeller ドメインにそれぞれ
3 カ所および 1 カ所の糖鎖付加部位をもつ S3-5、S5 変異体と二量体を形成することができたが、∆4-6 と
これらの α5 鎖の糖鎖変異体は二量体を形成することができなかった。また、α5 鎖に 3 本、β1 鎖に 3 本の
み N-結合型糖鎖付加を受ける組み換え型インテグリンを精製し活性を検討したところ、野生型と同等の
フィブロネクチン結合活性を示した。以上から、インテグリン α5 鎖の β-propeller ドメインおよび β1 鎖の
I-like ドメインに付加された糖鎖は機能発現に重要であることが示唆された。
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