インドシアニングリーンに代表される 生体イメージング用近赤外蛍光色素

インドシアニングリーンに代表される
生体イメージング用近赤外蛍光色素の
蛍光増強および安定化技術
所属
氏名
理研(生命システム研究センター)
神
隆
1
1) 背 景 (目的)
• 近赤外蛍光色素の水溶液中での不安定性(色
素の凝集や蛍光消失)の改善
• 近赤外色素の蛍光輝度の改善
• 近赤外生体蛍光イメージングの高感度化
→ 血管、リンパ節、癌腫瘍蛍光イメージング
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近赤外蛍光イメージングの例 (乳がん腫瘍)
明視野
近赤外蛍光(800 nm)
乳がん
乳がん
(高輝度発近赤外量子ドットプローブ)
蛍光の量子収率>20%
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生体蛍光イメージング用の近赤外色素
QY:2.5 %
オキサジン750
(670 ex. / 685 em.)
QY:5 %
ローダミン800
(680 ex. / 700 em.)
QY:2 %
インドシニングリーン (ICG)
(780 ex. / 820 em.)
QY < 1 %
(960 ex. / 1200 em.)
QY(水中での量子収率)
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近赤外蛍光色素の一般的な性質
• 水への溶解性が低い
特に生理的緩衝液には溶けにくい
• 水中で凝集する(不安定)
共役系が長く、比較的疎水性であるため
• 蛍光の量子収率が小さい
水中では時間とともに蛍光輝度が低下する
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インドシアニングリーン(ICG)の場合
ICG水溶液の蛍光の消失
1
ICGの蛍光強度
1週間経過
0 時間
ICG水溶液
の蛍光像
リン酸緩衝生理食塩水溶液
0
0
1
2
3
4
5
6
水溶液調整後の日数
6
2) 従来技術とその問題点
ICG水溶液の安定性、蛍光輝度を改善するた
め、ICGをリポソーム、ナノ粒子、高分子ミセル
などに封入する方法があるが、
・試料の調整に手間と時間がかかる
・粒径サイズが大きくなる
・抗体等の生体分子の修飾が難しい
などの問題があり、広く利用されるまでには至っ
ていない。
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ICGを安定化、蛍光輝度を増大させるために報
告されている高分子ミセル (例)
1)Poly(styrene-alt-maleic anhydride)- block-poly(stylene) 分
J. Biomed. Opt. 13, 014025 (2008)
子量=21600
2)Pluronic F-127 (poly(ethylene oxide)-poly(propylene
oxide)-poly(ethylene oxide), 分子量=12600
Mol. Pharmaceutics. 6, 480 (2009)
3)MPEG-PLA-PA (poly(ethylene glycol)-poly(lactide)poly(β-amino ester), 分子量=4807-8500
Biomaterials. 35, 3467 (2014)
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3) 新技術の特徴、効果
• ミセルのサイズが小さい(5nm以下)。
• 近赤外蛍光色素の安定性、発光輝度の著しい
改善(水中で1ヶ月以上安定、200%以上の輝
度増大)。
• 添加剤の大量合成が容易で安価で毒性がない
。
• リンパ節、乳がん腫瘍の生体蛍光イメージング
への応用が可能。
9
本技術でミセル形成に用いる化合物
1, 3, 5
分子量 < 3000
両親媒性カリックスアレーン
10
ICGのカリックスアレーンミセルへの取り込み
蛍光輝度増大
ミセル
ICG
疎水的環境で
安定化
水中では不安定
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本技術によるICGの蛍光輝度の改善
PBS 溶液
S4-6 無
有
S4-6 無
S4-6: R = C6H13
F. I.
有
[ICG] = 5 µM
[S4-6] = 10 mg/mL
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本技術によるICGの蛍光増強および安定化
ICGの蛍光スペクトル
ICGの吸収スペクトル
ICG蛍光の時間変化
ICGの量子収率
[ICG] = 1 µM
[S4-6] = 10 mg/mL
PBS溶液
13
マウス肝臓およびリンパ節のイメージング
本技術
本技術
[ICG] = 5 µM
[S4-6] = 10 mg/mL
14
ICGによるリンパ節の検出感度の比較
[ICG] = 5 µM, [S4-6] = 10 mg/mL
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ICG修飾抗体での蛍光強度の増大効果
抗体へのICG修飾
b)
ICG-NHS
ICG修飾抗体の蛍光スペクトル
Ab: ハーセプチン
[Ab]= 1mg/mL
[ICG] = 5 µM
[S4-6] = 10 mg/mL
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ヒト乳がん細胞の近赤外蛍光イメージング
ICG-Abによる細胞イメージング(830 nm蛍光)
Ab: ハーセプチン, [Ab]= 1mg/mL
[ICG] = 5 µM, [S4-6] = 10 mg/mL
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ヒト乳がんの近赤外蛍光イメージングの高感度化
ICG-Abを100 µL尾静脈から注入
F. I.
504
S4-6 (+)
S4-6 (+)
358
S4-6 (+)
212
67
S4-6 (-)
0 hr
S4-6 (-)
48 hrs
S4-6 (-)
72 hrs
[Ab]= 1mg/mL、[ICG] = 5 µM, [S4-6] = 10 mg/mLICG
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ヒト乳がん腫瘍でのICG-Abの蛍光強度の比較
ICG-Ab, S4-6 (+)
肝臓
腎臓
ICG-Ab, S4-6(-)
F. I.
肝臓
腎臓
心臓
腫瘍
脾臓
腫瘍
心臓
脾臓
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4) 想定される用途
• 近赤外蛍光色素(ICG等)水溶液の安定化、
長期保存。
• 近赤外蛍光色素(抗体修飾ICG等)を用い
た細胞イメージング。
• 近赤外蛍光色素(ICG等)を用いた生体蛍
光イメージングの高感度化。
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5) 実用化に向けた課題
• 培養細胞、動物等を対象として本技術を実用
化する場合、近赤外蛍光試薬の溶解液として
キット化するなどの工夫が必要。
• ヒトでの応用を目指すには、さらなる体内動態、
細胞毒性、免疫毒性など安全性の評価が必
要。
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6) 企業への期待
• 蛍光試薬合成、蛍光イメージングの技術を持
つ企業との共同研究を希望。
• 当面は、小動物での蛍光イメージング用近赤
外プローブの蛍光増強剤として実用化してい
ただける企業を希望。
• 将来的には、ヒトでの生体近赤外蛍光イメー
ジングの実用化を目指す企業との共同研究を
希望。
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7) 本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :カリックスアレーン誘導体
• 出願番号
• 出願人
• 発明者
:特願2015-063326
:理化学研究所
:神 隆
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8) 本技術に関する論文発表
• 論文題目:
Enhancement of aqueous stability and fluorescence
brightness of indocyanine green using small
calix[4]arene micelles for near-infrared fluorescence
imaging
•著者名:
Takashi Jin, Setsuko Tsuboi, Akihito
Komatsuzaki, Yukio Imamura, Yoshinori Muranaka,
Takao Sakata, and Hidehiro Yasuda
• 雑誌名:Med. Chem. Commun., 2016, DOI:
10.1039/C5MD00580A
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お問い合わせ先
国立研究開発法人理化学研究所
産業連携本部 知財創出・活用課
越前谷 美智子(エチゼンヤ
ミチコ)
E-mail:[email protected]
TEL:078-306-3436
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