佐賀大学皮膚科学教室

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佐賀大学皮膚科学教室
スタッフ
歴代教授
2 代教授
准教授
三砂範幸
成澤 寛
講 師
井上卓也
初代
幸田 弘
(2013 年 4 月 1 日現在)
教室の歴史
おもな業績
1976 年(昭和 51 年)10 月、佐賀医科大学が創立。本学の基本構想に大講座制が採用
されたため、皮膚科学教室は内科学講座に統合され内科学皮膚科として、1980 年 4 月 1
メルケル細胞・メルケル細胞癌研究
日に初代幸田 弘教授の着任により産声をあげました。内科学講座に組み込まれた当科の
従来からメルケル細胞に関する研究で多数の業績をあ
特徴は、早速、その研修制度にあらわれることとなります。すなわち、それは、皮膚科研修
げ、現在ではメルケル細胞癌(MCC)の研究も柱の一つと
の前に、1 年間の内科研修が義務づけられ、いわば現在の新臨床研修制度の先駆けでも
しております。MCC は稀な皮膚悪性腫瘍ですが、悪性黒
ありました。教室の基本方針として、内科学講座に属する当科の特徴を生かした、内科的
色腫よりも予後が不良です。この腫瘍の大きな特徴はメル
素養のある皮膚科医の育成、加えて、皮膚外科診療が可能な教室創りを目指しました。そ
ケル細胞ポリオーマウイルスが発症に関与していることで
の指針は、脈々と現在まで生き続け、重症患者、内科的疾患を合併した皮膚科患者の診療
す。数多くある研究業績の中で最新のものは、MCC の自
は、内科医との迅速な連係で対処する業をもって当科のお家芸となっています。
然消褪に関連した腫瘍免疫応答の変化を皮膚生検前後で
One, 2012)
。それ
検討しています(Koba S, et al: PLoS One
有棘細胞癌合併メルケル細胞癌
らの臨床研究に加えて、MCC が他の皮膚癌との合併が多いことに着目し、有棘細胞癌な
教室の特色
どの他細胞種との混合培養を用いた相互作用を検討する基礎実験も並行して行っておりま
伝統的に診療グループを設けず、全員が参加する臨床カンファレンスを行っています。
す。
膠原病診療では、膠原病専門医との合同カンファレンスを行い、皮膚科独自の診断スキ
ルを用いて治療を行っています。高齢化に伴い様々な内科的問題を抱えた患者に携わる
ことが多くなっていますが、内科学皮膚科の特色を生かした、皮膚だけにとらわれない、
アトピー性皮膚炎研究 生活歴にも配慮した全人的診療を心がけています。また、皮膚外科では、教室員全員が
当大学の分子生命科学講座との共
術者として診療にあたり、皮膚悪性腫瘍に対しても、形成外科・一般外科と連携しなが
同研究で、アトピー性皮膚炎の研究も
ら皮膚科主導で治療を行っています。壊死性筋膜炎に関しては、開院以来皮膚科で外科
行っております。最新の研究では、細胞
手技を担当しており、救急医と連携して全身管理を行っています。佐賀県で多い肝疾患と
外マトリックスタンパク質であるペリオス
関連した Vibrio vulnificus 感染症についても豊富な治療経験を有します。
チンがアトピー性皮膚炎の慢性化機序
アレルゲン
ケラチノサイト
インテグリン
樹状細胞
において必須な役割を果たしているこ
炎症性サイトカイン
新規の治療薬
ペリオスチン
ナイーブT細胞
とを明らかにしました(Masuoka M,
Th2細胞
Invest, 2012)。本 論 文で
et al: J Clin Invest
IL-4 / IL-13
線維芽細胞
は、IL-4/IL-13- ペリオスチン - インテグリン - 炎症性サイトカインの悪性回路が存在し、
アトピー性皮膚炎の慢性化を起こしていることを示しております。ペリオスチンとインテグ
リンの結合を阻害する物質は、画期的な分子標的治療薬となると期待されます。
皮膚腫瘍の病理組織学的研究 当教室の研究のもう一つの柱が皮膚腫瘍の病理組織学的研究です。様々な種類の皮
膚腫瘍の病理組織学的研究、そして、それに基づいた症例研究を行っており、多数の英
文業績があります。
最新の研究は、多発する粘膜・皮膚の (palisaded encapsulated) neuroma は、
大学データ
所
在
地
multiple endocrine neoplasia (MEN) 2b 症候群や Cowden 病などとは別の独立疾
Dermatol, in press.)。ま
患であることを提唱いたしました(Misago N, et al: Arch Dermatol
〒849-8501 佐賀県佐賀市鍋島5-1-1
た、本 論 文 で は、MEN2b 症 候 群 な ど で み る mucosal neuroma と palisaded
電 話 番 号
F A X 番 号
0952-34-2368(医局)
0952-34-2017(内科学事務室内)
encapsulated neuroma の関
医局メールアドレス
医 局 長
[email protected]
古場慎一
連性についても初めて言及して
おります。
Multiple mucocutaneous (palisaded encapsulated) neuroma
(1)多発性内分泌腫瘍症2b型の部分症状
(2)Cowden 病
(症候群)
の部分症状
(3)上記
(1)
(
、2)
とは、
全く関係のない独立した疾患