Science 2014 年 2 月 21 日号ハイライト

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Science 2014 年 2 月 21 日号ハイライト
糸を紡いでねじれた筋肉にする
ゲルが膨張しなければ、用途が広がる
間違いを発見する脳領域に関する正しい見解
海水温は高いが不安定であった間氷期の大西洋
糸を紡いでねじれた筋肉にする
Spinning Yarn Into Muscles With a Twist
温度に反応して孔を開く(または閉じる)ことで、着ている人を涼しく(または暖かく)保
つ衣類を想像してほしい。そんな技術が実現しそうだという。新たな研究では、こうした科
学的試みを助けうる強力なアクチュエータ、つまり人工筋肉の実現へ至る簡単な方法が述べ
られている。Carter Haines らは今回、釣り糸や縫い糸に使われるような高強度高分子繊維を
コイル状になるまでねじると、効率のよい人工筋肉に変わることを示した。この極度なねじ
りによって作ったアクチュエータは、同じ長さ・重さの人間の筋肉に比べて 100 倍重い荷重
を持ち上げられるという。この新しい人工筋肉は、温度をはじめとする一連の刺激によって
作動する。Haines やその他の研究者は、この人工筋肉を使った布地や雨戸が、熱を測定して
それに応じた反応ができることを実証した。カーボンナノチューブの糸と同様に、高分子繊
維はねじることでねじり筋として機能できるようになるという。この新しいアクチュエータ
は、形状記憶高分子や形状記憶合金(一般に高価で効率が劣るものが多い)に匹敵するエネ
ルギー密度を実現しているという。この新しい人工筋肉は、例えばロボット工学や補綴学で
使用されるような実物大やナノスケールの構造など、広範な制御が求められる場面で幅広く
応用できると考えられる。Perspective では、Jinkai Yuan と Philippe Poulin が本発見とその意
味合いについて、さらに詳細に論じている。
Article #7: "Artificial Muscles from Fishing Line and Sewing Thread," by C.S. Haines; M.D. Lima; N.
Li; S. Fang; M. Jung de Andrade; X. Lepró; J. Oh; M.E. Kozlov; X. Xu; B.J. Swedlove; R.H.
Baughman at University of Texas at Dallas in Richardson, TX; G.M. Spinks; J. Foroughi; S. Naficy;
G.G. Wallace at University of Wollongong in Wollongong, NSW, Australia; J.D.W. Madden; S.M.
Mirvakili at University of British Columbia in Vancouver, BC, Canad; S.H. Kim; S.J. Kim at
Hanyang University in Seoul, South Korea; F. Göktepe; Ö. Göktepe at Namık Kemal University in
Çorlu-Tekirdağ, Turkey; X. Xu at Jilin University in Changchun, China.
Article #4: "Fibers Do the Twist," by J. Yuan; P. Poulin at Centre de Recherche Paul Pascal, CNRS in
Pessac, France; J. Yuan; P. Poulin at Université de Bordeaux in Pessac, France.
ゲルが膨張しなければ、用途が広がる
When Gel’s Don’t Swell, It’s Swell
ヒドロゲルには生物医学領域において幅広い適用可能性があることが、新たな研究により示
された。ヒドロゲルはこれまで、体内の標的部位への持続的な薬物送達などに用いられてい
たが、このゼリー状の物質(大部分が水分)は、通常、生理的条件下では膨張する性質があ
る。ヒドロゲルは膨張すると弾力性が低下し、効果が弱まるが、このため患者の関節などの
部位に正確な量を注入することが困難になる。浸透圧の変化など、生理的条件下でも弾力性
を保つような、より優れたヒドロゲルを作成するため、Hiroyuki Kamata らは、形状記憶ポ
リマー(温度、光、pH の変化に曝露されると形状が変化)に用いられているしくみの利用
を試みた。Kamata らは、通常のヒドロゲルの化学成分に、温度の上昇により縮小する成分
を組み合わせてみた。このヒドロゲルを室温で真水から生理的条件下に移してみたところ、
膨張する性質と縮小する性質が釣り合って、一定の容量が維持された。このヒドロゲルは、
元の大きさの 7 倍まで引き伸ばしても、通常のヒドロゲルのように断裂しなかった。
Article #8: "'Nonswellable' Hydrogel Without Mechanical Hysteresis," by H. Kamata; Y. Akagi; Y.
Kayasuga-Kariya; U.-i. Chung; T. Sakai at University of Tokyo in Tokyo, Japan.
間違いを発見する脳領域に関する正しい見解
The Right View of the Brain Region That Detects Wrong
われわれの行動の間違いを最初に検出する脳の部分がどこなのかを考え直す必要があること
が、新しい研究で示唆された。われわれの行動の結果を評価する能力(その行動で問題が起
きたり危険になったりする場合を認識する能力)は、適応に不可欠である。この機能には、
吻側帯状域(Rostral Cingulate Zone:RCZ)と呼ばれる脳の領域が重要な役割を果たすと考
えられていた。しかし、その基礎をなす解剖学的基盤はよくわかっていなかった。Francesca
Bonini らは、脳に埋め込んだ電極で記録を行い、てんかん手術のための評価を受けている患
者 5 人のニューロンの電気的活動を評価した。患者はサイモン課題を行った。この課題では、
スクリーン上の色とりどりの物に特定の方法で反応するよう患者に依頼するが、いくつか間
違った反応が行われる。Bonini らは、広く知られていることとは異なり、脳の補足運動野
(運動の制御にも関与している)が、行動の評価と間違いの発見に主要な役割を果たしてお
り、非常に迅速にこの機能を行うことを明らかにした。RCZ は、このプロセスの後半で活
性化される。これらのデータは、行動のモニタリングとエラー処理の基礎となる脳ネットワ
ークを初めて正確に説明している。
Article #12: "Action Monitoring and Medial Frontal Cortex: Leading Role of Supplementary Motor
Area," by F. Bonini; B. Burle; C. Liégeois-Chauvel; J. Régis; P. Chauvel; F. Vidal at Aix-Marseille
Université in Marseille, France; F. Bonini; C. Liégeois-Chauvel; J. Régis; P. Chauvel at INSERM in
Marseille, France; F. Bonini; B. Burle; F. Vidal at CNRS in Marseille, France; F. Bonini; J. Régis; P.
Chauvel at APHM in Marseille, France; F. Bonini; J. Régis; P. Chauvel at Timone Hospital in
Marseille, France.
海水温は高いが不安定であった間氷期の大西洋
A Warm but Unstable Interglacial in the Atlantic
新しい研究によると、過去のいくぶん暖かであった間氷期の間、大西洋は考えられていたほ
ど安定していなかったという。実際、北大西洋深層水(NADW) ―― 大西洋深海に分布す
る主な水塊 ―― の形成は、地球の気候が比較的温暖であった約 128,000~116,000 年前の間
に大きな変動があったと、研究者らは述べている。これらの研究結果は、地球温暖化が地域
の気候、海水位、大気中の二酸化炭素量に思いも寄らない影響を及ぼすことになる可能性を
示唆している。Eirik Galaasen らは、ノルディック海の海底から採取した保存状態の良い堆積
物コアを用いて、その地域の海水の炭素同位体組成を時系列的に測定した。その結果、最終
間氷期において北大西洋深層水の循環に関係する 1 世紀にわたる変動を多数発見した。この
変動の始まりは突然で、氷床が融解して淡水が北大西洋に流入したことに関係していたと
Galaasen らは述べている。寒い氷河期の変動ほど顕著ではなかったが、変動の発生は、大西
洋が今日の多数の気候モデルによって予測されるような海水の温度が高く、塩分濃度がやや
低い状態のときであった。これらの研究結果は、大西洋には安定に関して臨界閾値が存在し、
温暖な間氷期にもその閾値を超える可能性があることを示唆している。
Article #16: "Rapid Reductions in North Atlantic Deep Water During the Peak of the Last Interglacial
Period," by E.V. Galaasen; U.S. Ninnemann; H.F. Kleiven at University of Bergen in Bergen, Norway.
For a complete list of authors, please see the manuscript.